スバルオブアメリカによると、2023年第1四半期(1~3月)の総販売台数は14万3376台と前年同期比で8.3%増、2年ぶりに前年実績を上回った。北米では6MT車の設定もあるWRX(日本名WRX S4)は前年同期比なんと1300%増と大幅な伸びだったのだが、日本でもMT車を追加しないのだろうか?
文/渡辺陽一郎、写真/スバル、ベストカーWeb編集部
やっぱり日本にも6速MT車の設定が必要だ!? 北米でWRXが販売絶好調のワケとは?
■セダンのMT仕様車が選べなくなっているが……
日本仕様のWRX S4。先代型と同じく北米で販売されている6速MT車は残念ながら設定されていないのだが……
日本車では、6速MT(マニュアルトランスミッション)を選べる車種が意外に少ない。スポーツセダンとして人気の高いスバルWRXも、先代型には6速MTのWRX STIが用意されたが、現行型はCVT(無段変速AT)のWRX S4のみだ。6速MTを搭載するWRXは、新車では購入できない。
このほか以前は、トヨタカローラセダン/スポーツ/ツーリング、ホンダフィットRS、マツダ6などにも6速MTが用意されたが、今は選べない。時代を遡ると以前は日産シルビア、トヨタカローラレビン&スプリンタートレノなどMTの人気が高かったスポーツクーペもあったが、すべて廃止されている。
ちなみに今は、新車として販売される小型/普通乗用車の約45%が、エンジンとモーター駆動を併用するハイブリッド(マイルドタイプを含む)車になった。そこにプラグインハイブリッド車や電気自動車も加えると、小型/普通乗用車の50%に近付く。これらの電動車に搭載されるトランスミッションは、基本的にATやCVTだから、電動車の比率が増えるほどMT車の設定がかぎられていく。
■なぜMT車は減少の一途をたどったのか?
現行型WRX S4 STI Sportのインテリア。すべてCVTの「スバルパフォーマンストランスミッション」(SPT)のみの設定となる
このようにMT車が減った背景には、1991年に設定されたAT限定の運転免許もあるといわれるが、この比率は意外に高くない。2022年版の運転免許統計によると、新たに第一種普通運転免許を取得した人のうち、AT限定の割合は73%であった。AT限定が多いものの、第一種普通運転免許取得者の27%は、MTも運転できるのだ。
このなかには、仕事でトラックなどを運転できるように限定としなかったユーザーも含まれるが、MT車に興味を持つドライバーもいる。つまり、MTを選べる車種が大幅に減ってしまい、シビックなどは1.5LターボだけでMT比率が30%を超えている。
ただしMTを用意すれば、売れゆきが必ず伸びるわけではない。例えば、先に挙げたカローラシリーズやマツダ6がMT車を廃止した背景には、販売上の低迷があった。MTを設定するとしても、車両との親和性の高さが条件になる。
■北米仕様には6速MT車はあるのに……
現行型の北米仕様WRX (日本名:WRX S4)に設定されている6MT車。先代モデルにも北米では6MT車が存在していた
その意味で残念なのが、冒頭で取り上げたWRXだ。現行型のWRXはS4のみで2ペダル専用車になったが、前述のとおり先代型には、CVTのWRX S4と6速MTのWRX STIがあった。そして先代WRX全体に占めるSTIの比率は、2019年は58%、2020年は62%だ。先代WRXでは6速MTのSTIがATのS4よりも安定的に多く売られていた。
そうなると現行型のWRXに、6速MT車を求めるユーザーも多いのではないか。この点を販売店に尋ねると以下のように返答された。
「今のスバル車を新車で買った場合、6速MTを選べる車種はBRZのみ。しかし、ほかの車種でもMTに乗りたいスバルのお客様は多いです。特に先代型のSTIに乗るお客様は、乗り替えの対象としてMT車を強く希望されています。北米仕様にはS4のMTもあるから、これを設定して欲しいと思っています」。
現行WRX S4は、排気量を先代型の2Lターボから2.4Lターボに拡大したが、最高出力の数値は275ps(5600回転)、最大トルクは38.2kgm(2000~4800回転)だ。先代WRX S4は、2Lターボながら300ps/40.8kgm、6速MTの先代WRX STIは308ps/43.0kgmだったから、現行型は排気量を拡大しながら動力性能を示す数値は下がっている。
■北米では販売好調な現行型WRXシリーズ
現行型WRX S4が搭載するのはスバル伝統の水平対向エンジンで、4気筒の2.4LDOHCターボのFA24型だ
それでもミドルサイズのボディに、275ps/38.2kgmの動力性能なら、充分な高性能車だ。開発者にS4と6速MTの相性を尋ねると「WRX S4に6速MTを組み合わせることは可能だ。実際、北米仕様にはその設定があり、運転感覚も良好だ」という。
北米仕様のWRXが搭載するエンジンは、日本仕様と同じく2.4Lターボだ。最高出力は271ps(5600回転)、最大トルクは35.7kgm(2000~5200回転)だから、性能的にもほぼ等しい。北米ではこのパワーユニットに、国内仕様と同様のCVTと、6速MTを組み合わせている。
しかもWRXは、北米での売れゆきが好調だ。2023年3月には、2023年モデルの投入もあり、前年の3月に比べて13倍の売れゆきになったという。2023年第一四半期(2023年1~3月)の北米スバルは14万台を上回り、対前年比は2年ぶりに回復して8.3%の増加となった。
WRXは北米などの海外でも、スバルのブランドイメージを支える役割を担っている。日本でも2019年には、先代WRXがモデル末期ながら1カ月平均で約600台が登録され、そのうちの58%が前述のとおり6速MTのWRX STIだった。
■WRXとレヴォーグにもMT車の追加を!
スポーティワゴンとして国産ステーションワゴンのなかで独自の存在感を発揮するレヴォーグにもMT車を設定してほしいと筆者は指摘する
それが2022年の1カ月平均登録台数は、約300台と半減している。新型コロナウイルスと、これに伴う納期の遅延も影響したが、2021年に新型にフルモデルチェンジしながら売れゆきが半減した一番の原因は、6速MTを用意しないバリエーションにユーザーが不満を感じているからだ。
電動化が急速に進む今の時代に、6速MTの成立するスポーツモデルは貴重な存在だ。特にWRXは伝統ある車種とあってファンも多く、スバルブランドとの親和性も高い。ぜひ6速MTを導入すべきだ。できればレヴォーグにも6速MTが欲しい。
新型インプレッサ。まだSTI Sportグレードは設定されていないが、先代のように走りに振ったモデルとして設定を熱望!
なお、これからはレヴォーグをアウトバック風にアレンジしたSUV仕様なども登場する予定だ。クロストレックを含めてSUVテイストが強まるのは、今の販売動向を考えると当然ともいえるが、走行安定性と運転の楽しさを重視する低重心のスバル車も大切だ。新型インプレッサにもSTI Sportを設定して、日常的な移動のなかで、上質な運転を楽しめる6速MT車を提供すると喜ばれるだろう。
好例がスイフトスポーツで、スイフト全体の約半数をスポーツが占める。しかも6速MTの割合がATよりも多い。身近なクルマでMTを操るのは実に楽しく、スバルのブランドイメージにも合っている。
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みんなのコメント
誰も買わんだろ、WRXのマニュアルなんて。
この車を運転して出掛けることが楽しくてメンテナンスしながら今後も楽しんでいきます。
けっこうメンテナンス代はかかるけど買い換えたい車も見当たらないし維持費程度は当たり前だから何も苦になりません。