ダイハツ タント 「2011年式タントL ミニ感想文(2009年式タントXも追記)」のユーザーレビュー

ノイマイヤー ノイマイヤーさん

ダイハツ タント

グレード:L(CVT_0.66) 2010年式

乗車形式:その他

評価

2

走行性能
2
乗り心地
2
燃費
4
デザイン
4
積載性
3
価格
-

2011年式タントL ミニ感想文(2009年式タントXも追記)

2024.7.4

総評
2003年にデビューした初代タントは1700mmを超える全高と、Aピラー前に固定窓を設ける車体構造によって従来の軽乗用車では得られなかった広大な居住性と、市街地程度であればなんとか走れる動的性能を持つタントはファンを増やし続けた。

そして2007年12月、満を持してタントは2世代目に突入した。

●原動機付き“たまひよ“

試乗車は2007年にデビューした2代目の後期となる2010年式のLだ。最大の特徴は助手席FRドアをピラーレス構造とし、RRドアをスライドドアにしたことで得られる大開口スペースである。(右側はコンベンショナルなヒンジドア)



最大のライバルスズキがスライドドアのパレットを出してきた時点でダイハツは着々と準備を進めていた。2001年東京モーターショーのカタログを見ていると初代タントの要素技術であるA'ピラーを有する固定窓を採用したMUSEと同じページにFF-US(ウルトラスペース)というショーモデルがある事に気づく。

FF-USはワンモーションフォルムかつガラスルーフを特徴としながら、乗用車の乗降性や乗り心地とキャブワゴンの持つ快適性を特徴としたワゴンモデルでセンターピラーレスのスライドドア構造が公表されていたのである。




この技術をタントは「ミラクルオープンドア」名義で採用した。

センターピラーを廃止するために助手席シートベルトをシート内蔵とし、側面衝突に対応してドア無いに強固な補強材を仕込んだ上でドアロックを3つ設定して横からの入力でドア解放から防御している。

加えて、初代の親子向けのちょっと上質でキャビン広い車というキャラクターから「祝 子育て満開」というキャッチコピーによって子育てツールとして再定義された。この傾向は3代目まで継続されていくのだが、この2代目タントによって現代のタント像が直接的に決まってしまった発端と考えて良いだろう。

室中の広さが好評だった事と、スズキとの熾烈なライバル競争に打ち勝つためにホイールベースを初代と較べて50mm延長して2490mmとなった。この数値は初代ファンカーゴ(2500mm)に匹敵する立派なものである。

室内長は2160mmと先代比較で+160mm。この結果、明らかにシート着座位置が後方に追いやられて後頭部にバックドアガラスが迫っている状況で膝前スペースの広さをアピールするナンセンスな状況になった。後席足元スペースの後端には燃料タンクが配置され、段差生じる。一般的なセダンは足引き性を考慮して段差に対して適切な位置にヒップポイントを決める。2代目タントを始めとする現代のスーパーハイトワゴンは競合上の優位性を競うために安易に座面だけ長くしてヒップポイントを後方に引いてしまった。このため足引き性が悪いだけでなく、レイアウトを成立させるために乗員の足は前に投げ出した姿勢が必要になり、ヒールヒップ段差も先代比で下がっている。大人がしっかり座れた初代と較べて明らかに志が低くなった瞬間だった。



確かにCRSに未就学児を座らせている層にとって後席の出来映えはさほど重要視されない。どうせ子供は直接的にはCRSに座るので、所詮後席はCRSを固定する台でしかないからだ。だからと言って私は160mm後席を広くするために人が気持ちよく座れなくなる事は肯定できない。




この写真は、ダイハツヒューモビリティワールトに展示されていた3代目タントのカットモデルの写真だ。

今は展示車が変わっていたので、https://ameblo.jp/ryuzixx/entry-12471846171.html
から引用し、説明のために二次加工させていただいた。

燃料タンクを動かそうにも前後をクロスメンバーやイータビームのつなぎ部に行く手を阻まれて
身動きが取れない事が分かる。写真のRrシート位置はカタログでよく出てくる室内長MAXとは異なる位置にあるのはダイハツ自身も後ろめたさを感じているのだろうか。(当時の新車カタログではRrモーストの写真ばかりだが)

タントの場合は更に助手席の背もたれを倒して前にスライドしてしまうことでミラクルオープンドアの特徴を活かした大開口が楽しめるようになっているのだが、これも助手席自体の快適性も損なっている。

タントをセカンドカー扱いにして助手席を畳んで使う事を推奨しており、カタログ写真を見ていても、「策士策に溺れる」という感じで子供が通う保育園の駐車場や街ゆくタントを見ていても助手席を畳んでいる人は余り見かけない。更に言えば保育園で子供を送迎している父母は助手席をわざわざ開けて子供を乗降させていない。



それでも、2代目タントの後から出たパレットに販売競争で勝った。ターゲット層にフォーカスした仕様設定とそれを支える技術開発の手を緩めなかった結果、スズキの追撃を防御できたのは攻めの姿勢に対する市場からの報酬とも言える。

その後のタントにとって不幸だったのはスズキとの競争に明け暮れた挙げ句、数値上の競争にとらわれてしまった。「子育てツール」としての進化のみに執心し、諸元合戦・装備合戦に夢中になった事だ。

後出しジャンケンながら巧みなブランディングで「大人も乗れるイイモノ感」という砂糖(佐藤?)をまぶしたN BOXに負けてしまった。

現代に続くタントの苦戦の原因の一つはターゲットユーザーをフォーカスしすぎてブランドに色が着き、周辺のシングル層やカップル層、男性がタントを選びにくくなってしまっている事も考えられる。

私の視点(男性・既婚・子育て中)で見ても、一見便利そうに見える種々の使い勝手はさほどでもない。結局、自動車として必要な性能がスポイルされていて思想的に退化したように感じた。

便利そうな装備を追加し、競合との販売競争を優位に進めようとするあまり元々タントが提供していた4人が乗れる軽乗用車の趣が薄れた。ダイハツもヒンジドアを残しながら後席の快適性を向上させた「タントEXE」を開発したが、タントの売れ行きの良さに流されてFMCを受ける事無く廃止された。

2代目タントは思い切って育児ツールに徹し、「室内長が・・・」「燃費が@%向上」「便利そうなミラクルオープンドア」「収納が○箇所」といった分かり易い「改良」が行われる一方で最上級Gグレード以外のアルミホイール廃止やRrヒートダクトやチルトステアリングがOPT設定となるなど「適正化」されてしまったのは残念だ。

●狭すぎるターゲティングと横並び競争

我が家が2016年に母子手帳を貰ったときには自治体から貰った各種案内の協賛広告には粉ミルクなどベビー用品に混じってタントの広告があった。商品としての積極的な攻めの姿勢によってタントは独自のポジションを保った。

その後、スズキとの戦いの末勝利を収めた。各社の競争が技術の進化を促すことは否定しないが、その競争が重箱の隅をつつくようなものに終始したり、分かりやすいものだけ小手先の対策を実施するような姑息なものばかりでは、お客様よりもライバルを見た開発になってしまい、初代が切り拓いたスーパーハイトの可能性を狭めてしまったのではないかと危惧した。

強力な競合車に対してダイハツは「子育てツール路線」を進化させ、カスタム系との二本立てで対抗したが、その後もホンダに勝てなかった。2代目タントに試乗し、改めてレッドオーシャンでの競争の厳しさやライバルを意識するあまり、消費者のニーズが見えにくくなってしまう危険性を痛感した。

満足している点
1.先代オーナーには分かる細かい改良
2.出足の力強さ
3.意外と粘る足(14インチタイヤ)
4. 角のある突き上げの改善
5. 初代を継承した優しいエクステリアデザイン
不満な点
1.ミラクルオープンドアからの異音
2.収まらない縦方向の振動
3.パッケージ後退の序章
4. ドアミラーが小さくなった
5. しれっと装備が削減されている
デザイン

4

走行性能

2

短時間ながら、2代目タントで市街地とワインディング路を走らせた。



試乗車はCVT仕様のLでアイドルストップも採用されてJC08モードで24.8km/Lもの低燃費を実現している。KF型52psE/GはCVTに最適化された低速型のE/Gで発進時の出足の良さは初代を知る者には感動を与えてくれる。

スギレンさんの職場からしばらく走り続けると、路面の凹凸で突き上げが小さくなっていることに気づいた。サスのストロークが取られてソフトな乗り心地を実現した点も改良を感じる。

ただ、市街地走行をしていて気づくのはCVTは絶えず変速を繰り返して駆動力とE/G回転がバラバラで扱いにくいことだ。ある意味でCVTの典型的なセッティングがタントで味わえる。あのロックアップ無しの4速ATの方が扱いやすい特性を持っていた。

また、一見角が丸められて洗練されたサスペンションは、路面の凹凸によって目線が揺らされる。待てども一向に上下動が収束しない。飲み物がこぼれるほどの突き上げも困るのだが、いつまでもふなっしーのように揺れ続けられても困る。

少しフォローすると、カップホルダーの位置が変わっていたり、後席PWスイッチが後に配置が見直されるなど初代タントオーナーから見れば嬉しい改良点もあるにはある。

ワインディング路でも2代目タントを走らせたが、興味深いのは左右非対称ボディであるにもかかわらず、操縦感覚は左右差を感じず、急なコーナーを駆け抜けても挙動が安定している。このあたりは、真面目な担当者が人知れず良い仕事をされたのだと思う。

また、左からの異音がいつまでも止まらないことには閉口した。乗車後、車体を揺らし見てみるとスライドドアのローラー付近からガチャガチャと音が聞こえてきたが、可動部分はある程度クリアランスがなければ動作できないので構造的にもやむを得ないかなとも理解は出来るが、助手席に乗る人はたまったものではないだろう。

また、後席にも試乗できた。既に意見したとおり室内長が大きくなってはいるが、決して快適ではない。足を投げ出すパッケージングなので踵がぶらぶらするし、踵をフロアにつけると太腿の裏が浮いて尻に体重が集中してしまう。

スライドドア開口は後席着座位置よりも前にあり、骨盤中心に考えればヒンジドアよりも乗降時の移動量が大きくなるのは優れているとは言えない。



室内空間の広大さは引き継がれたが、何のための室内長なのか。何のためのロングスライドなのか、という自己分析ができておらず競合を超える諸元値を得ることで思考停止していた。初代タントの後席にも座っているが、こちらは大人から子供まで座れる実に汎用性が高い座席であった。

2代目タントは改良が加えられていながら、退化した性能もある。モデルチェンジとは全性能が向上すると期待したくなるがタントの場合は必要な性能も過剰とされて省かれてしまったようにも思われる。

何年もそのクルマと暮らす中で見えないストレスになると私は感じた。(オーナーならではの慣れもあるだろうが)

乗り心地

2

2009年式タントXにも試乗したため下記に追記する。



先に試乗した2011年式タントは、低燃費技術e:sテクノロジーが導入されてエコアイドルが追加されたモデルだが、今回はそれ以前の2009年式のXグレードである。非純正部分は本来14インチタイヤが備わるはずが、13インチにデチューンされている点のみで基本的にオリジナルである。

乗り始めて「2代目の良さ」だと確証を得たのは出足の力強さと随分減った突き上げである。初代タントで致命的に近い欠点だと思っていたのでここは開発陣も何とかしたかった部分なのだろう。

初代以来の伝統でタコメータが無いので結構な高回転を使っているはずなのにそれが目立たないのは良い。市街地走行では絶えずCVTが変速を続けながら、緩慢に加速する。

粗面路や名古屋市内のコンクリート路面ではロードノイズの大きさに驚いた。初代も悪かったが2代目も余り改善が見られないようだ。先に試乗した2010年式と比べると目線が揺すられるようなことは無く個体差があったのかも知れない。

高速道路を走らせた。合流路からの加速が鋭くなっているのが先代との違いで60km/hまでの加速は大きな不満が出ないレベルにまで達した。そこから先は相変わらず遅いのだが、CVTの底力でパワーバンドを維持しながら何とか車速が上がっていく。参考までに0→100km/h加速タイムは21.2秒。先代タントより5秒は速いタイムで現行型ファンクロスにも匹敵する。



平坦な路面なら普通車に伍して走ることもできるし、高速道路とはいえ上り坂で100km/hを維持できるシーンも増える。そして120km/hあたりまではそれなりの安定感を持って居ることも進化ポイントだ。ただ、JCTなどのコーナリングでは大きなロールと共に強めのアンダー傾向を持って居るのでコーナー手前で減速し、前輪に荷重を乗せてジワッと曲がらなければズルズルと前輪のショルダーが摩耗する。

高速を降りてアップダウンもある郊外の国道を走らせた。地元の車と同じようなペースで走っている限り普通に追従出来る様になったのはKF型E/GとCVTのお陰なのは確かだろう。A/Cもよく効いているし、元来のビッグキャビンで子供達は爆睡していた。



2代目からEPSになっているが、直進付近でステアリングの直進性が曖昧になった。油圧だった初代と較べて明らかな差があり、何かが起こっている。(キャスター角立てた?)

ワインディング路でもステアリングを絶えず操舵して直進に戻し、押さえておかないといけないのは少々面倒に感じる。また、Dレンジでは燃費のために空走感が強く、Sレンジも減速度が今一つなのでBレンジを多用したことも付け加えておきたい。

現行型との比較では、高周波対策は新しい方が良いのだが、ブルブルした振動は2代目の方が小さい。加速フィーリングはCVTと言えども2代目の方がマシだったのも意外であった。燃費のためにアレコレ弄ると、フィーリング面にしわ寄せがいくのかも知れない。

代車として2日乗ったが良い経験が出来た。
積載性

3

燃費

4

代車で乗った2009年式タントXでは500km弱走行させた。試乗車はCVTが採用され、カタログ燃費は21km/Lである。920kgもの巨体をこの燃費で走らせるのは確かに凄いことである。

さて、普通車と同じペースで高速道路を走らせた際の燃費は13.36km/Lだった。A/Cはガンガンかけていたが、4名乗車で全開加速が多かったのでやはり高速道路は苦手なのだろう。

一方、休日の遠乗り(171km走行中、市街地30km・高速道路30km、郊外111k)では21.07km/Lを達成した。カタログ値を超えるのは優秀だ。これ以降はJC08モード燃費至上主義時代に突入するのでカタログ値を超えることが困難な時代に突入する。
価格

-

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