カローラにスポーティなイメージを持っていなかった、GQ JAPAN編集部のイナガキは、ギョッとした。
生活に根ざした“実用車”
なぜトヨタはカローラに“GR”を設定したのか? 意欲作に迫る!
2022年4月1日、「GRカローラ」がついに登場した。現行の5ドア・ハッチバック「カローラ・スポーツ」をもとに、内外装やエンジン、足まわりなど各所に手をいれた超本格的ホットハッチである。
発表時のプレスリリースには「カローラは、トヨタのWRC初優勝を飾った『TE25カローラ』や、その後1000湖ラリーを制した『カローラ・レビン』など、『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』の礎を築き、その走りを多くのお客様に愛していただいたモデルです」と、記されていた。
1989年生まれの筆者は、カローラが“スポーティなクルマ”というイメージは、ほとんどない。小沢健二さんが唄ったCMソング『カローラIIにのって』が話題になった4代目「カローラII」や、大幅なコストダウンを図った8代目カローラの印象が強い。いずれのモデルも、“スポーツカー”というより、生活に根ざした“実用車”。走りの良し悪しなんて気にならなかった。
プレスリリースを読み込むと前出のWRC初優勝とは1973年に米国で開催されたプレス・オン・リガードレス・ラリー、1000湖ラリーとは現在のラリーフィンランドのことで1975年に遡る。いずれのレースも、筆者が産まれる10年以上前だ。今でも根強い人気を誇るAE86型の「カローラレビン」、「スプリンタートレノ」も1983年の登場だから、産まれる前。つまり、1989年生まれの筆者が、カローラに対しスポーティなイメージをほとんど持っていないのもしょうがない。
だからGRカローラの登場は衝撃だったし、新鮮だった。カローラに抱いていた“地味”“ベーシック”“実用車”といったイメージが一気に吹っ飛んだ。
もっとも2018年に登場した12代目のカローラ・スポーツ(ハッチバック)は、ほどよいスポーティさが売りだった。レスポンスに優れた1.2リッターのターボ・エンジンに、iMTと呼ぶMT(6速)を組み合わせたモデルが設定されたのだ。
このiMTとは「インテリジェントマニュアルトランスミッション」の略称で、マニュアル車の発進・変速操作をアシストする。発進時は、クラッチ操作を検出し、エンジン出力を最適に調整(トルクアップ)することで、クラッチのみでの発進操作をよりスムーズにおこなえるようにしたうえ、変速時はドライブモードセレクトで「SPORTモード」を選択した場合に、iMTがスタンバイ状態に。この状態でドライバーの変速動作(クラッチ操作、シフト操作)を検出すると、変速後のエンジン回転数を合わせるよう制御し、スムーズな変速フィーリングをアシストする。
つまり、運転が苦手な人でも、運転がより楽しくなるようなギミックを開発、搭載したのだ。でも、運転が苦手な人はわざわざMTなんか選ばないはず。これはきっと、久しぶりにMT車に乗りたい! と、思っているユーザー(中高年層か)を狙ったのかもしれない。ちなみに、このiMTはGRカローラにも搭載される。
内外装のデザインも、従来のカローラとは一線を画す。薄型のヘッドライトや1700mm超のワイドな全幅、ヘッドレスト一体型のフロントシートなど、スポーティさを高める装備、デザインが至る所に盛り込まれている。もしかすると、GRカローラを意識し、開発されていたのかもしれない。
イメージを大きく変えた!
ちょっとスポーティな現行カローラをベースにしたのだから、GRカローラはスペックを読む限り驚くほど高性能に仕上がっている。
エンジンは、「GRヤリス」が搭載する1.6リッター直列3気筒インタークーラーターボエンジンをGRカローラ用にチューニング。304ps/6500rpmの最高出力と370Nm/3000~5550rpmの最大トルクを発揮する。カローラで300psオーバーというだけでもびっくり仰天ではあるが、この大パワーを受け止められるボディというのもすごい。
ちなみに、ただパワーアップしたエンジンを搭載したのではなく、さまざまな部分に手を入れている。フロントを60mm、リヤを85mmもトレッドを広げて旋回性能を高め、リアホイールハウス間や床下トンネル、タンク前の床下にブレースを追加して剛性をアップ、操縦安定性能を高めたという。GRヤリスでのチューニング手法をGRカローラにも適用しているのだから、メルセデスAMGのAクラスやBMW Mの1シリーズに負けない作り込みが期待できる。
見た目はワイルドだ。3本出しマフラーや大型のルーフスポイラーにくえわけ、フロントフェンダーを片側20mm、リアフェンダーを片側30mm拡大しているからだ。専用のアルミホイールやサイドスカート、前後バンパーもカッコいい。これが本当にメーカー純正のカローラ!? と、疑ってしまったほど。
値段は発表されていないが、おなじエンジンを積んだGRヤリスが396万円スタートだから、500万円オーバーが予想される。カローラもずいぶん“立派”になったものだ。
でも、調べてみると、筆者が赤ちゃんだった1991年に登場した7代目も“立派”になったことで話題になったという。“立派”といっても“スポーティ”ではなく“高級”のほうだ。バブル景気のときに開発されたためクオリティや装備が大幅にアップデートされたという。
カローラはその後、バブル崩壊後に登場した8代目こそ大幅なコストダウンによってチープな印象を受けなくもないけれど、9代目からは高級化路線に戻り、そして12代目の現行型は、高いクオリティにくわえスポーティさをも手に入れた。
GRカローラは「ずいぶん立派になった」よりも、「ずいぶんスポーティになった」という表現が正しいのかもしれない。
今後、この世に生まれてくる子どもたちは、きっとカローラに対し“スポーティなクルマ”というイメージを持つはずだ。GRカローラは、カローラのイメージを大きく変えるだけの力を持つ、高性能ホットハッチだと思う。
失われた30年を生きてきた筆者にとってのカローラは、タイミングが悪かった。物心ついて、最初に覚えたカローラがちょっとチープな8代目だったからだ。
生まれたタイミングで、イメージの変わるクルマなんて世の中それほどないはず。カローラの長い歴史、その長い歴史のなかでの変遷、いや柔軟性に驚くばかりである。エコロジーという観点ではないが、“自動車SDGs賞”なんていうアウォードがあれば、カローラの大賞はかたい。
文・稲垣邦康(GQ)
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