■WRC参戦の認可取得のために生まれたモンスター「ランサーエボリューション」
かつて三菱でラインナップされていた4WDスポーツセダンとして、「ランサーエボリューション」が存在します。1992年にデビューして以来、ランサーエボリューションはシリーズ化され、最終的に2015年に発売された「ランサーエボリューションX」のファイルエディションで完結しました。
いまなお熱狂的なファンの多いランサーエボリューションシリーズですが、初代モデルが誕生した経緯はどのようなものだったのでしょうか。デビュー当時の時代背景も含めて解説します。
1980年代は日本車が世界と同等、または同等以上の存在になるべく急激に進化を果たした時代でもあります。
好景気に沸く日本経済の強力なバックアップもあり、開発費をどんどん使えたことや、レースで好成績を残すこと=クルマが売れる時代でもありました。
そんな時代背景のなか、WRC(世界ラリー選手権)では、1987年から「グループA」がトップカテゴリとなります。これは、年間2500台(設立当初は年間5000台)以上を生産・販売すればホロモゲーション(認可)が取れるというものでした。
これを受け、世界の自動車メーカーはグループA規定のラリーマシンを開発しました。
そんななか、以前からラリー活動をおこなっていた三菱は、グループAのマシンとして1987年に発売された「ギャランVR-4」を投入。
その後ギャランVR-4に代わるマシンとして登場したのが、「ランサー」をベースとしたラリーへの参戦が前提の限定モデル「ランサーエボリューション」(ランエボI)です。正式名称は「I」のつかないランサーエボリューションとなります。
当時の「ランサー」(4代目)のスポーティグレード「1800GSR」をベースに、「ギャランVR-4」に搭載されていた直列4気筒DOHCターボの「4G63型」エンジンとフルタイム4WDシステムを移植。
グレード展開は、日常使いを前提に装備が充実した「GSR」と、競技用ベース車両の「RS」というグレード展開でした。
4G63型エンジンは、250馬力ものハイパワーを発揮。これにより、車重1170kgの「RS」グレードでのパワーウェイトレシオは4.8kg/PS以下となり、日産「スカイラインGT-R(R32型)」をも凌ぐ数値を達成しました。
■TVCMなしでも3日で完売! 追加で2500台以上を生産
ランサーエボリューションは、デビュー時はTVCMや目立った告知もなかったにも関わらず、ホロモゲーション取得用の2500台はわずか3日間で完売してしまったほど人気を博します。
急遽、2500台が追加生産されたほどで、最終的には7628台が販売されました。
そして詳細について見てみると、全長4310mm×全幅1695mm×全高1395mmというボディサイズは、ベースとなった「ランサー」より全長が40mmほど伸びた程度でした。
また組み合わされるトランスミッションは5速MTのみ、駆動方式は4WDのみの設定でし、タイヤサイズは前後とも195/55R15です。
また「VR-4」から単純にエンジンとドライブトレインを移植したわけではなく、車体剛性をアップさせるなど最適化や、アルミ製ボンネットフードの採用などでさらに軽量化をはかり、大きな開口部を持つフロントバンパーや大型リアスポイラーなど専用装備で武装。
GSRでは車内もレカロ製シート&MOMO社製のステアリングも奢られるなど、コンパクトサイズながらもスポーティな雰囲気をまとっていました。
ランサーエボリューションは、WRCのグループA規定で1993年の開幕戦から1994年の第3戦までワークスマシンとして参戦しました。
優勝はできなかったものの、小型軽量なボディ+ハイパワーエンジン+4WDというラリーカーの定番スタイルを示していました。
なによりも2リッタークラスで当時最強の「スカイラインGT-R」に匹敵する速さを誇るモンスターマシンとして、歴史にその名が刻まれています。
※ ※ ※
ランサーエボリューションはこの後シリーズ化されて、ベース車両であるランサーのフルモデルチェンジに合わせ、第1世代(ランエボIからランエボIII)、第2世代(ランエボIVからランエボVI)、第3世代(ランエボVIIからランエボIX)、第4世代(ランエボX)と大きく区分けされています。
それぞれの世代によって特徴や方向性が異なりますが、いつの時代も最速のハイパワー4WDセダンを目指す存在であり続けました。
そして、ランサーエボリューションの歴代モデルは日本のみならず海外でも一部で熱狂的な人気となっています。そして生産が終了したことでさらにディープな人気が過熱、結果として「ランエボ」の中古車にプレミアが付く事態になっています。
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