■なぜ「高級車=セダン」というイメージが定着したのか
かつては「クルマの基本型」とされていたセダンですが、近年ではSUVにその座を完全に奪われています。
一方、高級車市場においては、セダンはいまでも一定の需要があるようです。
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たとえば、メルセデス・ベンツやBMW、アウディといったプレミアムブランドでは、それぞれ「Sクラス」「7シリーズ」「A8」がフラッグシップモデルとして君臨し続けているほか、国産高級車の代名詞であるトヨタ「クラウン」にも引き続きセダンが設定されています。
コンパクトかつ手頃な価格のセダンが絶滅の危機に瀕しているなか、なぜ高級セダンは生き残ることが可能なのでしょうか。
いまでこそ高級SUVや高級ミニバンは一定の地位を獲得していますが、自動車の歴史をひもといてみると、高級車と呼ばれたクルマのほとんどがセダンでした。
もちろん、古くからSUV(クロカン)やミニバン(バン)と呼ばれるボディタイプのクルマも存在してはいましたが、それぞれ悪路での利用や商用での利用に特化していたため、高級車に求められるような快適性や居住性とは無縁の存在でした。
そうした背景から、政府関係者や企業の役員の送迎に用いられるクルマは必然的にセダンが中心となってきました。
そのため、多くのユーザーが「高級車=セダン」のイメージを持つようになり、それが転じて「セダン=高級車」というイメージも浸透するようになりました。
その結果、伝統的な高級車を求められるシーンや高度なフォーマルさが求められるシーンでは、いまなおセダンが最も適していると考えられています。
ただ、その経緯を考えると「セダンこそが高級車として最適なボディタイプである」というよりは、当時は「セダン以外に高級車の選択肢がなかった」というのが実際のところです。
そのため、セダンよりも大きな室内空間を確保しやすいSUVやミニバンをベースとした高級車が登場した昨今では、高級車におけるセダンの人気が相対的に下がっていくのは決して不思議なことではありません。
■それでも「高級車」にセダンが選ばれる理由
とはいえ、高級車において、セダンというボディタイプがもたらすメリットは少なくありません。
高級車にとってもっとも重要なのは、いわゆる「乗り心地の良さ」ですが、それを構成する要素のひとつが静粛性です。
かつて、北米でレクサスブランドが立ち上げられた際、そのフラッグシップモデルとして登場した「LS400(日本名:セルシオ)」は、静粛性という価値を提供したことで高い評価を得たように、現在の高級車において高い静粛性は必要不可欠です。
その点、乗員スペース(キャビン)と荷室が独立した構造となっているセダンは、キャビンを密閉しやすいことから、SUVやミニバンと比べて静粛性を保ちやすいという特徴があります。
くわえて、セダンではロングホイールベースを採用しやすいというメリットもあります。
高級車では、後席のニースペースの確保や走行安定性などの観点からホイールベースを長くすることが求められますが、それにはじゅうぶんな剛性が必須となります。
SUVやミニバンと比べると、セダンはロングホイールベース化しても剛性を確保しやすいという意味でも、高級車に適したボディタイプであると言えそうです。
また、その重心の低さから、スポーティな走りを実現しやすいという点も、ドライバーから見た場合のセダンのメリットのひとつです。
特に、SUVやミニバンが台頭してきた昨今では、多くのセダンがスポーティな走りを持つ「4ドアスポーツカー」としての側面を強調しています。
ただ、ここまで挙げたメリットの多くは、一定以上の速度で走行している際にメリットを感じやすいものばかりです。
逆に言えば、低速走行がメインの場合には、より居住性に優れるSUVやミニバンのほうがメリットを感じやすいのも事実です。
一方、後席に座る場合もハンドルを握る場合も、高速走行がメインの場合にはセダンはまだまだ優位であると言えます。
欧米では現在も高級セダンが一定の需要を持っているのは、平均走行速度が日本よりも高いことと無縁ではありません。
つまり、日本においても、日常的に高速道路を利用するユーザーにとっては、セダンを選ぶメリットはじゅうぶんにあると言えそうです。
※ ※ ※
さまざまなメリットがあるとはいえ、やはりセダンは消えゆく存在であるのも事実です。
トヨタ自身は「SUV」とは表現していませんが、2023年に登場した「センチュリー」はSUVスタイルへと生まれ変わり、従来のものは「センチュリー(セダン)」と改称されました。
その大きな改革は賛否両論を巻き起こしましたが、これからの時代の高級車に求められる要素を再考していくと、たしかにSUVスタイルを採用するメリットは少なくありません。
また、近年ではフォーマルなシーンでもSUVやミニバンが利用されることも多くなってきました。
そう考えると、「高級車=セダン」というのはすでに過去のものであると言えるのかもしれません。
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ドイツのでかいセダンは、基本はドライバーズカーだろう。