車中泊カーとして選ぶべきクルマのタイプの条件とは
大流行の車中泊。キャンプや趣味のパートナーとして活躍してくれるクルマだが、ベースとなる車種によって快適性が大きく変わることは意外と知られていない。豪華なミニバンやSUV、ステーションワゴンなど選択肢は数あれど、意外な盲点が「商用バン」だ。
「車中泊したいなら、実は軽自動車一択です」プロが断言する理由とは?
仕事に使うクルマとして生まれたこともあり快適装備が少ない反面、そのシンプルさこそが車中泊にとって大きなメリットになる。
RVブームでバンやステーションワゴンが下剋上を果たす
今から40年ほど前、日本の自動車産業において商用車は地位の低いクルマであった。普通乗用車の後部を荷室へと作り変えた車両は「ライトバン」、キャブオーバーの商用車は「ワンボックス」と呼ばれ、商用の貨物車として棲み分けされていたのである。ところが1980年代の中頃から’90年の初頭に吹き荒れたバブル経済により日本国内に多種多様の輸入車が持ち込まれ、持て余すお金をレジャーへと費やす相棒として「ステーションワゴンブーム」が訪れる。
メルセデスベンツ300TE、BMW320ツーリング、アウディ80アバント、シトロエンBXブレーク、フォード・トーラスワゴン、ボルボ240エステートなどが急激な勢いで日本の自動車を席巻し、ライトバン形状のクルマの地位を向上させた。
一方、ワンボックスと呼ばれていたマツダ・ボンゴ、日産ホーミー/キャラバン、トヨタ・ライトエース&タウンエースなども大ブームを呼んだ。ほかにもアストロブームやエスティマなどの大ヒットにより、地位向上を果たした。この出来事は日本の自動車史において大きな変革期となり、現在のミンバンブームや200系ハイエース、NV350キャラバン人気へとつながっていく。
商用車で誤解されがちな毎年車検のネガティブ要因はなし
商用の貨物車であるバンやライトバンと、乗用車であるミニバンやステーションワゴンの違いは、ともに基本骨格(サスペンション形式は除く)に大きな差はないが、車両の登録や税金に違いがある。商用車は基本的に4ナンバー登録(※編集部注:乗用の5ナンバーサイズであれば)となり、初年度登録から2年目以降の継続車検は1年ごと(軽商用車は2年ごと)となる。毎年、車検を継続する手間はあるものの、乗用車登録(3、5ナンバー)のモデルと比較すると自動車税と重量税が安く設定され、トータルで計算すると商用車登録の方が維持費は安い。
毎年の車検は手間がかかる一方、クルマのコンディションを把握する上では車両検査は大きなメリットになるはずだ。ただし、商用車登録となるバンはセカンドシートがリクライニングしないモデルが多いことや、内装や使用される素材が簡素、快適装備が少ないことを覚えておこう。
アウトドアでの商用車の美点は積載に長けたクルマであること
今回のお題であるバンが車中泊に向いている理由は、商用車として生まれた素地にある。荷物が積みやすいようにフラットに設計された荷室スペースは凹凸が少なく、ベッドスペースとしても快適だ。また、荷物を運ぶためにサスペンションが固めに設定されていることもあり、大量のキャンプ用品を積載してもリヤが沈み込むこともない。
逆に空荷(荷物を積まない状態)で走ると、リヤの荷重が低すぎて後部のトラクションが弱くなるのが欠点。だが、ベッドやダイネット、水まわりを常設し、テントやタープ、コンロ、ランタン、テーブル、チェアなどを積み込んだ場合には、荷物を満載した乗用タイプのミニバンよりも快適なトランスポーターとして性能を発揮してくれる。ちなみに人気のハイエースのバンモデルは1000~1250kgの最大積載量を誇り、1トン以上の荷物を載せて走れるというお墨付きが与えられているのは頼もしい限りだ。
結論はフラットな就寝空間が作れる商用車が最強!
一般的なミニバンはセカンドシートやサードシートが豪華なこともあり、フルフラットにリクライニングさせてもシートの凹凸が邪魔になるのは否めない。座席自体が空間を圧迫してしまうことも車中泊を目的とする場合のウイークポイントになってしまう。
ところがバンの場合には、荷物を乗せるためにフラット形状となるラゲッジはマットを敷くだけで快適な寝室と早変わりし、座席がない分だけヘッドルームにも余裕が生まれる。もちろん車中泊として寝るだけのスペースとしても優秀だが、荷物を積むことを目的としたバンはキャンプ道具だけでなく自転車やトレイルバイク、サーフボード、スノーボードなど趣味のギアを積載することができるのも大きなメリットだ。
車中泊を目的としてバンを選ぶとき、簡単なアレンジで車中泊を楽しむこともできるが、DIYやサードパーティ製として市販されるベッドやダイニングキットを取り付けるカスタムベースとして選ぶ人も多い。豪華な家具付きの家ではなく、何もない部屋を自分でリノベーションをする感覚で楽しめる商用バン。遊びと宿泊を同時に楽しめる新たな時代の車中泊にとって最適なパートナーとして注目を集めている。
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