フェラーリ 812スーパーファスト 「もはや走る管楽器」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

もはや走る管楽器

2021.10.29

年式

2017年5月〜モデル

総評

速さといった分かりやすい性能もすばらしいのだが、それ以上に詰まっているのは官能性だ。艶っぽいスタイル、刺激的なエンジン、そして楽器の音色のようなサウンド。エンジンルームさえも、まるで芸術のような美しさだ。すべては、官能性を楽しむために存在するのである。まるで走る芸術品。

満足している点

まるで管楽器のように美しい音色を奏でる、超高回転型のV12自然吸気エンジン。今後厳しくなるばかりのエミッション規制を考えると、もうこんなエンジンをクルマに積むことはできないかもしれない。少なくとも、モーターの助けを借りずに新車に積むのは難しいだろう。つまり、新車で選べるのは今だけ……。

不満な点

ウィークポイントと呼べるようなものはない。もしあったとしても、それは“個性”なのだから。

デザイン

4

ロングノーズ＆ショートデッキのフォルムは見るからにスポーツカーらしいスタイル。その平べったい感じと、最新のフェラーリらしい美しい曲線のアンサンブルは最強だ。それにしてもボンネットが長い……。

走行性能

5

800psを発生するV12エンジンの味わい深さは、もはやこの世のものとは思えないほど。速さが抜群なのは言うまでもないが、レスポンス、高回転のパンチ力、そして響き渡るサウンド。どれも素晴らしい。ドライバビリティも操作フィールが身体によく馴染み、しなかやかにグイグイ曲がるいっぽうで、高速域のスタビリティが抜群に高い。

乗り心地

5

強固な車体とスムーズにストロークするサスペンションのおかげで乗り心地も良好。サスペンションは、ダンパーなど動く部分のフリクションの少なさがしなやかさに直結している印象を受ける。ロングドライブでも疲れしらずだ。

積載性

4

スーパーカーとしては望外の積載性能が自慢。フロントエンジンとしたパッケージングにより車体後部にはトランクスペースが用意され、さらにキャビン内の前席後ろにも荷物を置くスペースを確保。この実用性が普通のスーパーカーとの明確な違いで、グランドツーリングカーとしてしっかり考えられている。

燃費

3

カタログ燃費は約6.7km/L。実燃費も6キロに届けば良好といえる印象だ。しかし800psを発生する排気量6.5LのV12エンジンだと考えればかなりの高効率。絶対的な燃費数値ではなくパワーとのバランスで考えれば、凄いことだ。

価格

3

とんでもない金額だが、いっぽうでこれを買える財産があれば買ってみたいと思える内容でもある。……としか言いようがない（笑）。「あのライバルと比べて“安い”とか“高い”」という議論は無意味だろう。孤高の存在なのだ。