モーターマガジン社より「スーパーカークロニクル・完全版」が好評発売中だが、その中から主だった車種をダイジェストで紹介しよう。第4回は2000年から2009年までの「第4期スーパーカー」の中から、ランボルギーニ ムルシエラゴ、フェラーリ エンツォフェラーリ、ブガッティ ヴェイロン16.4、日産GT-Rをピックアップしてお届けする。
第四期スーパーカーは、「使える」ハイテク装備が満載になる!
ランボルギーニ ムルシエラゴ(2001~2010)「現代的な4WDスーパーカーとして存在感を増す」
アウディ傘下となったランボルギーニの第1弾が、2001年のフランクフルトモーターショーで発表された「ムルシエラゴ」(スペイン語でコウモリの意)だ。攻撃的なキャラクターを強調する斬新なデザインは、ランボルギーニのチーフデザイナー、リュック・ドンカーヴォルケによるもの。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
パワーユニットは、ディアブロと同様のバンク角60度のV型12DOHC48バルブだが、ディアブロのものよりもストロークをアップすることで、排気量が6Lから6.2Lまで拡大されている。デビュー時のパワースペックの492psから580psへ、最大トルクは同じく580Nmから650Nmへと、大幅なパワーアップが図られている。
ディアブロとの大きな違いは、駆動方式がミッドシップ4WDだけになったことが挙げられる。また、ディアブロではカウンタックと同様に後輪を駆動するためのプロペラシャフトがオイルパン内を貫通していたが、それを車体右側に移し、潤滑方式をドライサンプ化してエンジン搭載位置を下げている。フロントの駆動に関してはトランスミッションが前方にあるという意味では取り出しやすく、合理的な設計だった。
トランスミッションもディアブロの5速MTから現代的な6速MTに変更された。後には「eギア」と呼ばれるセミオートマチックトランスミッションを採用。また積極的に前輪にも駆動力を配分する4WDシステムなど、メカニズムも野心に満ちたものだった。
ムルシエラゴはデビュー当初の6.2Lから始まり、2004年にはセミAT(eギア)搭載車やロードスター、2006年には6.5Lエンジンを搭載したLP640(最高出力640psから命名)と進化し、最終的には2009年に登場したLP670-4スーパーヴェローチェ(最高出力670ps)まで到達する。まさに新生ランボルギーニを強く印象づけるモデルとなった。
フェラーリ エンツォ・フェラーリ(2002~2004)「創業55周年を記念して製造されたスペシャルフェラーリ」
フェラーリは2002年の創業55周年を記念して、創始者でありコマンダトーレ(総帥)と呼ばれたエンツォ・フェラーリの名を冠したスーパースポーツカーを発表する。それがエンツォフェラーリだ。正式車名は「フェラーリ エンツォフェラーリ」なのだが、社名のフェラーリは付けずに呼ばれることが多い。
デザインは、当時ピニンファリーナに在籍していた「ケン・オクヤマ」こと奥山清行によるもの。明らかにF1グランプリマシンからインスピレーションを得たとわかるフロントノーズ。リアを見れば伝統の丸型テールランプが備わる。そして、スーパーカーの必須アイテムとなったバタフライドア(マクラーレン風にいえばディヘドラルドア)を備えるのが特徴だ。フェラーリがバタフライドアを採用したのは珍しい。
エアロダイナミクスにはスクーデリア フェラーリ(F1グランプリのチーム)のノウハウが生かされ、300km/hで走行中のダウンフォースは最大値がなんと775kgに達したといわれる。
コクピットの後ろに縦置きミッドシップマウントされたエンジンは、当時のフェラーリの主流であった65度のV型12気筒DOHC。可変吸排気バルブタイミング機構などF1グランプリで得た最先端のテクノロジーが投入され、最高出力は660psを発生しながら、低回転域のパワーを増強して幅広い速度レンジでのバランスが追求されている。
トランスミッションはF1マチックと呼ばれる6速のセミATを組み合わせるが、変速のタイムラグを極力排除するため、シフト時間はわずか0.15秒にまで短縮されている。
エンツォフェラーリは、F1テクノロジーが注ぎ込まれたスーパースポーツカーだったが、ただ高性能というだけでなく、ASRと呼ばれる車両姿勢安定制御機構(スタビリティコントロール)を搭載して、ロードカーとして極めて高い安全性を確保していた。
安全な超高速走行へのフェラーリの対応は、その後のスーパースポーツカー開発にとって見逃せない大きなポイントとなっていく。
オーバー1000psを果たしたハイパーカー
ブガッティ ヴェイロン16.4(2005~2015)「オーバー1000psを果たしたハイパーカー」
スポーツカーブランドとして20世紀初頭に名を馳せた「ブガッティ」。ロマーノ・アルティオーリによって1990年代に一度復活し、スーパースポーツカーのEB110を世に送り出したが、バブル景気の崩壊とともに消え去る。
紆余曲折はあったが、ブガッティのブランドはVWグループが獲得し、ブガッティ・オートモビルとして正式に復活したのは1998年。その最初の市販車が、ここで紹介する「ヴェイロン」だ。1999年のフランクフルトモーターショーで「シロン」の名で登場したプロトタイプは、1999年の東京モーターショーで「ヴェイロン」と名づけられたコンセプトカーに進化し、2000年のパリモーターショーで正式発表されたが、1億6300万円で発売されたのは2005年だった。
基本のデザインは、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン。その車名は、1939年のル・マンをブガッティで制したレーシングドライバーのピエール・ヴェイロンに由来する。ちなみに、プロトタイプに名づけられた「シロン」もレーシングドライバーの名であり、後にヴェイロンの後継モデルに名づけられることになる。
ヴェイロンの正式車名は「ヴェイロン16.4」で、W型16気筒エンジン(狭角V8をさらにV型に配置する)に4基のターボを装着していることを意味する。総排気量は8L(正確には7993cc)で、最高出力は1001ps、最大トルクは127.5kgm(1250Nm)という強大なパワーを、7速DSG(DCT)を介して4輪で駆動する。
公称された最高速度は407km/hで、最高速度に達するためには空気抵抗となるリアウイングの自動展開をロックするため、いったん停車してブレーキを踏んだ状態で専用のキーを差し込まなければならない。さらにこれとは別に、高速走行に備えて最低地上高とリアウイングの高さを3段階に調整する機能も搭載されていた。
日産GT-R(2007年~)「マルチパーパス・スーパーカーを標榜して登場した日本の至宝」
2007年の東京モーターショーでスカイラインの冠を外した「GT-R」がワールドプレミアされた。それまでのスカイライン GT-Rは(第1世代も含めて)、高性能なスポーツカーではあったが、スーパースポーツカーとは呼び難いものであった。だが第3世代のGT-Rは、日本を代表するスーパースポーツカーでありグローバルカーとして企画され、カムバックを果たした。
スカイライン時代はストレート6にこだわってきたエンジンは、運動性も考慮して3.8LのV6ツインターボ「VR38DETT」へと換装された。プラズマコーティングボアシリンダーやエキゾーストマニホールド一体型ツインターボ等によって、3200~5200rpmの広いレンジで最大トルク588Nm(60kgm)を発生。最高出力は353kW(480ps)/6400rpmを実現した。
駆動方式こそ第2世代と同様のフロントエンジンの4WDではあるが、クラッチ/トランスミッション/トランスファーを車両後方に移動させ、リアファイナルドライブと一体化した世界で初めての「独立型トランスアクスル4WD」を採用している。新開発のGR6型デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を採用したことも注目された。
サスペンションはビルシュタインダンプトロニックを採用している。これは様々な走行シーンに対して、車両データから最適に電子制御されたショックアブソーバーの減衰力にアジャストされるものだ。ブレーキは、超大径のブレンボ製フルフローティングドリルドローターと高剛性ブレーキパッド、およびブレンボ製モノブロックキャリパー(フロント:6ポット、リア:4ポット)の採用で、安定した制動力と高い耐フェード性能を実現している。
世界中の自動車メーカーがテストを行うことで有名なドイツのニュルブルクリンク 北コースでのタイムアタックにも挑戦しており、2013年には当時の量産市販車で最速ラップタイムとなる7分8秒679を記録している。
2014年からは派生モデルとして「GT-R NISMO」をラインアップ。こちらも毎年進化を続け、2020年モデルでは最高出力を600ps、最大トルクを66.5kgmにまで高めている。
[ アルバム : スーパーカークロニクル・完全版ダイジェスト 第5回 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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