アルファロメオ 147 「日常の万能調味料」のユーザーレビュー

日常の万能調味料

2023.5.16

総評

これまでの自分の中のラテン車の概念を覆すほどに完成度の高い車です。平凡な日常生活を、その高い走行性能と美しいデザインのもたらす甘い世界観に引きずり込んでくれる一台でした。

満足している点

高い走行性能と内外装のデザイン・質感の高さ。さらにそこに実用性のバランス。

不満な点

燃費とパワー。小回りの利かなさとサイドミラーの小ささ。

デザイン

5

造形だけでなく質感もとても高いデザインです。後期型のデザインは、メッキ加飾と鋭い顔つきが流行の2020年代では特筆して目立つことはありませんが、尻上がり・尻すぼみになっている全体的なリアビューなどはなかなか他車では得られないフォルムだと思います。また、前期型のデザインを担当したワルテル＝デ＝シルヴァ氏にせよ、後期型のデザインを担当したイタルデザインなどの非常に有名なデザイナーが携わったプロダクトとしてのデザインの面白さもあるように思います。

走行性能

5

1.6リッターのツインスパークエンジンは、しっかりと7000回転まできれいに回るエンジンです。トルクも低回転から出ており、扱いやすさもとても高いです。しかしながら、巷でいわれるほど官能的なエンジンだとは感じませんでした。また、1.6リッターエンジンは多少パワー面において不足感を感じました。後述のシャーシの良さを生かすのであれば、2リッターのパワーが欲しいかもしれません。

直進安定性はあまり高くありません。路面の傾斜や轍に乗るとやや大きめに修正舵をあてることになります。4輪独立懸架と柔らかめなブッシュが災いして車輪の位置決め能力があまり高くないのではないかと推測します。とはいえ、自然に修正舵を充てられる範囲なので問題はないと思います。

特筆すべきはハンドリングです。ステアリングはFFにしてはトルクステアも少なく、非常に滑らかに回ります。旋回挙動として面白いのは、一般的な車と異なり、自転の旋回軸（ヨー軸）がダッシュボードのあたりまで前進してきてコーナリングしていくことです。これはシャーシの前後バランスなどのセッティング、乗車位置の調整などによってもたらされたものなのだろうと推測しますが、他のクルマでは味わったことのない乗り味です。絶対的なグリップの限界も高く、スポーツカーを追い回すことも可能でした。

乗り心地

4

ブッシュも柔らかく、ボディもがちがちではないため、日本人受けは悪くなさそうな乗り心地です。また、着座位置が低いためか揺れが少なく快適です。

静粛性も、プレミアムコンパクトとして当時の平均的なCセグメント車よりも力を入れてあるように感じます。

シートも、形状、クッション材の選定ともに非常によく、長距離ドライブもスポーティに走るのにも快適なシートでした。右ハンドル仕様のペダルオフセットもほぼなく、またマスターシリンダの移設はないブレーキながらも、非常にリニアな効き具合でした。

積載性

3

トランクは想像より広いですが、Bセグ以上、Cセグ未満という車格通りの広さです。しかしながら、後席居住性はCセグ並なので、なかなか頑張っていると思います。

ただし、リアシートのサポートが厚いがために、リアシートを前に倒しても倒れ切らないのはイタリア車らしいご愛敬なのでしょうか...。

燃費

2

長距離走行がリッター11程度、市街地・ワインディングがリッター9キロくらいと、1.6リッターでMTとしては期待外れな数値です。巡行回転数も高く、あまり高速道路でも燃費は伸びません。

価格

2

現在の中古市場の価格は大バーゲンと思えるくらいには満足度は高いです。

故障経験