トヨタは全車併売化などによる車種整理を進めており、そのなかで現在も兄弟車として残っているのがミニバンのアルファード/ヴェルファイア、そしてノア/ヴォクシー/エスクァイアだ。
しかし、これらのミニバンも次期型では統合されることが予想されるわけだが、そのためか、ヴェルファイアとヴォクシーは現在、グレード体系が縮小されていてほぼ1グレードとなっている。
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この2車種はグレードの選択肢が少なくなっているので、通常であれば販売台数は少なくなる。ヴェルファイアはまさにその状況で、売れゆきは大幅に減少。ところが、一方のヴォクシーは3兄弟シリーズのなかで最も売れていて今も好調なのだった。
同じく単一グレード化した車種にもかかわらず、ヴォクシーとヴェルファイアの販売台数は明暗が分かれているのだ。その理由はどこにあるのか? 新車販売事情に詳しい小林敦志氏が解説する。
文/小林敦志
写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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■両車ともほぼ1グレードなのに売れゆきは真逆の結果!?
2021年4月28日、アルファードとヴェルファイアが法規対応などの改良を行った。改良のタイミングで両車ともにグレード体系の見直しも行われたが、ヴェルファイアに関しては、特別仕様車となる“GOLDEN EYES II”のみとなる、モノ(単一)グレード構成となった。
この時、ヴェルファイアの販売台数を確認してみると、例えば2020年度(2020年4月~2021年3月)での、年間販売台数はアルファード比で約13%となる1万4749台(月販平均約1229台)という、かなり少ない販売台数であったことに改めて驚かされた。
アルファード比13%まで販売数が下落したヴェルファイア。モノグレードに整理されたとはいえ、アルファードも似た仕様が売れ筋なので、ヴェルファイアが純粋に売れていないという事になる
一方で、アルファードなどより格下となる、ノア、ヴォクシー、エスクァイアでは、トヨタがトヨタ系ディーラー全店での全車種(一部除く)の取り扱いをスタートさせた2020年5月1日の前日、4月30日にヴォクシーはZS系とZSベースとなる特別仕様車「ZS“煌II”」のみとなり、事実上のモノグレードとなっている。
そのヴォクシーは2020年度の年間販売台数では、ノアに対して約2.5万台差、エスクァイアにいたっては約5.2万台差をつける、7万1903台(月販平均約5991台)と、3兄弟のなかでは断トツでトップとなっていた。
同じくモノグレードとなったヴォクシーの場合、ヴェルファイアとは事情が異なる。もともと人気のエアログレードが残ったため、売れ続けているのだ
同じモノグレード構成なのに、ヴェルファイアとヴォクシーでは置かれている立場が180度違う。なぜ両車の立場はここまで異なってしまったのだろうか。
■残価率やリセールの高さから、アルファード一強時代が到来してしまった
今回、2016年度から2020年度締めまでの、ヴォクシー、ヴェルファイア、アルファードの各年間販売台数の推移を棒グラフにしてみた。見ていただければ一目瞭然なのだが、販売台数の差こそあれ、ヴォクシーとヴェルファイアは右肩下がりなのに対し、アルファードは右肩上がりとなっている。
まずいえることとしては、ヴォクシーとヴェルファイア両車ともに、アルファードにお客を持っていかれているという状況にあるといえよう。
その要因のひとつには残価設定ローンの残価率がある。残価設定ローンにおいて設定される残価率は店頭で聞く限り、アルファードについては5年後で49%あたりになっている。しかし、この残価率は実際の相場よりも低めに設定されているのである。
ヴェルファイアは2020年度での販売台数の落ち込みもひどく、同じ兄弟車であっても残価率というよりは、実際の中古車市場などでの評価はアルファードには及ばなくなっている。
2016年度からの3車の販売推移。年を重ねるにつれ、緩やかな下降線をたどっているヴォクシーの推移が通常の売れ方だろう。様々な思惑が絡み、売れまくっているアルファードが異常値ではないか?
一方のヴォクシーは、小学生ぐらいの子どもがいる現役子育て世代のニーズが多いので、買い物や子どもの習い事の送迎、レジャーなど多方面で使われる頻度が高く、同年式でも過走行や内外装の状態があまりよくない状況の車両も多いので、5年後の残価率は30%前後と伸び悩んでいる。
そのため残価設定ローンを組んで新車購入を検討していると、車両価格はアルファードが圧倒的に高いのだが、残価率がかなり高いので、支払いプラン次第では「ヴォクシーの月々の支払い額に数千円足すだけでアルファードに乗ることができる」とセールスマンが案内すると、アルファードに飛びつく人が多いとのこと。
残価設定率はリセールのよさや買い替え時期の車両状態を勘案してメーカー側で設定。人気車種は残価も高く設定でき、そのため月々の支払いは軽くなる。これで波に乗ったのがアルファードだった
こうして、ヴェルファイアはもちろん、当初はヴォクシーの購入を検討していた人の多くもアルファードに流れているのが現状といえるのである。
■現行型は当初、ヴェルファイアが売れていたが、2018年から形勢逆転
2017年12月25日にアルファードとヴェルファイアはマイナーチェンジを行っているのだが、その時の月販目標台数はアルファードが3600台、ヴェルファイアが4500台となっていた。つまり、ヴェルファイアのほうが900台多かったのである。
しかしヴェルファイアは、マイナーチェンジモデルでのフルカウントとなる、2018暦年(2018年1月~12月)、2019暦年、2020暦年、いずれも平均月販台数は月販目標をクリアしていない。さらに、アルファードより多く販売したこともない。
つまり、ヴェルファイアはすでに2017年のマイナーチェンジのタイミングから、販売台数では失速傾向が目立っていたのである。
先ほどの棒グラフを見ると、2017年度でアルファードがヴェルファイアより多く売るようになり、ヴェルファイアの失速も加速しているが、アルファードとの販売台数差はかなりのものとなっている。
アルファード一強の流れは、2017年末のマイナーチェンジでの「攻め」の外観変更と昨年の全店併売化による影響だろう。売れるクルマが輪をかけて売れる構図が出来上がってしまった
これは、“アルファード転がし”などが顕在化してきたタイミングと重なる。
アルファードは東南アジアなどで富裕層から高い人気があり、日本からの正規輸入モデルも販売されているのだが、左側通行(右ハンドル)の国では日本の中古車も人気がとても高い。
そのため中古車輸出が積極化し、日本ではアルファードの新車を短期間で売却する(海外へ出荷するためとされている)、“アルファード転がし”が盛んに行われるようになった。
そのため、「下取り査定額が新車価格を上まわった」とか、「高年式の中古車を買ったユーザーがディーラーで点検してもらっている間に新車の見積りを取ったら、新車のほうが安かった」など、信じられない話が販売現場では聞くことができた。
2020年5月にトヨタが全店で全車種(一部を除く)の併売を始めた時に、販売現場を訪れると、元専売チャンネルであるトヨペット店以外のショールーム内にもアルファードの大判ポスターが、掲示されるようになった。そして、もともとノアを専売していたカローラ店でもヴォクシーの試乗車が置かれていた。
つまり、この時点でトヨタの販売店ではアルファード及びヴォクシーをメインに売るようにという流れができていたのである。
■ヴォクシーはもともとエアロ系が売れ筋。販売店もノアとの売り分けを実施
ノア系3兄弟は、2017年7月のマイナーチェンジの時のリリースをみると、月販目標台数はヴォクシー5000台、ノア2700台、エスクァイア2300台となっており、ヴォクシーはノア、エスクァイアの約2倍の月販目標台数となっている。
ノア系3兄弟などのクラスでは伝統的にエアロ系モデルの人気が高く(エスクァイアは設定なし)、3兄弟のなかでとくにエアロ系志向の強かったヴォクシーの月販目標台数が多いのは市場を意識したものと考えていいだろう。
またこのクラスのユーザーの傾向としては、お父さんより、いわゆる“普段乗り”が多いお母さんのほうが、クルマを使う機会が圧倒的に多いこともあり、そのお母さんのなかには、馴染みのあるクルマに乗り継ぎたいとする人も多い。そのため、ヴォクシーからヴォクシーへといった新車への乗り換えが目立っている。
ノア系3兄弟。今年末とも噂されるモデルチェンジでは、長兄ノアに統合しエアロとノーマル設定予定とされていたが、決まったとは聞こえてこない。それだけヴォクシーの存在感が際立つのだ
ただ、マツダがミニバンとなるビアンテの販売を終了し、ステップワゴンも3代目あたりから初代モデルのような勢いは失われており、それらのモデルを乗っていたユーザーがヴォクシーに集まってきたというのも、ヴォクシーが強くなってきている要因のひとつといえるだろう。
また、ノア系3兄弟は年末にもモデルチェンジが予想される末期モデルなのだが、そのなかでヴォクシーはいまもなおテレビコマーシャルが積極的にオンエアされ、有名俳優がお父さん役で娘とドライブするものと、有名タレントがお母さん役で息子とドライブする2パターンが用意されている。
アメリカあたりではミニバンは、“生活臭の強いクルマ”として敬遠するひとも多い。日本でもミニバンはファミリーカーの代表となっているが、「俺も(私も)ミニバン運転する歳になったのか」と思っているミニバンユーザーも少なくない。
そのようなユーザーの“免罪符”のようなものが、ミニバンのエアロモデルなのである。前述したヴォクシーのテレビコマーシャルで描かれるお父さんやお母さんは、若い頃は“やんちゃ”だったんだろうなあと思わせる設定となっている。
ただし、そのようななかで、アルファードというものが購入対象として視界に入ってくるようになり、ラグジュアリーミニバンという新たな“免罪符”として、アルファードが販売台数を増やしているのかもしれない。
■全店併売化により、消えゆくヴェルファイア。ヴォクシーはどうなのか?
同じ店舗でアルファードとヴェルファイア、そしてノア、ヴォクシー、エスクァイアを扱っていれば、お客がよほど好みを主張しない限りは、「どちらを(どれを)販売メインにするか」と決めるのはごく当たり前の話に見える。
ただ、販売現場では「ヴェルファイアはなくなるだろう」という声が大勢なのだが、ノア系では「エスクァイアはなくなりそうだが」としながら、ノアとヴォクシーのどちらが残るのかとなると話はかなり微妙となっている。
日本では現行モデルで販売終了が決定の様だ。しかし、転んでもタダでは起きないところはさすがトヨタ。今度は中国で「クラウン ヴェルファイア」としてデビュー! 「いつかは」ではなく「いつの間にか」クラウンである
2020年9月にトヨタはタンク/ルーミーのタンクを廃止してルーミーのみにした時のように、例えば車名をヴォクシーに統一し、標準系モデルのデザインをノアっぽくして、ヴォクシーらしいエアロ系を前面に打ち出した統合をフルモデルチェンジで行うかもしれない。
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