この記事をまとめると
■日産アトラスの魅力を紹介
規制しないのほうがマシとの声も上がるほど! 「物流業界」を悩ませる2024年問題の難しさ
■サイズ違いで用意されたボディタイプで顧客のニーズに応えている
■現行モデルではいすゞのOEMモデルとして販売が続いている
日産はトラックの「アトラス」も販売している
日産といえば乗用車をイメージしますが、1930年代からトラックなどの商用車も生産してきました。とはいえ日頃から日産のトラックに注目している人は少ないはず。今回は同社がラインアップする1.5トン&2トントラック「アトラス」を紹介していきましょう。
ビジネスを支援しつづけるトラック”日産アトラス”の特徴
アトラスの現行型は2トンクラスが6代目、1.5トンクラスが4代目となります。ベースはいすゞ・エルフとなりますが、フロントマスクなど独自のデザインを採用している現行型の特徴を記していきましょう。
クラストップレベルの動力性能
アトラスは1.5トンクラス、2トンクラスともに4JZ1型3リッターディーゼルエンジンを搭載しています。
同エンジンはポスト・ポスト新長期規制への対応として、排出ガス後処理装置は、DPF+尿素SCRを採用するなど規制対応を行いつつ、クラストップレベルの動力性能も実現。
このエンジンに5速AMTを組み合わせて優れた燃費性能を備えていることも特徴といえるでしょう。ただ、ベースとなるエルフに用意される9速AMTが用意されていないのが残念なポイントです。
先進安全装備の充実
アトラスの特徴といえば、先進安全装備が充実していること。「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」、「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」、「LDW(車線逸脱警報)」を含む先進安全装備をフルスーパーロー全車に標準装備しています。
また、2トンモデルには交差点右左折時における事故抑制に向け、交差点警報を採用し、先進安全装備を拡充しています。
先進性を感じる躍動的なデザイン
いすゞ・エルフのOEMモデルでありながらアトラスは独自のフロントマスクを採用。見た目はトラックらしいタフなイメージを備えつつ先進性や親しみやすさも兼ね備えています。
キャビンの造形もスムーズで力強いもの。トラックとしての機能美を感じるデザインに仕立てられました。
日産アトラスの内装の魅力
ドライバー目線でデザイン
アトラスの内装は徹底してドライバー目線での開発を行ったことが特徴。視認性にこだわったメーターパネルや操作性にこだわった各種スイッチの配置が仕事の効率を高めます。
快適装備が充実
アトラスの両モデルとも利便性が高い装備を備えていることも特徴です。Bluetooth対応オーディオを標準採用するなど、ドライバーにとって嬉しい装備が備わりました。
日産アトラスの歴史【中型(2トン)】
初代(1981~1992年)
2トン、2.75トン、3トンの新たなトラックとして登場したのが初代アトラス。日産ディーゼル系販売店で販売する同型モデルはコンドルとして販売されています。
初代は、ディーゼルエンジンのみならずガソリンエンジンを用意したことや、スーパーシフトと呼ばれる副変速機を採用したことで優れた走行性能を実現。また、クラス最大のキャビンや荷台を備えていることで業務効率を高めていることが特徴です。
初代は1986年のマイナーチェンジで外観デザインを変更。また、1990年のマイナーチェンジではガソリンエンジンを変更することやパワーステアリングの全車標準装備化などを実施。機能性と快適性を高めました。
2代目(1991~1995年)
トラック本体の機能強化をテーマに開発された2代目が登場したのは1991年。ワイドキャビン車に先立ち、まずは標準キャビンシリーズが登場しています。
具体的な機能強化とはなにかというと、新エンジンを搭載し動力性能の向上、快適性の追求、エアロフォルムデザインの採用などなど。実際、新開発の4.2リッター直噴ディーゼルエンジンの搭載や室内スペースとフロアスペースを拡大、張りのある3次元曲面ガラスの採用などでフラッシュサーフェス化を実現し風切り音の削減を低下、などを実現しました。
2代目は1992年にワイドキャビンを追加。1993年には車種バリエーションを拡充するとともに、リモコン格納式電動ミラーを装備するなど利便性を高める一部改良が実施されています。
3代目(1995~2007年)
自社開発ではなくいすゞ・エルフのOEM供給を受け1995年にデビューした3代目。一部モデルにダブルウイッシュボーン式サスペンションの採用やエンジンの遮音性を高めたことで運転手に嬉しい乗り心地の向上や静粛性を高めたことが特徴です。
また、先代モデルと比べ最小回転半径を縮小し、荷下ろし時の操作力を大幅に軽減することができるワンハンドゲートを採用したことで仕事の効率を高めていることもポイントです。
3代目は1999年にマイナーチェンジを実施し、エンジン(ターボ車)の排気量を拡大。
2001年にAMTの搭載グレードを拡大するなどの一部改良を実施。2004年に実施したマイナーチェンジでは外観デザインを変更しています。
4代目(2007~2012年)
2007年にデビューした4代目アトラス。先代同様、いすゞ・エルフのOEM供給を受けデビューしました。
3代目の大きな特徴は居住性を大幅に高めた新キャビンシリーズを設定したこと。キャブ幅を先代比75mm拡大した1770mmとしたセミワイド幅キャブを設定したことで居住性向上を実現しています。また、先代と比べ約200kgの軽量化を実現したことも特徴といえるでしょう。
パワーユニットは新開発の4JJ1-TCS型ディーゼルエンジンを搭載。クラス初となるアイドリングストップ&スターシステムを標準装備するなど、燃費向上にも力が入れられていました。
5代目(2012~2021年)
「NT450アトラス」として2012年から販売を開始した5代目。大きなトピックスとなるのが、OEM供給元がいすゞからルノー・日産アライアンスとダイムラーAGとの戦略的協力関係に基づき、三菱ふそうに変更されたことです。
ベース車がキャンターとなった5代目は、新開発4P10型3リッターディーゼルエンジンに、当時、トラック唯一のAMTを組み合わせて高効率燃焼と低燃費を両立しました。
同車は2019年に平成28年排出ガス(ポスト・ポスト新長期)規制をクリアすることや、シングルキャブ車に電動パーキングブレーキをオプション設定するなどの一部仕様向上を実施。
2020年にベース車となるキャンターがマイナーチェンジを行うタイミングで販売を終了。6代目の発売まで約3ヶ月、アトラスの2トンクラスはラインアップ落ちしていました。
6代目(2021年~)
アトラス1.5トンクラスの一部仕様向上に合わせフルモデルチェンジを行った6代目。「ベースモデルを再びいすゞ・エルフに変更し、車名も「NT450アトラス」から新たに「アトラス2tクラス」として販売を開始ししました。
1.5tクラス同様、2021年11月の各種安全装備の装着義務化に向けて登場したとも言える現行モデルには、インテリジェント エマージェンシーブレーキ」、「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」、「LDW(車線逸脱警報)」を全車に標準採用。
また、安全装備に加え、全車にBluetooth対応オーディオを標準採用するなど装備が充実したことも特徴です。
使いやすい1.5トンクラスも充実しているのがアトラスの強み
日産アトラスの歴史【小型(1.5トン)】
初代(1982~1992年)
アトラス1.5トンクラスの初代は「アトラス100、150」との車名で1982年にデビューしました。初代の登場に合わせ、日産がラインアップするキャブオーバートラックは2トンクラスも含めてアトラスに車名が統一されています。
初代の特徴は、ディーゼル車にいまや懐かしい装備ともいえるOD(オーバードライブ)付き5速ミッションを備えるなど、運転操作性を向上させるなどを行い、運転手の疲労を軽減させることに力を入れたこと。
また、トータル25種類と豊富なモデルバリエーションを用意していたことなどが挙げられます。初代は1986年にマイナーチェンジを実施し、外観デザインおよびディーゼルエンジンを変更。
1990年の一部改良ではガソリンエンジンを変更しています。
2代目(1992~2007年)
初代登場から10年ぶりにフルモデルチェンジで登場した2代目アトラス。初代同様、車名は「アトラス100、150」となります。
先代モデルからとくにドライバーに対する快適性向上をテーマに開発された2代目は、室内スペースとフロアスペースを拡大。合わせてドア開口部面積の拡大やステップの高さ低減も実現しました。
また、車体剛性を高めたことや遮音材を効果的に配置したことで静粛性も向上。パワーウインドウやフルオートエアコンなど装備も充実させたことでドライバーの快適性が向上しています。
2代目は1995年にマイナーチェンジを実施して外観デザインを変更。さらに、1999年にもマイナーチェンジを行い、外観に加え内装のデザインも変更されました。
興味深いのが2代目はいすゞにOEM供給されていたこと。4代目以降はいすゞからOEM供給されているアトラスですが、ひと昔前までは逆だったことは興味深いことですよね。
3代目(2007~2021年)
日産自社開発トラックとして最後のモデルとなった3代目。クラストップレベルの最小回転半径を実現したことや居住性の向上、また収納スペースを充実させるなど仕事の効率を高めることをテーマに開発されました。
3代目のパワーユニットは、新開発ZD30DDTi型ディーゼルエンジンとQR20DE型ガソリンエンジンを搭載。トランスミッションに日産初となる6速AMTと6速MTを組み合わせ、スムーズな動力性能と燃費性能を高めることを実現しています。
同車は2010年、2013年、2015年にディーゼルエンジンの燃焼効率を改善するなどの一部改良を実施。2019年に4代目となるアトラス・ディーゼルが販売開始されたことで、ガソリンエンジン車のみが2021年まで販売を続けました。
4代目(2019年~)
2トンクラス同様、いすゞ・エルフのOEMモデルとしてデビューした4代目。デビュー当時は「アトラス・ディーゼル」として販売された4代目は、2019年から適応が開始される「平成28年排出ガス規制」に全車対応していることが大きな特徴です。
搭載されるパワーユニットは新開発の4JZ1-TCS型3リッターディーゼルエンジン。このエンジンにAT限定免許に対応した先進のシーケンシャルマニュアルトランスミッションを5速MTとともに採用。駆動方式もシングルキャブ、ダブルキャブともに2WDと4WDを用意しています。
同車は2021年に一部仕様向上を実施。「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」、「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」、「LDW(車線逸脱警報)」を全車に標準採用したほか、全車にLEDヘッドランプ、Bluetooth対応オーディオを標準採用しました。
日産アトラスが中古車市場で人気な理由
アトラスの中古車は現行モデルこそまだ市場に出まわっていませんが、数多くの車両が販売されています。
両クラスとも初代の中古車はありませんでしたが、1.5トンクラスは2代目から3代目、2トンクラスは3代目から5代目が中古市場で販売中。価格は年式というよりは仕様によって大きく異なるのが特徴。キッチンカーなどの特装車は価格が高くなっています。
アトラスが中古車市場で人気を博しているのはなんといってもバリエーションが豊富なことが大きな理由でしょう。同車の歴代モデルは多彩な仕様があることを売りに発表してきましたが、OEM供給となったいまでも幅広いニーズに対応できるモデルが揃っていることで中古車市場でも高い人気を得ています。
まとめ
数ある日産車のなかでもアトラスは知らない、という方も少なくないでしょう。現在はいすゞからOEM共有を受けているアトラスですが、以前は自社開発を行っていたり、一時期は三菱ふそうから車両を提供されている時期もありました。
乗用車はもちろんですが、日産が販売するトラックにも紆余曲折を繰り返しながら販売されてきたことがわかりました。
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