ホンダ アコードハイブリッド 「スタイリッシュな正統派セダン」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

スタイリッシュな正統派セダン

2022.11.28

年式

2020年2月〜モデル

総評

主な市場である北米では、アコードのような正統派セダンはまだまだ需要が高い。その北米ではアコードは決して大きなボディサイズではないことから、高級モデルというより庶民派的な位置付けで、事実、トヨタ「カムリ」と並びベストセラーだ。ちなみに、アコードの累計生産台数は1300万台を超える。この先もアコードは息長く販売されるだろうが、セダンボディを手放すことはしないのではないか。国内では見かけなくなったセダンだが、愛車の選択肢としては十分にアリ。アコードはその注目株だ。

満足している点

いまやセダンは貴重な存在。オーソドックスだが、ボディ剛性、衝突安全、走行性能など、本来クルマに求められている部分を突き詰めると、セダンの3ボックスボディ形状は非常に合理的だ。とくに静粛性の観点からは空間の大きなミニバンやSUVとは一線を画す。ともかく、独立したキャビンをもつセダンは静かだ。e:HEVとなり電動パワートレーンの制御を突き詰めたことで実用燃費も大きく向上している。

不満な点

SUVの利便性や、ミニバンの多人数乗車性能、これをセダンに求められても実現しない。ただ、市場ではこうしたSUVやミニバンばかりがウケているから、セダンのような言わば用途限定の車種は注目されない。e:HEVの性能はとても高いが、派手さはない。よってここでもアコードは見向きもされない。ちなみに北米市場では、2.0Lターボに10速ATがラインナップされていた。売れないとはわかっていても、一定数を限定販売すればアコードそのものの評価は高まったように思える。

デザイン

4

サイドシルエットはセダンの王道をいく6ライトデザイン。きれいな弧を描くルーフラインだが全高は1450mm確保されており、前席、後席ともに乗降性はきわめて良好だ。ヘッドライトはLEDで構成され、内部にはデイタイムランニングランプも付く。コーナリングランプとフォグランプもすべてLEDだ。リヤスタイルはテールランプを大型化して被視認性を向上。全体的に低く、ワイドにかまえたデザインだが、柔らかいラインを随所に取り入れることでシャープになりすぎない。ここもアコードの美点だ。

走行性能

4

e:HEVを名乗るシリーズハイブリッド方式のみ。搭載エンジンはポート噴射方式の直列4気筒2.0Lエンジン（145PS／17.8kgf・m）で発電しつつ、二次バッテリーを用いながら駆動用モーター（184PS／32.1kgf・m）でタイヤを回す。e:HEVは日産のシリーズハイブリッドであるe-POWERと違い、エンジン直結モードとしてエンジンが直接、タイヤを駆動するモードがある。主に高速道路で活躍するシーンだ。全域でパワフル、そして静かなパワートレーンである。

乗り心地

4

じつは乗り心地こそ、アコードの大きな美点だ。ソフト路線であるものの、しっかりと腰があるからカーブでも不安がない。また、大きな凹みを通過する際など大きな入力がサスペンションに入っても、ボディとの取り付け剛性がとても高く、しっかりといなしてくれる。さらに、シートも秀逸だ。主な販売試乗は北米であるが、日本人の体躯でもぴったりフィットする。後席も広大で足元も広い。そして圧倒的に静かだ。エンジンが高回転域まで多用するシーンであっても透過音は低く抑えられている。

積載性

5

セダンでは価値のひとつとしてトランクスペースの容量が問われる。その点、アコードは広大だ。床面はフラットで、左右、そして奥行きがあるので537Lの容量以上に使い勝手がいい。また後席は前倒しできるので、大きな荷物も積載可能。4名乗車であってもトランクスルー機構を使えば長尺物が積載できる。シリーズハイブリッドだが、バッテリーの配置やIPUと呼ばれるコントロールユニットの置き場所に工夫を凝らすことで、この大容量トランクルームを実現した。

燃費

5

カタログ上の燃費数値は、WLTC総合で22.8km/Lだが、実用燃費は驚くほどよい。筆者の実走行では、高速道路主体に200kmほど走らせて27.8km/Lだった。山梨県方面から東京方面への移動で下り勾配路が多かったものの、それでも高速道路区間の燃費数値は最高値で32.6km/L。全幅は1860mmだが背の低いセダンボディであることから前面投影面積が少なく、これが高速燃費を押し上げた。使用する燃料はレギュラーガソリンと、これまたありがたい。

価格

3

ワングレードでワンプライス4,650,000円。価格だけみれば高価だが、性能、満足度はとても高い。先進安全技術群である「Honda SENSING」も最新世代ではないものの、十分な運転サポート＆事故抑制効果を発揮する。またレギュラーガソリン指定であり、実用燃費性能が高いこともランニングコストを大きく抑えることにつながる。このクラスのセダンは国内市場で活気がなく、ゆえにアコードは1グレード。一見すると高価に思えるが、その実力からすれば納得できるはずだ。