2019年の導入より人気急上昇中のフレンチMPVであるシトロエン ベルランゴ。先行導入車となった限定車「デビューエディション」の予約注文はオンラインで実施されたが、なんと受付開始から約5時間半で予約枠が一杯に。
驚くべきは、急遽決定された追加生産分の第2弾予約受付も、同じく約5時間半で締切となったこと。
お待たせ! シトロエンベルランゴに待望の3列7人乗り追加販売決定! その魅力を徹底研究
話題となるだけでなく、これほどの購入希望者が殺到したのは、日本のシトロエンの歴史の中でも初の経験だったに違いない。2020年よりカタログ販売も開始され、一躍、シトロエンの看板車種へと成長を遂げたのは、みなさんもご存じの通りだ。
日本に導入される「シトロエン ベルランゴ」は、2列シート車であり、日本のMPVの主役である3列シートのミニバンとは、若干顧客層が異なっている。
しかし、本国には、ミニバン的な3列シートのロングボディ「XL」が設定されており、その導入を待ち望む声が多かった。その「ベルランゴXL」が2022年内に導入されるというのだ。
はたして、シトロエンベルランゴに追加導入される、待望の3列シート7人乗り版はどんなクルマなのか? モータージャーナリストの大音安弘氏が徹底解説する。
文/大音安弘、写真/ストランティス
■全長が350mm、ホイールベースが285mm長いベルランゴのロング版XLの日本発売は2022年中
シトロエン ベルランゴ3列7人乗り。5人乗りの標準ボディが「M」、写真の7人乗りロングボディが「XL」となる
ベルランゴのロングボディとなる「ベルランゴXL」は、標準ボディのベルランゴをベースに、全長、ホイールベース、リアオーバーハングの3つをそれぞれ拡大し、積載能力を高めたロングボディ仕様だ。
拡大したラゲッジスペースに、2座の追加したことで7人乗り乗車を可能としているのも大きな特徴だ。標準車となるMボディとロングのXLボディの差は、全長が+350mm、ホイールベースが+285mm、リアオーバーハングが+160mmも長いのだ。
これだけのサイズアップとなると、取り回しも気になるところだが、VWの3列シートミニバン「シャラン」よりもコンパクト。しかも全長はトヨタノア以上だがトヨタアルファードよりは短いので、日本のミニバンと競合する存在と成り得るのだ。
2列5人乗り仕様のベルランゴ。ボディサイズは全長4403×全幅1848×全高1849mm
3列7人乗り仕様のベルランゴXL。ボディサイズは全長4753×全幅1848×全高1849mm、5人乗りのベルランゴに比べ全長が+350mm、ホイールベースが+285mm、リアオーバーハングが+160mm
シトロエン ベルランゴ(欧州仕様)と日本市場のライバルミニバンとのサイズ比較
ベルランゴとベルランゴXLは、パワートレインを含め、基本的な仕様を共有しており、その違いは積載能力と3列目シートに関することが中心。3列目の頭上空間確保のために、ユニークな天井収納ボックスは非装着で、ルーフも個性的なガラスルーフは設定がなく、全てハードトップ仕様となる。
専用アイテムの3列目シートは、左右独立式で取り外しも可能。さらに130mmのスライド機構を備えるなど、使い勝手の良いものだ。7名乗車時でも322Lのラゲッジスペースを確保しているのは、リアオーバーハングを延長による恩恵のひとつ。
さらに最大積載容量は、Mボディの+500Lとなる4000Lを確保。ロングボディを活かし、長尺物は+350mmとなる3050mmまで収めることができるのも大きな強みだ。
ベルランゴ2列5人乗りのインテリア。ラゲッジは5人乗りのMでもじゅうぶんな広さがある
e-ベルランゴ3列7人乗りのインテリア。シートアレンジで3050mmまで収めることができる
■日本導入はいつ?
e-ベルランゴXL。ヨーロッパでは2022年1月上旬から販売する乗用車仕様のベルランゴは、全車EVとなった
気になるのは、ベルランゴXLの導入仕様についてだろう。なんと欧州では、2022年1月上旬から販売する乗用車仕様のベルランゴは、全車EVに限定された。
これは日本未導入の大型ミニバン「スペースツアラー」も同様の対応となるという。EVの「e-ベルランゴ」について簡単に紹介すると、ボディサイズや機能は、エンジン車のベルランゴと同様で、XLボディも設定される。
EV仕様となる部分を紹介すると、136psの電気モーターを搭載し、130km/hの最高速度を確保。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は50kWhで、最大航続距離を280km(WLTP)としている。
充電機能は、最大出力100kWの急速充電に対応し、30分で最大80%の充電が可能に。日常的に利用する200V普通充電では、7.4kW出力のウォールボックスを使用した場合で、約7時間としている。
電気モーターによる俊敏な加速力を鑑みると、モーター出力と最高速度の設定は、問題ない性能といえるが、アクティビティに活用したいミニバンの航続距離が最大280kmという点は気になるところ。日本仕様のベルランゴもEVとなってしまうのだろうか。
その点については、心配はいらないようだ。シトロエンも欧州向けのベルランゴについては、完全EV化を謳っているが、他の地域向けでは、エンジン車の供給を続けるようだ。
このため、今年日本に上陸するベルランゴXLは、標準ボディと同じ1.5Lのクリーンディーゼルエンジンと考えてよいだろう。そして、将来的には、EVの追加か移行という決断が下されるはずだ。
ちなみに、EVシフトの決断をしつつ、他市場へのエンジン車の供給が可能なのは、商用バン仕様には、引き続き、エンジン車が継続されているためだ。
2022年に日本上陸予定のベルランゴXL。将来的には、EVの追加もしくはEVへの移行となるだろう
ベルランゴXLの導入は、日本市場でのベルランゴ人気の大きさが影響しているのは間違いないが、シトロエン側の事情もあるようだ。
2022年4月21日、フランスのシトロエンから配信されたリリースでは、個性派ミニバンとして、シトロエンファンに愛された「グランドC4スペースツアラー」の販売終了を決定したことを発表。
これにより1994年に誕生したシトロエン エバシオンからスタートした個性派ミニバンシリーズの28年にも及ぶ歴史に幕を下ろすことになる。シトロエンは生産終了の理由をMPV市場の縮小を挙げており、今後の3列シート車は、商用車仕様も用意するベルランゴやスペースツアラーが担うとしている。
現在の生産地であるスペイン・ビーゴ工場では、2022年7月上旬での終了を予定している。「グランドC4スペースツアラー」の国内販売については、現時点で公表する情報はないといい、今後も未定としている。ここからは筆者の推測となるが、日本でもグランドC4スペースツアラーの販売は、年内で終了するだろう。
コロナ過でなければ、最終限定車が用意された可能性が高いが、今回は期待できない。そして、その後継として、今年後半にベルランゴXLの導入が正式発表されると見ている。
今は、グランドC4スペースツアラーを名乗るが、元々は2013年にフルモデルチェンジを行った2代目「C4ピカソ」である。日本では、2014年秋よりショートボディの5人乗りMPV「C4ピカソ」とロングボディの7人乗りミニバン「グランドC4ピカソ」として導入を開始した。
2018年より本国で名称が変更されたことを受け、日本でも「グランドC4スペースツアラー」を名乗るようになった。次世代プラットフォーム「EMP2」をグループ内のプジョー308に続き、採用。
このため、最新世代とも共通点を持つモデルではあるが、すでに登場より9年を迎えるため、多くの人にとってはベルランゴXL導入を待つのが正解だ。
しかし、唯一無二のスタイリングと個性的なコクピット、ハイパワーな2Lクリーンディーゼルターボを搭載する点などを考慮すれば、シトロエンファンならば、最後に手に入れておくという選択も悪くない。
■姉妹車のプジョーリフターは?
ベルランゴと姉妹関係にあるプジョー リフター。ヨーロッパではベルランゴ同様にEV「e-リフター」へとシフトしている
ベルランゴXL導入の流れで、もうひとつ注目すべき存在がある。ベルランゴと姉妹関係にあるプジョーリフターだ。リフターのもベルランゴとXLに相当する「リフターロング」が設定されている。
そのリフターも、欧州ではベルランゴ同様にEV「e-リフター」へとシフト。性能面は、e-ベルランゴと同等であることが公表されている。
現時点では、日本市場は、クリーンディーゼルモデルが継続されるようだ。今後の展開について、ステランティスジャパンに取材したところ、現時点での3列7人乗り仕様の「リフターロング」の導入についてのコメントはないとしている。
ただコロナ過に加え、ウクライナ情勢の影響により、自動車の生産と輸送に多大な課題を抱えている。そのため、価格上昇に加え、従来の供給体制も戻っていない現実がある。このため、スケジュールも計画通りに進むかは不透明だ。
実際に、販売サイドにも、コンタクトをしてみたが、ベルランゴXLの導入の明確な時期は分からず、リフターロングの情報も得られなかった。とはいえ、ベルランゴXLの導入は、正式決定しているので、まずは続報を待ちたい。
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