優れた基本性能だけじゃ生き残れないのが、コンパクトカーの世界。それもそのはず、スタイルや色使いなどファンションセンスに長け、厳しい審美眼を持つ女性をメインターゲットとしていることが多いのですから。
しかも、手頃であることも大前提。
それだけに(大定番があるとはいえ)軽自動車を含めたコンパクトカーは、開発者たちの気持ちやアイデアが機能だけでなく、遊び心や洒落っ気として詰め込まれていることを強く感じることがあります。
そうした激戦市場において、1990年代中盤から急激に注目されたのが「可愛さ」を前面に打ち出したコンパクトカー。使い勝手や走行性能、燃費や安全性能、コスト面での優位性もさることながら、「ビジュアル重視」でユーザーに訴えかけるモデルがこの頃から続々登場しました。
それは時として価格やサイズの枠を超えた優れたプロダクト、名車の誕生にもつながっているのでしょう。厳しいわがままありながら、時にクルマをクルマ以上の存在として愛してくれる女性ユーザーの心を射止めた愛嬌たっぷりの日本車史に残したい「可愛いクルマ」を紹介します。
文:大音安弘
■日産 マーチ(2代目) 1992年
日産(2代目)マーチ 1992~2002年
現行国産車市場ではすっかり影が薄くなったマーチだが、2代目を名車ということに異論をはさむ人はいないはず。プレーンながらも愛らしいフォルムに加え、ライトブルーやクリームイエローなど淡い色合いもよく似合っていた。
クルマとしてみると、扱いやすいサイズ、高い基本性能、あの頃の日産らしい走りよさと、まさに小さな優等生。だからこそ厳しい欧州ユーザーも認めてくれ、日本車初の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
2代目は、歴代モデルの中で最もバリエーションが豊かで、3ドアハッチと5ドアハッチに加え、カブリオレや海外ではセダンもラインアップ。そういえば、デミオのヒットに乗って投入し、大失敗したワゴン「ボックス」のことも忘れられない。
このようにバリエーションが拡大できたのも、シンプルisベストなデザインのおかげ。驚くべきはスポーツモデルがなかったのに、走りの評価も高く、モータースポーツを楽しむユーザーもいたこと。それだけ幅広いユーザーに愛されていた。あぁ、今のマーチに爪の垢を煎じて飲ませてあげたい。
■スバル ヴィヴィオ・ビストロ 1995年
スバル ヴィヴィオ・ビストロ 1995~1998年
バブル期に、日産が初代マーチをベースに大掛かりな架装を施し、別物に仕上げることで、大成功させた「パイクカー」。フィガロやパオは、今なお世代を超えて女性の心を捉える人気車だ。そのレトロ調のクルマ作りを受け継ぎ、フロントマスク回りの化粧直しで完成させ、しかもヒットさせたのがヴィヴィオ・ビストロだった。
登場するやいなや大ヒットモデルとなり、そのコンセプトはダイハツミラジーノ(1999年)、や日産マーチボレロ(2000年)など多くのフォロワーを生み出した。
丸みのある基本デザインを活かしながら、前後ライトを丸目に変更し、メッキグリルとスチールバンパーにより、レトロ感を演出。インテリアは、基本デザインはベースのままながら落ち着きある色合いとし、ウッド調パネルを採用。レザーインテリアのBカスタムを設定するなど、なかなか凝ったものだった。
ただ後半に投入したスーパーチャージャーとスポーツシフトのECVTを組み合わせたモデルは、ちょっとやり過ぎだったかもしれない。
とはいえスバル史に残るヒット作となり、今も時折見かけると、その独特の雰囲気に「おもむき」を感じる。
■スズキ アルト・ラパン(初代) 2002年
スズキ(初代)アルト・ラパン 2002~2008年
軽セダンとして実用重視のアルトの女性ユーザー離れを危惧したスズキが、「ゆるさ」をテーマに、当時はやりの「おうち感」を与えることで、若い女性をターゲットに開発したラパン。
その後も女性をターゲットに進化を続けるが、シックさと愛らしさを上手にバランスさせつつ細かい部分に「うさぎ」をモチーフにした意匠を採用する(「Lapin」はフランス語でウサギという意味)など、各所にスズキらしい気遣いが見てとれる。
基本フォルムが優れているから、男性ユーザーを狙った「SS」なんてボーイズレーサー調のモデルも展開できた。ターボ+5速MTだけでなく、ノーマルのコラムシフトと異なり、フロアシフトにしていたこだわりも見事。そういう本物感は、意外とユーザーの心に刺さるもの。
そもそも、ぶりっ子の効いた現行型のスタイルでは、こんな芸当は無理。のちに続いた同コンセプトの後輩モデルたちに「可愛いだけじゃダメ!」と初代ラパンはいっているように思えてならない。
■日産 ラシーン 1994年
日産 ラシーン 1994~2000年
今、復活したら受けそうな一台が「ブサカワ」系クロスオーバーのラシーンだろう。1993年の東京モーターショーに出展され、評判となったことから翌年12月にデビュー。「僕らのどこでもドア」をキャッチコピーとドラえもんの登場するCMを覚えている方も多いのではないか。
デビューがRVブームの真っ只中だっただけに、クロスオーバー風味に仕立てられていますが、SUV感は薄く、しかしながら単なるハッチバックでもないという元祖「クロスオーバー」カー。
コンセプトカーのまま世の出たような個性的な外観とは裏腹に、かなり実用的で機能性が高いのが特徴だった。全高は1515mmなので、機械式駐車場にもしっかり収められるのに、最低地上高は170mmを確保。さらに4WDを標準とするなど、意外とやるなと思わせるクルマだった。
しかもベースはサニーなので、取り回しや室内の広さなども問題なし。このため、デビュー当時はかなり人気となった。もともとユーザーの多様性を考慮して生み出されたこともあり、今なお、自由にカスタムして楽しむ人も多いラシーン。思ったよりも奥深く、それも今なお愛され続ける理由なのだろう。
■マツダ オートザム・キャロル(2代目) 1989年
マツダ(2代目)キャロル 1989~1995年
可愛いコンパクトとして個人的に外せない一台が、復活を果たしたキャロル。
マツダが軽自動車市場に再び参入するために開発された新キャロルは、スズキに協力を仰ぎ、アルトのプラットフォームを提供してもらい、マツダが独自の内外装を施したもの(初代キャロルは1962~1970年、2代目キャロルは1989~1995年、3代目が1995~1998年で、1998年以降はOEMへ)。
2代目キャロルはデビューしたのがバブル期ということもあって、基本コンポーネンツをアルトと共有しながらも、お金をかけてボディを完全にマツダオリジナルへ仕立て直しており、その丸みを帯びた愛らしいフォルムはたちまち大人気となった。
デザインのどこにもアルトの存在を感じさせないだけでなく、軽セダンとしては珍しく3ドアのみで、独自にキャンバストップ仕様を設けるなど、愛車とともに何処へでも出かけたいアクティブな女性の相棒に相応しい個性を持っていた。見事復活を遂げたキャロルだったが、バブル崩壊後、マツダの経営悪化の影響もあり、アルトのOEM(ベース車からの変更はエンブレムのみ)へとシフト。復活後のヒット作が1代のみとなったのは寂しい限り。
■縮小したこのカテゴリー、それでも後継車は……
以上、平成以降のメーカー系国産車から選び出した5台のクルマたち。皆さまの推す「可愛い」コンパクトカーは含まれていただろうか。
当時を知るクルマ好きにとっては(パステルカラー満載のいかにも「女子向け!」を前面に押し出しているカタログやポスターにげんなりしつつ)、各メーカー猫も杓子も用意していたこのカテゴリーが、現状いまいち盛り上がりに欠けていることに一抹の寂しさを感じる。
ダイハツ ミラココア 2009~2018年
ダイハツのミラコアがこの3月に販売終了となり、今春~初夏にかけて後継車が準備されているという。この新型車に大いに期待したい。
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