機械と人間の相性が生む快適体験
日常的に路線バスを利用していると、使いにくさや快適さに欠ける瞬間に遭遇することがある。例えば、
【画像】「えぇぇぇ!?」 これがバス運転手の「実際の年収」です! 画像で見る(14枚)
・乗降時の扉周り
・運賃支払機
・整理券発行機
・シート
・冷房の通風口
・降車ボタン
など、利用者が関与する場面は多岐にわたる。これらはすべて「マン・マシンインターフェース」に関連する部分である。
マン・マシンインターフェースとは、人間(ユーザー)と機械(システム)との相互作用を指し、ユーザーが機械を操作したり、機械から情報を受け取ったりする際の接点(インターフェース)の設計や、その使いやすさに関する考え方である。インターフェースが適切に機能しない場合、利用者の快適性が損なわれ、利用体験が悪化する。
従来、機械と人間の相性を向上させるため、インターフェースデザインの研究が進められてきた。自動車メーカーにもインターフェースデザイナーが存在する。
しかし、近年では単なる相性の向上にとどまらず、ユーザーが製品やサービスを利用することで幸福感を得られるよう、よりよい体験を提供する
「ユーザーエクスペリエンス(UX)」
への関心が高まっている。このUXの考え方は、路線バスの持続可能性を検討する上でも重要な要素となる。
試作と検証で導く幸福度向上
最近、名刺交換をしていると「UXデザイナー」と名乗る人が増えてきたと感じる。
かつては、筆者(西山敏樹、都市工学者)のようなヒューマンインターフェース分野の研究者だけがUXデザインについて語っていたが、今ではその時代は終わり、ユーザー体験の設計が広く認知されるようになった。
現在、UXデザイナーは、製品やサービスの使いやすさだけでなく、使用時に得られるよい体験や感情を重視し、それらを設計・デザインする役割を担っている。
UXデザイナーは、まずユーザーに対してマーケティング調査を実施し、得られたデータを基にユーザーの生活を改善する製品やサービスの試作を進める。その後、
・モックアップ(外観やデザインを示す試作品)
・プロトタイプ(実際に動作する機能を持った試作品)
を使ってユーザーテストやインタビューを行い、ユーザーの幸福度を高めるために試作と検証を繰り返す。このプロセスを通じて、UXデザイナーはよりよいユーザー体験を設計していく。
QRコードで温度調整、満足度向上
公共交通でよく見られる問題のひとつが、「暑いか、寒いか」という温度に関する不満だ。
特に夏になると、路線バスでは冷房の効き具合が原因で苦情が増えることが多い。意見や不満を口にする人もいれば、いい出せない人もいる。そのため、バス車内に設置されたQRコードを読み取ることで、
・暑い
・寒い
を選択し、ドライバーや他の乗客と情報を共有できる仕組みがあれば、温度調整の方向性を民主的に決めることができる。
これにより、全体的な満足度が高まる可能性がある。こうした新しい顧客体験を社会に組み込むのが、UXデザインの重要な役割だ。
さらに身近な問題として、車いすやベビーカーの固定方法の標準化が求められている。どの車両でも同じ方法で固定できれば、心理的な負担が軽減され、顧客体験の質が向上する。
肉体的・心理的な負担を同時に解消できる固定方法が確立されれば、ユーザーの幸福度も高まる。これもUXデザインが担うべき役割である。
京都市交通局の革新、ストレス軽減
最近注目されている話題として、京都市交通局が12月1日から、観光客や地元の利用者の多い路線で、全車両を対象に両替方式から
「つり銭方式」
への変更を実施することが挙げられる。この変更により、運賃支払時に両替が不要となり、支払いにかかる時間が大幅に短縮されることになる。整理券車では、整理券の情報を基につり銭が自動的に出る仕組みとなり、均一区間車では、運賃支払時につり銭が自動計算されるようになる。
例えば、均一区間車では、従来の両替式では1000円札を使う際、ひとりあたり20秒から30秒程度かかっていたが、つり銭方式に変更することで、ひとりあたり
「4秒」(80~87%減)
で支払いが完了するという。これは、長年両替方式を採用していた京都市交通局にとって、大きな変革だ。
京都市側は、この変更により、利用者の待ち時間が減り、行列も少なくなるため、ドライバーの負担も軽減され、双方のストレスが減ると説明している。ユーザーとサービス提供者の両方にとって、幸福度を高める体験を提供する、いわゆる「
同時解決型」のUXデザインの一例であり、肉体的・精神的な負担を軽減する取り組みは見習うべき点が多い。
ドライバー異常時、バス停止の仕組み
筆者は、ワンマン運転の路線バスについて、
「万が一ドライバーが体調不良を起こした場合、どのように対応すべきか」
という質問を都市交通の講義でよく受けてきた。体調不良は予測できないものであり、実際に路線バスのドライバーが急に運転できなくなる事例も発生している。
しかし、乗客が大型二種免許を持っていることはほとんどなく、バスの運転はできない。そのため、万が一運転できないドライバーが現れた場合でも、乗客が安全にバスを停止させることができる装置の導入が必要だという考えに至った。
現在、多くの新型路線バスには「ドライバー異常時対応システム(EDSS:Emergency Driving Stop System)」が搭載されている。このシステムは、関係官公庁、バスメーカー、バス事業者が共同で開発し、ドライバーが体調不良や異常を起こした際にバスを安全に停止させる役割を果たす。
具体的には、ドライバーが意識を失ったり運転が不可能になった場合、バスの運行を自動的に制御したり、乗客が操作できる手段を提供することを目的としている。
このシステムには、ドライバーが体調不良で運転を続けられなくなった場合でも、安全にバスを停止させることができるという特徴がある。さらに、緊急時には乗客が操作できるスイッチやボタンが設置されており、乗客も安全にバスを停止させることが可能だ。
また、運転席にもスイッチがあり、ドライバーが異常を感じた場合に自ら緊急停止できる機能が備わっている。このシステムは、ドライバーや乗客の心理的負担を軽減し、万が一の事態に備えるための安全対策としても機能する。
EDSSは、乗客とドライバーの安全を確保するだけでなく、緊急時に迅速かつ適切に対応できるよう設計されている。
2024年問題に対応するUXデザイン戦略
今後の路線バス業界では、UXデザインの重要性が増している。
利用者とドライバーの肉体的・心理的負担を軽減し、幸福度を向上させる製品やサービスを提供する視点で企画を進めることが求められる。
特に、2024年問題に代表されるドライバー不足の現状では、運転支援やストレス軽減を重視したUXデザインが、ドライバー数の維持に繋がるだろう。
また、UXデザイナーの数は増加しており、フリーランスや大学の人材を活用することも有効な選択肢となる。
これらの取り組みを通じて、持続可能なバス業界の実現を期待したい。
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