現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜ黒い? 新型エクストレイルのVモーショングリルが海外仕様と違うワケ

ここから本文です

なぜ黒い? 新型エクストレイルのVモーショングリルが海外仕様と違うワケ

掲載 18
なぜ黒い? 新型エクストレイルのVモーショングリルが海外仕様と違うワケ

新型エクストレイルのデザインについて、プログラム・デザイン・ダイレクターを務める入江慎一郎氏に伺った。同氏は商品本部の担当者といっしょになってデザインの方針を決めたキーパーソンである。

■原点回帰に加えて上質さをプラス

意外に多い「あおり運転から逃げたらオービスに!」との主張…裁判官はどう退ける?

私の個人的な意見かもしれないですけれども、先代の3代目エクストレイルはどちらかというとSUVというよりはクロスオーバー寄りな、都会的な走りを想起させるスタイリングでした。やはりエクストレイルとしてのタフギアみたいなところが若干弱く感じていたので、そこはちょっと戻したいなと。ただ、単純に初代・2代目の“タフギア”として原点回帰するだけだと、新型の価格アップ分に対して、お客様はけっこうセンシティブ(敏感)に見ている。カッコよくなったからといって、ポンとお金を払ってくれるほど、世の中は甘くはありません。

また、特に全世界、同じデザインで売っていくという“グローバル ワンフェイス”という考え方で作っていますので、市場はアメリカもあれば日本、中国もある。というところで、いかにまんべんなく偏りなく、デザインできるかというところが勝負でしたね。それをタフさだけではなくて、上質さをもってデザインするというところが、1つキーポイントになっています。それがあったからこそ、グローバルで同じデザインでありながら、まんべんなくデザインの評判がいいということにつながっているのだと思います。

■上質というキーワードは世界共通?

そうですね。アメリカ人であろうが、中国人であろうが、日本人であろうが、上質なものを嫌いな人はいない。逆に上質さがないと、あと一歩で手が届くかどうかという時に、パッと買ってしまうか、もうちょっと考えようとなってしまうか、そこの“差”みたいな部分だと私は思うんですよ。実際、私もそういうところがあって、例えばスーツであれば、やはり細かい造り込みのよさみたいなところで、たぶんお金がかかっているんだろうなと思うぐらいの上質さを感じるから、パッと見ただけでも、何か違いを感じる。そこが上質さのエッセンスだと思います。

昨今、日産自動車のデザインは、“これ見よがし”的なプレミアムネスみたいなものはやらないんですよ。サクラとかノート オーラを見ていただければわかると思いますが、ほとんどクロームメッキがないんです。サクラは、多くのお客様から、軽自動車なのにすごく上質さを感じる、プレミアム感があると。それを感じていただいているからこそ、値段よりもさらに高いものを買ったような満足感を得られるという声をいただいています。日産はある時期から、方向転換して、しつらえのよさ、シンプルながら造り込みを極限まで頑張っているがゆえに得られる、無意識のなかで感じるプレミアム感をくみ取っていただいているのが、すごくうれしいですね。

日本人の美意識は“足し算”ではなくて“引き算”ですね。足していって豪華に見せるのではなくて、要らないものを引いていって、本質だけを残す。私はそこが究極の贅沢だし、プレミアム感だと思うんですね。そこを今、一生懸命デザインしています。だから、クロームを付ければいい、というのとは真逆なんです。

■海外仕様との大きな違いはVモーショングリル

今回、そういう意味で特徴的なのが、エクストレイルの北米版であるローグとの違いです。ローグの雰囲気は、エクストレイルのオーテック系グレードにその名残がありますが、それはグリルの内側にあるVモーションの太いバー。日本ではその部分を黒で隠しているんですけれども、北米だとクロームなんです。でも、日本に持って来たときに、やはりそういう美意識とか、e-POWERの静粛性から来る、これ見よがしではない上質さみたいなものを演出したかったので、内側のクロームをブラックアウト。外側のピンストライプのVモーションだけを残したのです。それがまさに“引き算の美学”。要は日本市場にとって要らないものを剥ぎ取って、本来必要なものだけを残したというような代表例みたいなアイテムですね。このようにVモーションのブラックアウトは海外仕様との大きな識別点になっています。

■グリルの組み木模様は日本からインスピレーション

新型エクストレイルのラジエターグリルは、日本の伝統工芸の「組み木」からインスパイアされて、現代風にアレンジを加えながら、デザインの一部として取り込んでいます。昨今の日産の“タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム”というアリアの少し前からあったボキャブラリー、共通の言語を取り入れています。そのなかの“ジャパニーズ”の部分、“タイムレス”も少しかかっているんですけれども、そういった伝統工芸からインスピレーションがわいて、現代風にアレンジする。昔からずっと愛されてきている工芸品やその手法を取り込めば、その先もずっと愛してくれるだろう、今でいう“タイムレス”です。そんなタイムレスなデザイン、飽きのこないデザイン。さらにそのモチーフの元となっているのが日本の伝統工芸という“ジャパニーズ”です。ただし、それだけだと古臭いデザインになってしまうので、ちゃんと“フューチャリズム”といって、現代的な解釈を加えながらデザインをしています。そういうものがいろいろな所にちりばめられています。

例えばリヤコンビランプのなかに、今回無垢のインナーレンズを使っているんですけれども、そこにパターンが施されていいます。それも江戸切子からインスパイアしてデザインしている。海外仕様も同じデザインを使っていて、日本的な要素として海外でもウケています。私は日本の伝統工芸の作品は、グローバルで通用するものが多いと思うんですよね。もっともっと広めていったらいいなと。私たちはそこからインスパイアされて、こうやってグローバルに売っていくプロダクトのなかに、ちょっとずつ折り込みながら、日本のメーカーとして日本を少しずつ宣伝しているみたいなところもあります。

サクラでは室内に桜の花びらのモチーフがあったり、水引のように縦横に交差したラインがエクステリア(ホイール)にあります。スピーカーは通常、パンチングが空いていたりするんですけれども、アリアではそこをあえて格子にして日本的な縦横のパターンを取り入れたりとか、いろいろなことをやっています。

海外の方はこうした日本のオリジナリティあふれるデザインに関心を寄せてきますよ。例えばフェアレディZのルーフ左右両端にあるシルバーのモールディングは社内的には“刀”と呼んでいて、まさに刀の切っ先をイメージして作ったんですね。ああいうのも日本刀からインスピレーションがわいて、デザインしたんだよと海外の方にいうと、すごくウケています。あと、そういう裏話というか、デザインのもとになっている意味を、きちんと日本のメーカーとして作っているという点をすごくポジティブに捉えてくれています。やっぱり国籍がわからないというよりは、Zだったら日本のスポーツカーとして売っているんですよというのに共鳴してくれる人はいっぱいいます。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

こんな記事も読まれています

【最新モデル試乗】日産ノートがリフレッシュ! 日常性能を磨いた電動車の心踊るパフォーマンス
【最新モデル試乗】日産ノートがリフレッシュ! 日常性能を磨いた電動車の心踊るパフォーマンス
カー・アンド・ドライバー
マツダ「すごいロードスター」実車公開! 国内初の「2リッターエンジン」搭載した“最強ソフトトップ仕様”! 市販前提「スピリットRS」登場!
マツダ「すごいロードスター」実車公開! 国内初の「2リッターエンジン」搭載した“最強ソフトトップ仕様”! 市販前提「スピリットRS」登場!
くるまのニュース
着脱できるバッテリーが便利! ポータブル電源「Honda Power Pod e:」が発売
着脱できるバッテリーが便利! ポータブル電源「Honda Power Pod e:」が発売
月刊自家用車WEB
「下手くそ棒」なんて悪口も!? もはや絶滅危惧種の「コーナーポール」の有効度ってどんなもんだった?
「下手くそ棒」なんて悪口も!? もはや絶滅危惧種の「コーナーポール」の有効度ってどんなもんだった?
ベストカーWeb
N-BOX首位陥落の原因は、間違っても「シンプル路線の失敗」ではない
N-BOX首位陥落の原因は、間違っても「シンプル路線の失敗」ではない
Merkmal
ついに800万円超え!? マジか……スバルWRX S4にSTIモデルの[S210]がついに登場へ! エンジンパワーアップでパフォーマンス爆上げ!!
ついに800万円超え!? マジか……スバルWRX S4にSTIモデルの[S210]がついに登場へ! エンジンパワーアップでパフォーマンス爆上げ!!
ベストカーWeb
ベスパ「プリマベーラ125」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
ベスパ「プリマベーラ125」【1分で読める 原付二種紹介 2024年現行モデル】
webオートバイ
これで充分じゃん。アウトドアを感じさせないホンダN-VANがベースの軽キャンパー
これで充分じゃん。アウトドアを感じさせないホンダN-VANがベースの軽キャンパー
月刊自家用車WEB
もしやヴェゼル窮地!? お、値段以上に立派なバカ売れWR-Vってコスパ最強じゃない!?
もしやヴェゼル窮地!? お、値段以上に立派なバカ売れWR-Vってコスパ最強じゃない!?
ベストカーWeb
マークIIにチェイサー、クレスタ3兄弟バカ売れたよなぁ…… てかどんな違いがあったん!?!?
マークIIにチェイサー、クレスタ3兄弟バカ売れたよなぁ…… てかどんな違いがあったん!?!?
ベストカーWeb
ヤマハ、プラマック・レーシングと複数年契約。2025年からファクトリー仕様のYZR-M1は4台に/MotoGP
ヤマハ、プラマック・レーシングと複数年契約。2025年からファクトリー仕様のYZR-M1は4台に/MotoGP
AUTOSPORT web
バニャイアがレコード更新でプラクティスのトップ。0.065秒差でビニャーレスが2番手に続く/第8戦オランダGP
バニャイアがレコード更新でプラクティスのトップ。0.065秒差でビニャーレスが2番手に続く/第8戦オランダGP
AUTOSPORT web
角田裕毅が”暴言”を発した疑いが浮上。FIAが調査へ……ファンによるSNSへの投稿がきっかけに
角田裕毅が”暴言”を発した疑いが浮上。FIAが調査へ……ファンによるSNSへの投稿がきっかけに
motorsport.com 日本版
[スープラ80]の発売当時はあまり評価されなかった!? 過去を20代の若者に伝えたい【リバイバルBESTCAR】
[スープラ80]の発売当時はあまり評価されなかった!? 過去を20代の若者に伝えたい【リバイバルBESTCAR】
ベストカーWeb
おいおいまじかよ! 新東名にて行われている実証実験が最先端すぎる件
おいおいまじかよ! 新東名にて行われている実証実験が最先端すぎる件
ベストカーWeb
ハウガーが今季2度目のPP獲得。FP最速のハジャルを不運が襲う/FIA F2第7戦シュピールベルク予選
ハウガーが今季2度目のPP獲得。FP最速のハジャルを不運が襲う/FIA F2第7戦シュピールベルク予選
AUTOSPORT web
GTワールドチャレンジ・ヨーロッパの2025年カレンダー発表。バレンシアとザントフォールトが復活
GTワールドチャレンジ・ヨーロッパの2025年カレンダー発表。バレンシアとザントフォールトが復活
AUTOSPORT web
GTワールドチャレンジ・アジアの2025年カレンダー発表。日本は2戦、インドネシアで初開催へ
GTワールドチャレンジ・アジアの2025年カレンダー発表。日本は2戦、インドネシアで初開催へ
AUTOSPORT web

みんなのコメント

18件
  • 2年経ってるし、さすがに全く同じじゃあね。ってことだろう。
  • 入江さん なぜキックスの日産マークは古いままなのでしょう?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

360.1533.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8558.0万円

中古車を検索
エクストレイルの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

360.1533.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8558.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村