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先進技術の始祖を探る! 「はじめの一歩」を印したクルマたち

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先進技術の始祖を探る! 「はじめの一歩」を印したクルマたち

 自動車の歴史は発明の歴史。100年以上前に自動車が生み出されて以来、現在に至るまでにいくつもの革新的な自動車が登場してきた。なかには残念な結果に終わったモデルもあるか、自動車業界の変革につながるエポックメーキングなクルマもまた多い。

 今回は、その革新性において後の自動車業界に多大な貢献を果たしたクルマたちを紹介していこう。

先進技術の始祖を探る! 「はじめの一歩」を印したクルマたち

文/長谷川 敦、写真/メルセデスベンツ、フォード、トヨタ、ホンダ、FavCars.com

これぞ天下の大発明!? ガソリン自動車はドイツで誕生! 「ベンツ パテント・モトールヴァーゲン」

世界初のガソリンエンジン自動車ベンツ パテント・モトールヴァーゲン。写真は全25台製造された“当時モノ”ではなく、後年になって製作されたレプリカ車

 19世紀に入ると蒸気機関が世界各国で本格的に使用されるようになったが、この機関を使用した自動車は1769年にすでに誕生していた。それがキュニョーの自動車だ。だが、蒸気機関は大きくて重く、鉄道には適していても街中を走る自動車には不向きだった。

 そうした問題を解消するため、蒸気機関の改良や電気自動車の模索なども行われた。そんななか、ドイツ人のニコラス・アウグスト・オットーは石炭ではなく石油を精製して作られたガソリンを利用する4サイクルエンジンを作り上げ、1877年に特許を取得した。

 この4サイクルエンジンに可能性を見出したのがドイツ人技術者のカール・ベンツだった。ベンツはオットーの特許が無効になっていることを確認すると、幾多の困難を乗り越えて軽量なガソリンエンジンを完成させ、3輪の車体に搭載した。これが世界初のガソリンエンジン車であるパテント・モトールヴァーゲンだ。後に、ベンツの会社はオットーの下で技術者として働いていたゴットリープ・ダイムラーが興した自動車販売会社と合併し、ダイムラー・ベンツが誕生する。

 パテント・モトールヴァーゲンの完成は1886年。ここからガソリンエンジン車が自動車の主流になっていくのはご存じのとおり。現在でもガソリンエンジン車が最もポピュラーだが、排気ガスを出さないBEV(電気自動車)やFCV(水素自動車)の攻勢が始まっているのも事実。100年以上続いたガソリンエンジン車の時代がついに終わろうとしているのかもしれない。

大量生産で自動車の普及に大きく貢献「フォード T型」

1908年に発表されたフォード T型。当初は3色あったボディカラーも、生産効率を高めるため最終的にブラック1色に絞られた。シンプルな設計も特徴のひとつ

 一部の少数生産モデルを除き、自動車の組み立てが流れ作業で行われているのは広く知られている。効率良く製造を行えるこの方法を世界で初めてクルマの組み立てに取り入れて販売価格を抑え、なおかつ大量供給を可能したモデルがアメリカ・フォードのT型だ。

 1908年、新興自動車メーカーのフォードモーターは、新型のモデルT(T型)を発表する。このT型は、当時としては高い部品精度を確保し、組み立て時の調整を省力化すると同時に新素材の積極的な活用などによって高性能を実現していた。さらに競合他社のモデルに比べて安価なことから、驚くほどの速さで販売実績を伸ばしていった。

 この状況を見たフォードは、自社のモデルをT型のみに絞り、大量の発注に応えるためにベルトコンベアを使った流れ作業による組み立てを導入することを決定。自社の工場を流れ作業に対応できるよう増改築して、ついには月産2万台強を達成するのである。

 T型フォードは1927年までに1500万台以上の売り上げを計上したが、これは後にフォルクスワーゲン・ビートルに破られるまで世界最高記録であった。なお、現在でも単一車種としては世界歴代2位の販売記録を誇っている。今日の自動車生産方式はフォード T型にルーツがあるのは間違いなく、その意味ではこのT型もまた、自動車業界への貢献度大と言える。

シフトチェンジ不要の楽々ドライブ「オールズモビル 1940年型」

世界初のフルATシステムは、写真のオールズモビル1940年型のオプションで登場。シフトレバー&クラッチ操作を不要にする画期的なシステムだった

 現在の日本国内におけるAT(オートマチックトランスミッション)車の新車販売率はなんと99%! それほどまでに普及しているATだが、その歴史は意外に古い。

 先に紹介したフォード T型も実はクラッチペダルのない2速セミオートマチック車ではあったが、変速操作は必要だった。その後も運転を容易にするオートマチックトランスミッションの開発は各社で続けられ、ついに決定版とも言うべきシステムが登場する。

 最初にフルオートマチックトランスミッションを市販車に搭載したのはアメリカのゼネラルモーターズ(GM)だ。1940年、当時GMのブランドのひとつ、オールズモビル1940年型のオプションとして発売された「ハイドラマチック」は、現代のATにもつながるフルード式で、やがてトルクコンバーターを採用したATも登場する。その初採用車もやはりGMであり、1948年にビュイックのモデルに搭載された。

 ヨーロッパをはじめ、現在でもMT車の使用率が高い地域はあるものの、日本は今やアメリカを押しのけてのAT天国になっている。こうした状況の源流は1940年型オールズモビルにあるのだ。

ディーゼルエンジン車の歴史は長かった? 「メルセデスベンツ D260」

世界初となる量産型ディーゼルエンジン搭載乗用車のメルセデスベンツ 260Dは1936年に登場。2.6リッターディーゼルエンジンは3200回転で45psを発生した

 燃費が良くて高トルク、さらに安価な軽油を使用するため燃料代も節約できるディーゼルエンジン。近年は排ガス不正問題もあって旗色が悪いが、優れた点の多いエンジン形式であることに変わりはない。

 そんなディーゼルエンジンが市販乗用車に採用されたのが1936年。ダイムラー・ベンツの新型メルセデスベンツ260Dには2.6リッターディーゼルエンジンが搭載されていた。低燃費で耐久性もあるディーゼルエンジンを積んだ260Dは、主にタクシーに使用されてその能力を発揮した。

 かつての“ディーゼル天国”ヨーロッパではEV化路線に戦略を切り替えているが、日本国内では環境性能の高いクリーンディーゼル車の人気がまだまだ高い。メルセデスベンツ260Dでの初採用から80余年、ディーゼルの進化はこれからも続いていくだろう。

ABSの強力な制動で安全性向上に貢献「メルセデスベンツ Sクラス」

メルセデスベンツ Sクラス350SE(1972~1980年)。世界初の4輪ABSはこのモデルのオプション設定で登場。ここからクルマの安全性が一気に向上した

 ABS(アンチロックブレーキシステム)はタイヤのロックによるスリップを防止して、制動力を高めるシステム。いわゆるポンピングブレーキを自動的に行うもので、現在は多くのクルマに標準装備されている。

 そんな自動車用ABSの研究は古くから行われていたが、効率の高い4輪ABSが乗用車へ初採用されたのは1978年のメルセデスベンツ Sクラスへのオプション設定から。そして1984年以降はメルセデスベンツ製乗用車の標準装備になっている。

 国産車での4輪ABS初採用の1982年のホンダ プレリュード(2代目)だった。当時のホンダはこのシステムを4wA.L.B.(4輪アンチロックブレーキ)と呼称していた。

 ブレーキング時の制動距離を大幅に縮められるABSが安全性向上に与えた影響は計り知れないほど大きい。現在でも進化を続けるABSは、これからも多くのドライバーを守ってくれるはずだ。

ハイブリッド時代の幕を開ける記念碑的モデル「トヨタ プリウス」

1997年に販売が開始された初代トヨタ プリウス。燃費性能を2倍にするという目標の下に開発され、発売当時の市販車としては驚異的な低燃費を実現した

 メインの動力となるエンジン(内燃機関)とは別に電動モーターとバッテリーを装備し、エンジンとモーターの動力を使うことで効率を高め、ガソリン消費量を抑えられるハイブリッドシステム。現在では多くのクルマがこのシステムを採用している。

 そのハイブリッドシステムを世界で初めて採用したのがトヨタの初代プリウスだった。1997年、「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーとともに登場したプリウスは、28km/L(10・15モード)という当時ではズバ抜けた燃費性能を発揮し、手の届きやすい価格設定もあって大ヒットモデルになった。

 このプリウスに続くかたちで国内各社がハイブリッドモデルを発売し、現在の日本はハイブリッド王国とも言える状況になっている。エコ的な観点からはEVに注目が集まっているものの、効率の良いハイブリッド車の需要はまだまだ多い。

 トヨタ プリウスがかつて切り拓いたハイブリッド化の道は、多くの追従者を生む価値のある道だった。

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