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池沢早人師に訊くスーパーカーブームのウラ側「第13回:512BBに出逢った日の感動を今も忘れない」

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池沢早人師に訊くスーパーカーブームのウラ側「第13回:512BBに出逢った日の感動を今も忘れない」

フェラーリの素晴らしさを教えてくれたBBシリーズ

スーパーカーフリークのバイブルとして1975年の連載開始から不動の地位を守り続ける名作『サーキットの狼』。その作者であり空前のスーパーカーブームの生みの親でもある池沢早人師先生をお訪ねし、スーパーカーの代名詞として大人気を博したキャバリーノ・ランパンテ「フェラーリ512BBi」について思い出を語って頂いた。

池沢早人師に訊くスーパーカーブームのウラ側「第13回:512BBに出逢った日の感動を今も忘れない」

記憶の中でいつまでも輝き続ける512BB

フェラーリ512BBはスーパーカーブームの中心を担うクルマだった。流れるようなラインは美しく、シャープさの中にも洗練された印象が強かった。『サーキットの狼』の中では「謎の極悪コンビ」の愛車として登場しただけだったけど、個人的に好きなクルマの一台だね。

ミッドシップされた12気筒エンジンは音が素晴らしい。官能的という言葉はこのエンジンのためにあるようなもの。停まっているだけで絵になるクルマなんだけど、前後のカウルを開けた姿もカッコイイよね。大きなリヤカウルを「ガバッ」と開けると迫力のある12気筒エンジンが丸見えになる。そのバンクの中心部分でキャブレターが鎮座しているデザインは圧巻で、まさにレーシングカーってイメージだった。

ボクが最初に手に入れたフェラーリの12気筒はオレンジ色の365GT4/BBで、このクルマは中古だったけどものすごく調子が良かった。高回転域でのパンチ力は見事なほどで、運転するのが楽しくてねぇ。「このクルマとならば死んでもいい!」と思ってた(笑)。

その後、1978年にシーサイドモーターから新車の512BBを買うんだけど、これがまた楽しいクルマだった。新車の512BBを手に入れた時は、天にも昇る嬉しさだったね。誰にも触れられていない純真無垢な生い立ちと、息を呑むような流麗なスタイル。そして官能的なエンジン音は「俺だけのモノ」という感動があった。

365GT4/BBと比較して排気量アップだけでなく、よりワイドになったリヤフェンダーやリップスポイラーにも感動した。納車後、すぐに知人の切替 徹(現レーシングサービス・ディノ社長)さんに見せびらかしたら、その後すぐに影響されて自分の365GT4/BBを512BB仕様に改造しちゃったからね(笑)。

新車で手に入れた512BBはボクの人生にとって大きな存在ですごくイイ印象を持っていたから、インジェクション仕様へと変更されて車名がBBからBBiになった3代目のBBも期待して乗り換えた。でもね、正直な話キャブレター仕様の365GT4/BBや512BBに乗っていたボクには決して受け入れられるモノではなかった。

キャブレターのように始動するための儀式やクセが無くなって、圧倒的かつ感動的なキャブの迫力のある吹け上がりが無くなったのは淋しかった。天気や季節、気温を気にせずに誰でも簡単にエンジンが掛けられるようになったインジェクションへの進化は、普通の人からすれば「乗りやすいクルマ」になったんだろうけど、「俺だけのモノ」という特別感が薄くなっていた。

512BBiは良くも悪くもマイルドになって、走りに関してもキャブ仕様の365GT4/BBの方が楽しめたし、キャブ時代の印象が強すぎるボクは何だか気が抜けたようになってしまい、この512BBiはすぐに手放してしまったんだ。

フェラーリの伝統でもある12気筒エンジンのミッドシップモデルは365GT4/BBから始まり、512BBを経て512BBiへと進化を遂げた。その後、テスタロッサやM512へと受け継がれて、フェラーリのフラッグシップとして黄金期を築き上げたのは間違いない事実。今は、その歴史に幕を下ろしてしまったのは残念だよね。

でも、フェラーリの伝統を築いた3台のBBを所有できたことは幸せだったと思う。あの楽しさと幸福感は今のフェラーリでは絶対に味わえないし、365GT4/BB、512BB、512BBiと過ごした時間は何年たっても新鮮な記憶として心の奥に焼き付いている。

フェラーリBBシリーズは、ボクにとっては完調な新古車か新車で手に入れたアタリのクルマだったということもあるけど、なんと言っても20代で夢のマイカーにできたことが数倍の魅力を生んでいる。よく言っているけど、若いときの方が感動は絶対的に大きいから、憧れのクルマがあるなら無理してでも手に入れるべきじゃないかな。

Ferrari 512BBi

フェラーリ512BBi

GENROQ Web解説:512BBとカウンタックの「300km/hバトル」は伝説

1947年、イタリアの北部にあるモデナの地で、エンツォ・フェラーリによって創立されたフェラーリ。最初の作品はレーシングスポーツ「125S」であり、同モデルは1947年に開催されたローマグランプリへの出場を果たすとデビューウィンという快挙を成し遂げた。

優勝を飾った125Sが示した性能の高さは瞬く間に世界中へと広がり、フェラーリという新たなる怪物は大きな注目を集めることとなる。その後195Cや166インター、340MMなど数々の名車を生み出し、1950年にはフォーミュラ1へと進出。翌年には初優勝を掲げ、モータースポーツの世界で輝かしい歴史を刻み続け、今もなお世界中のファンたちを熱狂させている。

今回、紹介するフェラーリ512BBiだが、そのルーツは1973年に登場した365GT4/BBとなる。V型12気筒エンジンをミッドに搭載するレイアウトは、テスタロッサや512TR、F512Mに至るまで長きに渡りフェラーリのフラッグシップとして受け継がれていく。

また、車名のBBは「ベルリネッタ・ボクサー」の頭文字を取ったもので、ベルリネッタは「2ドアクーペ」を意味し、ボクサーは「水平対向エンジン」を意味している。しかし、正しくは搭載される12気筒エンジンは水平対向ではなく180度のバンク角を持つV型エンジン。ちなみに数字の「365」は1気筒あたりの排気量(cc)を表したもの。

BBシリーズを時系列に整理すると、1973年に登場した365GT4/BBは4390ccの排気量を持つV型12気筒エンジンを搭載し、360ps/7500rpmの最高出力を発揮していた365GT4/BBは1976年に排気量を4943ccへとアップさせ、最高出力360ps/6800rpm、最大トルク46.0kgm/4600rpmのスペックを持つ512BBへとマイナーチェンジが行われた。

その違いは排気量だけでなく、美しいボディデザインにも手が加えられ、リヤカウルには放熱効果を高めるルーバーを追加し、テールランプは3連からサイズを拡大した2連テールへと変更されている。車名の数字は、排気量(5リッター)+気筒数(12気筒)からとられている。

このマイナーチェンジにより、より美しいスタイルへと進化を遂げたようにも見えるが、実はコストダウンが同時に行われ、コスト高のFRPやマグネシウムの部品はスチールやアルミニウムへと変更され、カタログデータ上では120kgもの重量増となっている。

しかし、公称の最高速度は365GT4/BBと同様の302km/hと変わりなく、ランボルギーニ・カウンタックと共に争われていた「300km/h戦争」は512BBへと受け継がれた。今でこそ都市伝説として語り継がれる跳ね馬と猛牛による300km/h争いだが、実際には誇張された部分が大きく、両メーカーのマウンティング合戦だったことは言うまでもない。

その後、1981年には排ガス規制の影響を受け、気難しいとされていたウェーバー製のキャブレターからボッシュ製のKジェトロニックへと変更。車名も末尾の「i」がインジェクション化の証となるフェラーリ512BBiとなる。インジェクションの採用により、始動性向上などの恩恵を受けるものの最高出力は360psから340psへと低下。最高速は280km/hに引き下げられ、ランボルギーニとの熾烈な戦いを見せていた「300km/h戦争」に事実上の幕を降ろしたのである。

TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)

PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)

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