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2代目フォルクスワーゲン トゥーランは細やかな改良が積み重ねられていた【10年ひと昔の新車】

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2代目フォルクスワーゲン トゥーランは細やかな改良が積み重ねられていた【10年ひと昔の新車】

2010年8月、フォルクスワーゲン トゥーラン(日本名ゴルフ トゥーラン)が第2世代にフルモデルチェンジされた。2003年に登場した初代はたちまち欧州のコンパクトミニバンセグメントリーダーになるほどの人気もモデルとなったため、劇的な変化は見られないが、このフルモデルチェンジでどこがどれほど進化していたのか。Motor Magazine誌はドイツ本国で行われた国際試乗会に参加しているので、今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年10月号より)

本国では「トゥーラン」というモデル名で独立車種として登場
ドイツ本国では2003年秋、日本国内へは2004年4月から導入が始まったゴルフ トゥーランは、フォルクスワーゲンがゴルフVをベースに初めて作り上げたコンパクトサイズのMPV(マルチパーパスビークル=多目的車)である。

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北米市場で人気を集めていたミニバンは、日本市場でもスペース効率も高い小型(アメリカに比べれば)3列シート車として大ブームとなったが、欧州ではなかなか受け入れられなかった。しかし、1996年にルノー セニック、1999年にオペル ザフィーラが登場すると、欧州でもコンパクトミニバンというセグメントが一気に開花した。その流れにやや乗り遅れた感もあったが、フォルクスワーゲンが2003年にトゥーランを登場させるや、ゴルフをベースとしたその高品質高性能でたちまちセグメントリーダーになってしまった。フォルクスワーゲン、恐るべしである。

しかし、それでも日本市場導入には慎重だった。すでに多くのコンパクトミニバンが存在していた日本市場に、価格的ハンデを負う輸入車が食い込むのは簡単ではなかった。実際、先に登場していたオペル ザフィーラも大ヒットまでは行っていなかった。

それゆえ、フォルクスワーゲンは日本導入に際して、本国では独立車種のトゥーランをゴルフファミリーの一員であることを強調するべく、名前を敢えてゴルフ トゥーランとした。この戦略がどれほど功を奏したのか推し量るのは難しいが、ゴルフのアーキテクチャーを活用したミニバンという事実は、ユーザー側に一定の安心感をもたらしたはずだ。

周知の通り、ゴルフは日本で最もポピュラーな輸入車、つまり国産からの乗り換えを常に喚起する1台だが、異様な高まりを見せるミニバン需要に対応する術を当時は持っていなかった。

ミニバンには、一度使うと手放せなくなる魅力がある。それはイザというときにあと何人か乗れる安心感と空間活用の柔軟性だ。この使いやすさを享受してきた日本のユーザーはすでにリピーターを生む時期に入っていた。つまりミニバンは子育て期のファミリーカーとしてだけでなく、MPVとして確固たる地位を日本で固めたのだ。

そこに、7人乗れるゴルフであるゴルフトゥーランが導入された。当初のベースモデル1.6FSIを積むEの価格は270万円台、2.0GLiも310万円台と手頃。もちろん国産ミニバンに較べれば割高ではあるが、フォルクスワーゲンのブランドバリューやドイツ的なものづくりに触れる対価としては妥当であった。

かくしてゴルフトゥーランは、ほどなくラインナップの一角を担う重要な車種となる。その後のエンジン戦略もうまく取り入れ、2007年には1.4TSIを搭載。2009年には、6速だったDSGが7速に変更されて現在に至る。

ただ、中身は適宜アッデートされているものの、スタイリングは長く変わっていない。先代ではずいぶん遅れて登場したヴァリアントがすでにワッペングリルを廃してVIに変わっているというのに、トゥーランは現在でもワッペングリルのままなのである。

外観に劇的変化はないがアップデートの中身は濃い 
そんなトゥーランもようやく新型に移行する。本国では2010年8月に販売が開始されており、日本には遅くとも2002年内には上陸の見通しだ。もっともこの新型トゥーラン、フォルクスワーゲンではフルモデルチェンジと言っているものの、それほど劇的な変化は見られない。

まず外観から見ていこう。フロントマスクは左右のライトをスリムな水平基調グリルがつなぐフォルクスワーゲンの最新モードに合わされ、ヘッドライトはLEDの列により目尻を縁どるデイタイムランニングライト付きとなった。このヘッドライトにはメインビームの照射角調整や自動減光を行うダイナミックライトアシスト機能も備わっている。

ボンネットフードはやや厚みを増し、左右のV字ラインもシャープなカットとなって精悍さを増している。サイドはドアパネルを変更しなかったため大きな違いはないが、リアクオーターウインドウが切れ上がり、軽快さを強めているのが印象的だ。

そしてリアエンド。ゲート側まで食い込んだ2分割式のリアコンビランプがゴルフVIとの共通性を出している。ゲートパネルはフラットとなり、バンパーからのラインをうまくつなぐことで一体感を強めた感じ。また、ウインドウ上部をスポイラー形状としているのも新しい。これらの相乗効果で実用車然としていたトゥーランの雰囲気がずいぶんとスマートになった。

サスペンションやステアリングシステムを含め、シャシの基本構成は先代から多くの部分を踏襲しているが、フルモデルチェンジというだけあってアップデートの中身は濃い。ゴルフがベースとはいえ、トゥーランはホイールベースと全長はもとよりトレッド/全幅までも変更した、言わば専用骨格としたもの。ゴルフVからVIへの進化と同様に、トゥーランも2世代同じプラットフォームを磨き続けるわけだ。

ただ、ゴルフVIではガラスの板厚アップやドアシールの改良など、機密性と静粛性を向上させる進化があったが、トゥーランではそのあたりのアナウンスはなく、乗っても大きく変わったところは感じられなかった。

路面によってロードノイズが耳につくことはあるものの、どっしりと重厚な乗り心地と、重心位置が高いはずなのに意外なほど腰の据わったフットワークにも磨きがかけられた。一方、路面のギャップに乗ると、高速安定性重視でやや締め上げられた足まわりがコツンとした突き上げを伝えて来るところは従来とそれほど変わらない。

ただし、今回の試乗車には可変ダンピング機構のDCCが装備されており、これがずいぶんと印象を良くしていた。コンフォートにセットしておくと当たりが格段にマイルドになるのだ。スポーツモデルではお馴染みのDCCだが、トゥーランには初のオプション設定。日本向けのモデルにもぜひ装着可能として欲しいアイテムである。

もうひとつ、法規の関係で現時点での日本導入が難しいようだが、パークアシストも注目したい技術だった。日本にも自動車庫入れを行うクルマはあるが、トゥーランはカメラによる画像認識は選ばず、安価な12個の超音波センサーによって障害物とのクリアランスを測る。したがって白線などに左右されず、ギリギリのスペースに切り返して縦列駐車をやってのけるのだ。

インテリアは水温と燃料計が速度/回転計に組み込まれた新デザインとなり、インジケーターも赤から白い液晶に変わった。エアコンの操作パネルやDSGのシフトノブも新しい世代の形状に変わっている。ナビ画面が相変わらず低い位置なのは残念だが、インパネの基本形状を変えていないので、これは仕方ないだろう。

日本仕様のエンジンはツインチャージの1.4TSIで140psと170psの2種類。ともに7速DSGとの組み合わせも従来と変わりはない。ただTSIとDSGの効率向上は弛まず続けられており、燃費向上と加速/最高速のアップが行われている。

今回はこの140ps仕様を試したのだが、動的な性能に関しては正直なところ新旧の違いはわからなかった。しかし140psのトゥーランでも低速域のピックアップから高速の伸びまで不足を感じることは皆無。しかも新型は欧州総合燃費を従来の14.5km/Lから15.2km/Lへと着実に改善させている。むしろ変わったと言えるのは、こうした見えない部分。細かな改良が積み重ねられているということだ。

現時点では日本導入の予定はないが、1.2TSIを搭載したモデルが設定されたのもニュースだろう。このモデルには、エンジンスタート/ストップ機構と、減速時に重点的にオルタネーターを動かす充電制御を核とするブルーモーションテクノロジーを組み合わせ、16.9km/Lという低燃費を実現したものも登場している。

トリムレベルも本国で新たにトレンドラインが設定されている。つまりゴルフVIと同様に1.2TSIトレンドラインとして導入される可能性があるということ。それがブルーモーションであれば環境意識の高い新たなミニバンユーザーを吸引しそうで、トゥーランの今後が楽しみになって来る。(文:石川芳雄)

フォルクスワーゲン トゥーラン 1.4TSI 140ps仕様 7速DSG 主要諸元
●全長×全幅×全高:4397×1794×1674mm 
●ホイールベース:2678mm
●車両重量:1461kg
●エンジン:直4DOHCターボ+スーパーチャージャー
●排気量:1390cc
●最高出力:103kW(140ps)/5600rpm
●最大トルク:220Nm/1500rpm 
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●最高速:202km/h
●0→100km/h加速:9.5秒
※EU準拠

[ アルバム : 2代目フォルクスワーゲン トゥーラン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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