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全固体電池の現在地 2025年が決定的な年に 各メーカーのポジションは?

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全固体電池の現在地 2025年が決定的な年に 各メーカーのポジションは?

ようやく聞こえてきた全固体電池の「足音」

EVメーカーが目指す技術的ブレークスルーとして、以前から注目されてきた全固体電池。ついに、2025年には量産化に向けて重要な一歩を踏み出す可能性が出てきた。

【画像】中国では「半固体電池」が実用化されている【IMモーターズとニオの新型EVを写真で見る】 全21枚

全固体電池は、現在使用されている液体リチウムイオンバッテリーよりも多くのエネルギーを蓄え、航続距離も長いことから、次世代のEV用バッテリーと見なされている。

従来の液体バッテリーでは、各セルの両端に正極と負極が配置され、物理的なセパレーターでそれらの接触を防ぎ、中央に液体の電解質が存在する構造となっている。

全固体電池では、構造がやや単純化される。液体の代わりに固体電解質が使用され、軽量でありながら、同じ容量でもより多くのエネルギーを蓄えることができる。

また、固体電解質は液体よりも反応性が低いため、穴が開いたり熱せられたりしても発火する可能性ははるかに低い。つまり、安全対策が容易になる。

液体の要素がなくなることで、高温または低温環境においても航続距離が低下しづらく、充電速度も向上すると期待されている。

自動車メーカーにとっては、より柔軟な車両設計が可能となる。例えば、EVのさらなる小型軽量化を実現したり、大型車でも従来と同等サイズのバッテリーからはるかに長い航続距離を引き出したりすることができる。

全固体電池の技術開発は世界中で進んでいるが、普及にはまだ数年かかるだろう。最先端市場の1つである中国では、上海汽車傘下のIMモーターズが現在、「半固体電池」を搭載したL6というセダンを販売している。半固体電池は、従来の液体よりも粘度の高いゲル状の電解質を使用するもので、全固体電池への橋渡し的な技術である。

IMモーターズの半固体電池は、同等の液体リチウムイオンバッテリーと同じサイズで、33kWhの容量アップを実現した。中国の認証試験によると、航続距離が28%向上し、最長1000kmに達するという。

IMモーターズだけではない。ライバルのニオ(NIO)は今年初め、半固体電池を搭載するET7を発売した。1回の充電で1040km以上の走行が可能だ。

世界の主要メーカーの開発状況はどうだろうか。以下に、各社の最新の取り組みを挙げる。

ステランティス

14ブランドをまとめるステランティスは、2026年に新興企業ファクトリアル社が製造した半固体電池の公道テストを開始する予定で、改造したダッジ・チャージャー・デイトナの車両群を使用する。

ステランティスは、STLAラージ・プラットフォームをベースにしたアルファ・ロメオ、ジープ、マセラティなどの大型車に優先して搭載すると述べている。

ホンダ

数週間前、ホンダは栃木県の研究開発拠点に全固体電池のパイロットラインを開設した。電解質を「ロールプレス」することで生産効率を高めるなど、さまざまな材料や生産工程を試す。1月から試験生産が開始され、2020年代後半までにハイブリッド車とEVへの採用を目指す。

トヨタ

トヨタは昨年、強い力がかかると割れやすい固体電解質の耐久性に関して「技術的ブレークスルー」を達成したと発表した。

現在、大量生産方法の開発に取り組んでおり、2027年か2028年の市場投入を目標としている。航続距離は1200kmを超え、10~80%の充電は10分以内に完了するという。

日産

日産は、2028年に全固体電池を搭載したクルマを発売するという目標を掲げている。

これが次世代のGT-Rになる可能性も十分にあるが、どのような形であれ、全固体電池を最大限に活用するように設計されるはずだ。

「全固体電池のようなものにコミットするからには、車両のメカニズムやアーキテクチャー全体を変えなければならない」と、同社の欧州研究開発担当上級副社長であるデビッド・モス氏は言う。パイロット生産工場は来年オープンし、セルのエンジニアリング作業は2026年に完了する予定だ。

BMW

BMWは昨年、米国のソリッドパワー社からパイロットセルを受け取ったが、その直後、2030年までに市販車に搭載される可能性は低いとの見解を示したと報じられている。BMW Mのフランク・ファン・ミール最高経営責任者(CEO)は以前、全固体電池が軽量な電動パフォーマンスカーを生み出す鍵になると示唆していた。

メルセデス・ベンツ

メルセデス・ベンツはバッテリー製造の米ファクトリアル社と提携しているが、技術責任者であるマルクス・シェーファー氏は全固体電池の必要性を疑問視している。同氏は今年初め、ここ数年の液体リチウムイオンバッテリーの進歩により、「(全固体電池は)必要ないかもしれない」と述べた。メルセデス・ベンツは以前、2030年までに主力車種に全固体電池を搭載したいとしていた。

フォルクスワーゲン・グループ

世界第2位の自動車メーカーであるフォルクスワーゲン・グループは、米国の新興企業クアンタムスケープ社が開発した全固体電池技術の拡張に取り組んでいる。年間最大80GWh(100万台分に相当)の全固体電池を生産するライセンス契約を締結した。

まだ具体的なスケジュールは決まっていないが、その規模を考えると、全固体電池が次期ゴルフに採用される可能性もある。第9世代のゴルフは2028年に発売予定で、フォルクスワーゲンは他社と同じく2020年代後半の実現を視野に入れていると思われる。

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みんなのコメント

8件
  • kus********
    そこそこ手の届くくらいの価格で目の前に出てこないとなんともなあ。
    5人がゆったり乗れる全天候SUV、超急速充電対応、満充電の航続距離が700㎞から1000㎞。 価格は1000万以下。
    8年16万キロで90%程度の容量保持率。
    この性能なら別に全個体電池にこだわらない。
    お願いしますわ。
  • てっさん
    こうやって日本優位とか言って国民を安心させるマスコミの口車に乗ってはいけません、日本はどんな技術も正念場です、ハイブリッド優位とか言ってますが世界はまだEVに向かっています、一つの革新的なバッテリー一つで簡単に状況は変わってしまいます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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