答えはいろいろな形があっていい
電気自動車=BEVが苦戦している。正確には『そういう空気感になっている』と書いたほうが、筆者の抱いている感覚に近い。電動化まっしぐらで進んだものの、その速度に需要が追い付かず、各ブランドが踏み込んだアクセルペダルを少し戻している状況に見える。いわゆる『電動化の踊り場』だ。
【画像】ツインモーターのスポーツカー級『裏ボルボ』!EX30ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス 全35枚
個人的な意見としては、カーボンニュートラルの答えはBEV一択ではなく、いろいろな形があっていいと思っている。水素やバイオ燃料はもちろんのこと、マツダがジャパンモビリティショー2025で提案した二酸化炭素を回収する装置など、その未来はマルチソリューションで語られるべきだ。
そしてその中で、このままBEV方向へ突き進んでもいいのではないか? というブランドがいくつかある。今回のテーマ、『ボルボ』もそのうちのひとつだ。一番コンパクトなBEV、『EX30』をいろいろと取材させて頂く中で、だんだんとそう思うようになった。
先に前提の話を書いておくと、ボルボも同じく踊り場の状況だ。XC90とXC60にビッグマイチェンを施したのがその具体例で、マイルドハイブリッドモデルを強化することで、市場のニーズに対応している。特にXC60は未だにブランド内のベストセラーカーだ。
参考までに今年1~10月のグローバル販売台数は以下のとおりで、単純に台数だけ見ると、フルEVの落ち込みがかなり大きい。
フルEV:11万9087台(前年同時期14万6991台/マイナス19%)
プラグインハイブリッド:13万7685台(同13万9653台/マイナス1%)
マイルドハイブリッド/エンジン車:31万7977台(同33万5964台/マイナス5%)
合計:57万4749台(同62万2608台/マイナス8%)
UK編集部がレポートしているとおり、ボルボはコスト削減と利益率向上のため吉利グループ内でのハードウェア共用を拡大していくとしている。また、来年1月には本命ともいえるEX60のデビューが控えており、マイルドハイブリッド/エンジン車との共存で当面をしのいでいく想定だ。
販売好調を受けて5モデルへと拡大
今回取材したEX30は全長4235mm、全幅1835mm、全高1550mmと、特に狭い道の多い地域で強みを発揮するコンパクトなサイズがウリだ。最初に日本導入された時は1モデルだったが、販売好調を受けて、8月に以下の5モデルへと拡大している。
1:EX30プラス・シングルモーター/航続距離390km/価格479万円
2:EX30プラス・シングルモーター・エクステンデッドレンジ/560km/539万円
3:EX30ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ/560km/579万円
4:EX30ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス/535km/629万円
5:EX30クロスカントリー・ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス/500km/649万円
このうち1のみがLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー搭載モデルで、航続距離は短いものの500万円切りとなる価格がポイントで、4と5は前後にモーターを搭載するAWDのハイパフォーマンスモデルとなる。
ちなみにツインモーターのスペックはフロントが最大出力115kW(156ps)/最大トルク200Nm、リアが最大出力200kW(272ps)/最大トルク343Nmとなり、まさにスポーツカー級。ただし見た目はシングルモーターとほとんど変わらないので、言ってみれば『裏ボルボ』みたいな存在だ。
9月中旬の取材時なので少し前のデータだが、クロスカントリーは順調な出足で、他グレードは、1:20%弱、2:10%弱、3:54%、4:20%弱という販売比率になっている。裏ボルボと書いたが、スペックよりはAWDであることのほうが需要に繋がっているそうだ。
EX30ツインモーターに箱根で試乗
さて、クロスカントリーは以前、都内で試乗済みで、今回は『EX30ウルトラ・ツインモーター・パフォーマンス』(以下EX30ツインモーター)に箱根で試乗することができた。
ドライブモードは、走行距離と電力消費を最適化する『標準』、航続距離を最大化する『レンジ』、フロントモーターを常時発揮する『パフォーマンス』の3タイプが用意される。
ツインモーターを搭載する両車ともに共通するのは、パフォーマンスモード時の異常なほどの速さだ。箱根の登坂が平地に感じるほど、そのパワーは強烈。アウトドアや雪上を意識してAWDを選んだオーナーは面食らうに違いない。表現を変えると、ジェットコースターが好きな方向け……と思えるほどだ。
それだけハイパワーであってもスポーツカーではないので、正直、峠を攻めるタイプのクルマではない。一方で乗り物として楽しい! という感覚もあり、楽しい試乗になったことは強調しておこう。
やはり、EX30の本領を発揮するのは街中でのドライブだ。
3段階に設定されている回生ブレーキは効きが絶妙で、コンパクトなサイズと相成って、実に乗りやすい。オートクルーズコントロールである『パイロットアシスト』も、作動条件になった時にシフトレバーを倒すだけと簡単で、電動化や安全の部分においては実に洗練されており、全てに一日の長があると感じる。
また、ツインモーターの部分を除けば、いい意味でBEVの特別感が希薄で、自然体で乗れるのがEX30の魅力だと感じた。ということは街中でのベストバイはLFPバッテリーのベーシックグレート? と俄然気になるではないか。
というわけで後日広報車をお借りしたので、ボルボEX30の話は次回に続きます。
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