アルピーヌ A110 「気持ちよさのエンジニアリング」のユーザーレビュー

Danny Wong Danny Wongさん

アルピーヌ A110

グレード:A110 GT_RHD(DCT_1.8) 2022年式

乗車形式:マイカー

評価

5

走行性能
4
乗り心地
3
燃費
3
デザイン
5
積載性
1
価格
3

気持ちよさのエンジニアリング

2024.8.7

総評
最初にA110が発表されたとき、名車の名を冠し昔のスタイルをオマージュする懐古主義に、私はやや懐疑的でした。ああ、また過去の遺産にすがるこのパターンかい、と。ルノー・スポールじゃいかんのかい、と。

しかし発売から数年経った今しっかり味わってみると、この車が単なるレトロブームの産物ではなく、A110を本気で現代解釈したんだなあ、と気づきます。

走っているときの操作感、そして安心感が、昔のA110にそこかしら似ているんですよ。

私の知っている旧A110というのは、私の父が30年乗っている、最後期型でリアがダブルウィッシュボーンの「1600SC」ですが、あの軽さと安定感を高度に両立した乗り味によく似ている。

そしてエンジン音も明らかに旧A110の、パンチの効いたゴロゴロ音を意識してサウンドチューニングされているように思います。

A110に乗ってみて、もうひとつ類似性を感じるのが実はマツダ・ロードスター。

A110は、スペックだけじゃなく「気持ちよさ」のエンジニアリングにすごく力を入れている感じがするんですよ。

それも、イタリア物(というかアルファ)みたいに天才デザイナーの直感やセンス頼りにエイヤッと味付ける感じではなく、エンジニアとテストドライバーがしっかりコミュニケーションを取りながら科学的に計算し、煮詰めている感じ。

さっき述べた耳に届くエンジン音にはじまり、ステアリングを切ったときの手応え、ロールの感触、ターンするときのドライバーの三半規管に感じる回転感覚など、いろんなことが気持ちいい。いや、気持ちよく感じさせるよう、人間工学的に計算しているように見受けられます。あくまで想像ですが。

マツダ・ロードスターも、初代ユーノスの時代からそういう「体感性能」に真剣に取り組んだスポーツカーでした。そんな姿勢との類似性をアルピーヌにも感じます。

そういった意味で、アルファロメオ4Cが「ミニ・フェラーリ」だとしたら、A110は「ゴージャス・ミアータ」だなあと思うわけです。
満足している点
・スポーツカーとしてのダイレクト感とGTカーとしてのまろやかさの適度なバランス

・ゴロゴロいうエンジンの音と吹け上がり。現代の4気筒ターボとしてはかなり気持ちよく仕上がっています。

・荷重やターン、あるいは路面追従するサスなど、車が起こすすべての動きがなんだかたまらなく気持ちいい。

・内装の質感と配色

・スーパーカー系とは明らかに違う、バランスよくギュッとまとまりつつ落ち着いた全体フォルム

・ヌメッとしているようでシュッとしている、面の陰影の艶っぽさ
不満な点
・エンジンの熱。前も後ろもトランクは熱くなる。停車後もファンがずっと回り続けるのが、発熱量がすごいことを匂わせるので、夏の乗車はなんとなく気が引ける。別にオーバーヒートすることはないと思うけど。

・現代の車としては、ややトラブルが多い印象。私は経験ないが燃料ポンプ突然死の事例をよく聞く。噂では、アルピーヌブランドを立ち上げた際にサプライヤーも一から探したことが一因らしい。

・Aピラーがけっこう遠いので、峠やサーキットのコーナーで視界が気になる。この点で4Cは秀逸だった。

・最大の不満は時代遅れのカードキー。本国ではふつうにスマートキーが採用されているはずなのだが、日本仕様はルノー共通の差し込みスロット式。一説によると自衛隊の周波数と被るため日本ではリモート式が使えずカードスロット式にせざるをえないらしい(←言い訳にしか聞こえんけど)。

ただ、最新のWebマニュアルを見るとスマートキーに変わっているのかな?
デザイン

5

初代A110をオマージュしたフォルムを実現するために、裏方エンジニアはえらい熱量を注ぎこんでいるよね。

フロアだけで空力性能を確保することで、上側にはウイングやリップなどよけいなものを極力つけずにスリークで落ち着いたデザインを実現しています。

とはいえ「R」モデルではエアロパーツいろいと付いちゃってるけど。

やんちゃなスーパーカー的世界観に飽きた大人向けのデザインです。
走行性能

4

4Cと比較すると、スパルタンな4Cがあれもこれも割り切って到達しているレベルの90%の世界を、そこまで妥協せずに涼しい顔で実現している感じ。

筋肉モリモリの超トランクスにならなくても、素の超サイヤ人のほうがバランスいいよ、みたいな。
乗り心地

3

まだ数千キロ。今のところガタピシはありません。

脚は適度に柔らかく、アクセルを踏み込まなければ静粛性も高いので、ふつうに街なかを走っている限りでは(ラグジュアリーセダンとまではいかないまでも)そこそこのセダンに乗っているような気になります。

それを刺激の無さと感じる人もいるかもしれませんが、今の私が求めるものには合っています。
積載性

1

ぬくまったらあかんもんはトランクには放り込めん。前も後ろもだめよ。
燃費

3

計ったことないです。
価格

3

円安の影響でついに新車1千万円超えちゃいましたね。
しかし、1.5倍〜2倍の値段のポルシェ911のライバル車として十分通用するし、オールアルミボディの車として30年前のNSXと同水準の価格だから、お買い得かも。
故障経験

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