WRXと共通のFJ20型を搭載していた
スバル初代「インプレッサ スポーツワゴン」に1995年10月に追加された「グラベルEX」。当時はRVブームだったこともあり、カンガルーバーや背面タイヤを装着していました。今回は当時のカタログであらためて振り返ります。
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クロストレックのルーツとなったモデルだった
「走りは、WRCで鍛えた。楽しさは、ワゴンがくれた」……こんなコピーが、1995年10月に登場したスバル「インプレッサ スポーツワゴン グラベルEX(エックス)」のカタログには記されている。2024年の今になって読み返すと、なかなか硬派なムードにも感じなくもない。もちろんそれは当時のWRC世界ラリー選手権で最強のグループAマシン「インプレッサ555」の雄姿(カタログにも写真を載せている)に裏付けられたものだった。
先ごろストロングハイブリッドを追加したばかりの「クロストレック」の、いわばルーツにあたるのがこのグラベルEXだ。ちなみに同世代の国産車で、当時の自動車ガイドブックで「RV」と分類された乗用車カテゴリーでスペアタイヤを背負った(背負わされた?)クルマを改めて確認してみると、トヨタ「カルディナ/スプリンター カリブ」の「フィールドハンター」、日産「パルサーセリエ S-RV」、「ラシーン」、三菱「RVR スーパースポーツギア」などがあった。この時代は前出のオフィシャルな自動車ガイドブックにもRVの区分があったほど、ちょうど今のSUVのようにこのカテゴリーが注目を集めていた頃で、各社のいわゆるクロカン4WDなどが全盛期の頃でもあった。そんな中で忽然と姿を現したのが、このグラベルEXだったのである。
ただし見誤ってはいけなかったのが、ただゴツいカンガルーバー、リアにスペアタイヤキャリアなどを装着しただけで仕立てた「なんちゃってRV」どころではなかったということ。最大のポイントは当時のインプレッサシリーズのトップモデルに設定されたWRXと共通のFJ20型エンジンを搭載していた点。最高出力220ps/6000rpm、最大トルク28.5kgmの、WRXにも搭載された水平対向2L・BOXERの4カム16バルブターボがそのエンジンだったわけだが、あろうことか、試乗した記憶はアクセルを少々踏んだことくらいしかなく、つくづく実車にシッカリと乗っておくべきだったと29年後の今になって非常に後悔しているところだ。
スポーティなハンドリングを実現していた
なおこの時代のスバル車らしく、4WDについてはAT車にはVTD-4WD、MT車にはビスカスLSD付きセンターデフ方式と、それぞれに使い分けられていた。前者は通常35:65のトルク配分とし、後輪に多くのトルクを配分することでスムーズな回頭性、スポーティなハンドリングを実現する。後者は通常50:50の配分とし、前後輪に回転差が生じた場合にLSDを瞬時に働かせ走行状態に応じて最大のグリップ力を確保し、スポーティドライビングに応えたもの……とカタログでも説明されている。
そのほかにフロントを2ポットとした4輪ディスクブレーキや7+8インチタンデム倍力装置、4センサー・4チャンネル方式のABS(メーカー装着オプション)などを設定。サスペンションは4輪ストラットとし、サスペンションストロークをとった専用とし、最低地上高はベース車より30mm高められた185mmの設定としていた。
当時のRVのお約束といったアイテムを装着
外観ではフロントプロテクターと呼ばれるグリルガードに目がいくが、よく見ると「GRAVEL EXPRESS」のレタリングが入っており、それはリアのスペアタイヤカバーも同様。ほかにフロント側では丸型の大径フォグランプ(カバー付き)をはじめ、アンダースポイラー、サイドシルガード、リアスプラッシュガード、フロント&リアフェンダーガードといった、当時のRVのお約束といったアイテムを付加した出で立ちになっていた。そのほかにルーフスポイラーも装着、タイヤは205/60R15 91Hサイズで、5本スポークながらWRXとは異なる専用デザインのアルミホイールを装着している。
他方でインテリアでは、装備としてはナルディ社製の本革ステアリングホイールや本革巻きATセレクトレバーまたはマニュアルシフトノブを装着。シートに関してはWRXのようなモールドタイプのバケットではなくローバックで表皮の柄も大人しめのものが採用されていた。6:4分割可倒式リアシート、マルチトノカバーなどは標準で、ワゴンとしての機能性、使い勝手のよさは確保されていたほか、このグラベルEXはスペアタイヤをリアのキャリアにマウントすることから、ラゲッジルーム床下にスペースができ、そのことをカタログでは「大型サブトランク」と謳っている。
グラベルEXのDNAを受け継いだクルマとは
ご存知のとおりこのグラベルEXは、その後「インプレッサXV」→「XV」→「クロストレック」とそのコンセプトを進化・発展させて今に至っている。グラベルEXと現在のクロストレックとでは時代の違いによるデザインの表現手法には差があるものの、楽しげに遊ぶためのクルマという精神の部分は間違いなく受け継がれているといっていい。
なおグラベルEXの後継モデルだった、2010年6月登場のインプレッサXVは、当時のインプレッサ5ドアをベースに、専用グリルやバンパー、ホイールアーチ部のクラッディングなどで外観を専用化。エンジンには1.5Lと2Lを用意し、どちらにも2WDとAWDが設定された。さらに2012年に登場したのがXV名義の初代モデルで、こちらは現行クロストレックの先々代に当たる。最低地上高を200mmに高めつつも全高を1550mmに抑え都市部での使い勝手のよさをもたせたほか、2013年にはハイブリッドモデルも登場させた。
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みんなのコメント
「日本にカンガルーなどいない」と言ってた大御所自動車評論家がいたな・・・