それぞれ特徴をもたせた車種ラインアップを揃えていた
マツダの5チャンネルといっても、ここではその一気呵成に登場したモデル群の栄枯盛衰の話を蒸し返そうというのではなく、クルマそのものを振り返ろう……というのが主旨。とはいえ便宜上、軽く触れておけば、5チャンネルとはマツダ店/アンフィニ店/ユーノス店/オートザム店/オートラマ店がその内訳で、それぞれ特徴をもたせた車種ラインアップを揃え展開していた。
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ところでこの5チャンネルにおいて、もともとのマツダ店以外でもっとも豊富な専売車種を揃えていたのがアンフィニ店だった。発足当時のカタログはグリーンの表紙にクルマの一部を大写しで切り取った写真をあしらった、なかなかシュールなセンスのものだった。
アンフィニMS-9
そしてここでの専売車種だったのが、MS-9、MS-8、RX-7、MS-6、そしてMPV。RX-7とMPVがその後マツダに戻されたのはご存知のとおりだが、そのほかの3車種はアンフィニ立ち上げ当時に設定された車種だ。そのうちのフラッグシップだったのがMS-9(1991年10月)。
全長4925mm×全幅1795mm×全高1380mm、そしてホイールベースが2850mmという豊かなボディサイズのMS-9はマツダ・センティアとはバッジ違いのクルマで、デザイン上の違いはホイール、グリル程度。搭載エンジン(V6の3Lと2.5L)も共通で、最小回転半径4.9mを実現した4WSの装備もセンティアと同様である。とにかく優雅なスタイリングが魅力の4ドアサルーンだった。
アンフィニMS-8
もう1台MS-8(1992年3月)も、いま車名を聞くと「ああ、そういうクルマがあったなぁ」なクルマ。
ミドルクラスの大人しめのスタイリングの4ドアだったが、大開口の“スーパーガラスサンルーフ”や、ニューモードシフトと名付けられたインパネに備わるゲート式のシフトレバー。そして、片持ちのヘッドレスト付きニューモードシートなど、ユニークなアイテムが盛り込まれていた。
アンフィニMS-6
MS-6(1991年10月)は“いままでのスポーツセダンにはない、ゆとりと上質さに満ちた走り”がテーマ。リヤゲート付きのいわゆる5ドアだったが、いまあらためてカタログを見ると、リヤゲートを開けた状態の写真が1枚もない。5ドアが日本では弱いことを気にしてのことだったのか? リヤスポイラーをリヤゲートと一体化したデザインは秀逸だったのだが……。
マツダ・クロノス
ここからはマツダ・チャンネル扱いの車種になる。ギリシャ神話の時を司る神の名が車名だったクロノス(1991年10月)は、アンフィニMS-6の4ドアセダン版だった。
じつはカペラの後継車の役割も担っての登場だったが、1770mmの全幅が市場で受け入れられきれず、のちに5ナンバーサイズのカペラが復活することとなった。上質な走りを目指し、エンジンはV6の2Lおよび1.8Lと、今でも考えられないような贅沢さ。ミドルクラスだったが、パワーシートなど装備も奢られていた。
オートザム・クレフ
一方、同世代のセダンで、オートザム扱いだったのがクレフ(1992年5月)。全幅は1750mmと前出のクロノスより20mm小さいものの、このクルマも3ナンバーボディだった。グリルレス、バンパーレス、リヤフィニッシャーレスの外観は当時、次世代のスポーツセダンを目指したもの。搭載エンジンはV6の2.5L、2Lと4気筒の2Lも設定した。
マツダMX-6
もう1度マツダ・チャンネル扱いのクルマに話を戻すと、クロノスなどと同じ2610mmのホイールベースをもつ2ドアクーペとして登場したのがMX-6(1992年1月)だった。
輸入車にも関心をもつマニアだったら、リヤをなだらかに下降させ、キャビンフォワードだったシルエットこそ違ったが、見た瞬間に「オペル・カリブラのようだ!」と内心思ったに違いない(筆者もそう思った)。CD値=0.31と空力に長けたスタイリングを追求すると、皆同じような美しいスタイルになる……といったところか。筆者としても決してキライじゃないタイプのクルマだったから、いま考えると、現役当時、実車をもっとジックリと丁寧の眺め、乗っておけばよかった……の思いも込み上げてくる。
オートザムAZ-3
クーペということではオートザム扱いのコンパクトモデル、AZ-3も忘れられない。ユーノス・プレッソからバッジエンジニアで生まれたモデルで、プレッソがV6を搭載したのに対し、コチラは4気筒の1.5Lとし、よりカジュアルなスポーティ路線を打ち出しにしていた。とはいえスタイリングはほぼ共通といってよい。
ところで今回取り上げたモデルは、当時交通タイムス社から発行されていたワンメイク本「GOLD CARTOPニューカー速報」でことごとく取り上げていて、筆者もデザイナーのインタビューのページをしばしば手伝わせてもらい、広島や横浜のR&Dに幾度となく出向いては話を聞いたのを思い出す。書いてきたとおり、車名や細かな仕様に違いはあれど、ほぼ同一車種だが同じ担当デザイナーにインタビューは2度、本も2冊……と、頻度とペースはなかなかアグレッシブだった。
まさか以下同文と書く訳にもいかず(当時はまだ手書きかソニーのワープロだったかだが)、今だから言えば車種ごとにその都度原稿にするのに四苦八苦した覚えがある。だがそれより何より、矢継ぎ早にこれだけの新型車をカタチにしていったマツダの当時の開発エンジニアこそ、一体どれほどのエネルギーを費やしていたのだろう、本当にお疲れ様でした……と、あらためて思う。
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