もくじ
どんなクルマ?
ー レクサス ヨーロッパの販売拡大へ
ー 前輪駆動のニューモデル
どんな感じ?
ー カムリとプラットフォーム共有 細かく差別化図る
ー インテリア 高級感あるもオーラなし
ー ハイブリッド搭載 落ち着いた運転なら洗練された乗り心地
ー 速いが、ドライバビリティはイマイチ
「買い」か?
ー 安定感と洗練性が魅力 ライバルはS90やEクラス
スペック
ー レクサスES300hのスペック
どんなクルマ?
レクサス ヨーロッパの販売拡大へ
7代目レクサスESは、英国ではあまり知られていないミドルサイズの高級セダンだ。しかし、このクルマからはブランドの哲学が変わったことが感じられる。
レクサスはこれまで、ヨーロッパで売り上げを増やし、ドイツ勢が握っているマーケットシェアを奪うことにそれほど意識を向けてはいなかった。
それがここに来て、レクサスの販売が好調な欧州市場に対する姿勢が変わったのかもしれない。ラインナップを整理し、ブランドのポテンシャルをヨーロッパでも最大限発揮しようと「本腰を入れ始めた」ようだ。
レクサスはトヨタのプレミアムブランドとして、ここ5年でヨーロッパでの売り上げが2倍になった。この大半がクロスオーバーのNXの成果だった。それが、今ではミドサイズ・エグゼクティブセダン市場に参入し、方針を転換しつつある。高い実用性と価値の高さを武器に、英国や欧州の購買層にアピールするのが目的だ。
第7世代のレクサスESはヨーロッパではGSの後継となり、英国では今年末に発売される。ここからレクサスの転換が始まる。
前輪駆動のニューモデル
ESはレクサスブランドが誕生して以来、グローバル向けセダンとして長らくラインナップされ、レクサスで最も人気のある4ドアセダンとなり、GSよりも合理的な存在となる。
英国のカスタマーにとってES登場で最も重要なのは、GSの動力性能に優れる後輪駆動レイアウトから、実用主義の前輪駆動レイアウトに変更されたことだ。
これはレクサスにとって良いニュースなのか、それとも潜在的なカスタマーにとって良いニュースなのか。この答えはお金に関するものになるだろう。GSは比較的製造コストの高いクルマだったため、メルセデス・ベンツやアウディ、BMWなどのエグゼクティブ・セグメントの最廉価層と本当に勝負することはできなかったのだ。
一方でESは、現行のトヨタ・カムリとプラットフォームだけでなく製造工場も共有し、ともにアメリカで生産される。(とは言え、右ハンドルの英国市場向けは、GSと同様日本で製造されると思われる。)
つまり、トヨタとしては世界で最も売れている乗用車、カムリとさまざまな共有化を図ったESは、GSよりも魅力的なのだ。
どんな感じ?
カムリとプラットフォーム共有 細かく差別化図る
まずはカムリとの共通点から述べよう。これのせいで、メルセデスEクラスやアウディA6のラバルになり得る誠実なラグジュアリーカーとして、ESがGSに劣るというひともいるはずだ。
テネシー州ナッシュベルでレクサスES300hを試乗した際、2018年モデルのカムリと横に並べる機会があったのだが、この2台が似ているのは明らかだった。
実際にレクサスのエンジニア達は、GA-Kプラットフォームを開発する際にカムリとESの両方を考慮し、サスペンションやホワイトボディの一部を共有していると認めた。
しかし、2台には多くの違いもある。ESにはより軽量な素材や強固な接合技術が用いられている。さらに、シャシーのいたるところがパフォーマンス・ダンパーで強化される(グレードによって異なる)。専用のサスペンションも奢られ、キャビンの遮音性も追求されている(ダブルバルブ・ショックアブソーバーやノイズを抑制するホイール設計など)。加えてFスポーツではアダプティブ・サスペンションも装備される。
とはいえ、そのどれもが高級セダンに装備されるハイテク技術のようにはとても聞こえないのも事実だ。
インテリア 高級感あるもオーラなし
レクサスはキャビンの質やラグジュアリーな感触の面で高い水準を保っているが、ESはほとんどの部分でそれを上回っている。とはいえ、もっと高級感を出せた部分も見受けられる。
例えば、ESのシートやダッシュボードの周りは柔らかく滑らかな革張りだが、ダッシュボードやドアの部分に使われている模様の入ったプラスティックは目立つし、いくつかの場所ではより硬く薄いプラスティックすら使われている。
センターコンソールの装飾はステアリングホイールのデザインと少々マッチしていないし、全体的に見てA6やEクラスが持っているような、リッチで堅実で技術的に洗練されているという堂々としたオーラが出ていない。
キャビンスペースや総合的な実用性は素晴らしいが、ふたつほど不満がある。先代と比べて長くなった全長とホイールベースのおかげで、どの席でもレッグルームは広い。大柄な大人が横並びで後部座席に座っても快適に過ごすことができるが、後席のヘッドルームはクラス標準には届かない。
また、ESはリア部分の構造が強化されており、代わりにリアシートのフォールディング機能を完全に切り捨てた。そのため、トランクスペース自体は幅広く長いものの、それ以上の長尺物を収めることはできない。
ハイブリッド搭載 落ち着いた運転なら洗練された乗り心地
イギリスで販売されるESは、「自動充電式」のガソリンハイブリッドモデルのES300hのみ。新型の2.5ℓ4気筒アトキンソンサイクル・ガソリンエンジンが搭載され、同じく新規設計のハイブリッド・トランスアクスル・トランスミッション(120psのモーター、小型のモーター/ジェネレーター、「e-CVT」の3つからなる)を介して前輪を駆動する。この結果、システム総出力は218psでCO2排出量は106g/km、燃費は25.5km/ℓを超えるという。
ガソリンやディーゼルのライバルと見比べると、これらの数値は確かに魅力的だ。一方で0-100km/h加速は9秒以下だと発表されており、これは魅力に欠ける。
だが、ガソリンハイブリッドはレクサスの魅力のひとつで、このシステムが燃費重視だと知っているひとは、このタイムにそれほど不満を持たないだろう。
ESは、GSよりも成熟して洗練された、安心感のあるキャラクターに仕上がっている。ハンドリングは落ち着いているが精緻で、かなりレスポンスは良い。ほどほどの重さのステアリングは適切なセッティングで、一貫したペースでコントロールできる。
グリップやボディ・コントロールのレベルも高く、英国の荒れた路面でも軽々と駆け抜けることだろう。この点では、このクラスのいくつかのセダンよりも優れているのは間違いない。
速いが、ドライバビリティはイマイチ
ただ、このクルマに満足が行くのはゆったりとしたペースの時である。静かで衝撃を和らげるような乗り心地は、すべての入力を穏やかにしてくれる。
レクサスの最新世代4気筒ハイブリッドにしても、急いでない時が一番心地良い。エコモードで走るとエンジンの騒がしさは収まり、簡単に21.3km/ℓ近い燃費が出せるような、優れたアクセルペダルのキャリブレーションが行われる。
スポーツモードを選択すれば、全開でのパフォーマンスはかなりのものだ。しかし、奇妙な間があったり、ハーフ・スロットルでのフレキシビリティがほとんどないために運転しにくい印象だ。
ステアリングにはシフトパドルがついているが実用性は低い。というのも、2/3以上のパワーを使おうものなら、どのギアに入れていようとレクサス特有のラバーバンド感が感じられてしまうからだ。
「買い」か?
安定感と洗練性が魅力 ライバルはS90やEクラス
まず言えるのは、駆動輪を理由に選択肢から除外するべきではない、ということだ。ESの魅力ははシャシーではないからだ。
むしろ、レクサスの他のモデルと同じく、ハイブリッドシステムこそがESの魅力で、欠点はあれど、リラックスできる洗練性と低燃費を実現している。
ドライバーへの魅力が足りていなくとも、他のミドルサイズセダンと比べてハンデを背負うということはない。そして、英国での販売価格はGSよりも挑戦的になると予想されているため、ESは欧州でのレクサスのセールス向上に役立つことだろう。
ESはセンセーショナルなクルマではないが、ボルボS90やメルセデスEクラスといい戦いをするはずだ。BMW 5シリーズやジャガーXFと比べた時のGSに比べれば、随分と競争力があるはずである。
レクサスES 300hのスペック
■価格 3万5000ポンド(512万円)(予想)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 180km/h
■0-100km/h加速 8.9秒
■燃費 25.6km/ℓ
■CO2排出量 106g/km
■乾燥重量 1680kg
■パワートレイン 直列4気筒2487cc/モーターアシスト付き
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 218ps/5700rpm(システム総出力)
■最大トルク –
■ギアボックス e-CVT
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