3つのキーワードは「アップデート・電動化・交通空白地」
2022年9月のおわりに、東京お台場の特設会場にて「SIP自動運転 実証実験プロジェクト 展示・試乗会」が開催された。自動車メーカーやサプライヤー、大学・研究機関などが手掛ける最新の自動運転実験車が一堂に会したイベントで、試乗体験もあり自動運転のトレンドを肌で感じることができた。
新型ノア/ヴォクシーの渋滞時ハンズオフは本当に使える機能なのか?手離し運転の精度は?
スズキが浜名湖周辺で進める自動運転の実験車両。あらためて説明すると、SIP自動運転(SIP-adus)というのは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議がリーダーとなって進めているプロジェクト。個社で対応するのが難しい、インフラなどの協調領域について国家戦略として整備を進めている。
実際、自動運転レベル2でのハンズオフ走行に欠かせない3D 高精度地図データはSIP-adusが旗振り役となって整備されたという実績もある。また、信号情報を車両に伝えるといったインフラの実験についても進めている。イベントが開催された東京臨海地区は、そうしたインフラを先行して整備しているエリアだったりもするのだ。
さて、今回のイベントで感じた全体的なトレンドをまとめると、直近でのキーワードは「アップデート」「電動化」「交通空白地」といえそうだ。
具体的な例を挙げつつ、それぞれのキーワードを深掘りしていこう。
自動運転は日進月歩。ハードウェアのアップデート対応も重要
まずは「アップデート」の重要性を感じさせられたのが、トヨタが持ち込んだレクサスLSだ。
レクサスLSのように発売後もセンサーを増やすなど進化することが重要だ。現行のLSは、LIDARと呼ばれる赤外線センサーを使い自動運転レベル2相当のADAS(先進運転支援システム)を搭載している。
しかし、当初はフロントだけにLIDARを搭載するにとどまっていた。ただし、フロントフェンダーやリヤバンパーなどにLIDARを仕込むスペースが用意されており、後々のアップデートが可能とアナウンスされていた。
今回のイベントでは、そのLIDARを追加搭載して、ソフトウェアも最新へアップデートした状態のLSが持ち込まれていた。
クルマの寿命に対して、自動運転テクノロジーを支えるセンサーの進化スピードが圧倒的に速い現状を考えると、センサー自体のアップデートにも対応できるようなハードウェア・ソフトウェア(電子プラットフォーム)の設計が自動運転時代には必須となりそうだ。
売ったら終わり、というビジネスでは自動運転時代にはブランドとしての信頼も得られないだろうし、また市場から評価されないであろうということを、最新のLSからは感じさせられたのだ。
電動化と自動運転の相性は抜群にいい
冒頭で記したように、本イベントの名称は「SIP自動運転 実証実験プロジェクト 展示・試乗会」というもの。実際に、最新の自動運転テクノロジーを公道で体感できる機会も用意されていた。
BMW I4のADASが生む好フィールは電動化のメリットも大きい。その中で筆者が選んだのはBMW i4。日本で初めてハンズオフのADAS機能を実装したBMWのハンズオフドライブをあらためて味わってみようと思ったからだ。
ハンズオフが可能なのは、高速道路で50km/h以下の渋滞時。そうしたシチュエーションを求めて首都高速に向かっていった。
そこで感じたのは自動運転と電動化は非常に相性がいいということだ。
ハンズオフで走っている間も、先行車に追従して細かな速度調整は必要となる。ハンズオフのできるクルマに乗ったのは今回が初めてではなく、ガソリンエンジン車やハイブリッド車でも体感したことはあるが、フル電動のi4は、速度調整のスムースネスが一段上にあると感じた。
ハンズオフという状態でドライバーがリラックスしているからこそ、加減速の上手い下手が気になるという部分もあるのかもしれないが、加速はもちろん回生ブレーキをうまく使った減速の気持ちよさは格別。
また、床下にバッテリーを積む電気自動車は重心が低いため車両がハンドル制御をしてコーナリングするようなシーンでの安定感も高く、安心して任せていられる感が強い。
自動運転テクノロジーが進むほどに、ノイズや振動が少なく、加減速もスムースな電動パワートレインをユーザーは求めていくことになるだろうと思えた。
高齢化社会の進む日本だからこそ自動運転が必要
国産メーカーの中でも軽自動車やコンパクト系に強いスズキやダイハツが似たコンセプトの自動運転実験車を出展していたのも将来のトレンドを感じさせるところだった。
いずれも、公共交通機関がなくなり、高齢化による運転できる人も減っていくこと生まれる『交通空白地』での移動権を確保するものとして、小さな自動運転車を考えている。
日本の国家プロジェクトとしてSIP-adusが考えるべきは、限界集落・高齢化といった状況から生まれる交通空白地をどのようにカバーするかであって、軽自動車やコンパクトカーをベースに、限られてエリアで運用される自動運転サービスというのは大きなニーズがありそうだ。
もちろん、将来的に無人走行が可能な乗り合いバスやタクシーが実現すれば、そのテクノロジーは都市部でも役立つことだろう。
タクシー乗務員の人手不足が指摘されるのは今に始まったことではない。ホンダがGMと共同開発を進めているような無人モビリティが実現すれば、そうした課題を解決することだろう。
もっとも、無人走行可能な自動運転モビリティの実現には、もう少々時間がかかりそうだ。
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