現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > こんなクルマよく売ったな!【愛すべき日本の珍車と珍技術】三菱渾身の合理的設計で生まれた5ナンバーミニバン[ディオン]の数奇な運命

ここから本文です

こんなクルマよく売ったな!【愛すべき日本の珍車と珍技術】三菱渾身の合理的設計で生まれた5ナンバーミニバン[ディオン]の数奇な運命

掲載 14
こんなクルマよく売ったな!【愛すべき日本の珍車と珍技術】三菱渾身の合理的設計で生まれた5ナンバーミニバン[ディオン]の数奇な運命

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、売れ筋だった5ナンバークラスミニバン市場に投入されたディオンを取り上げる。

こんなクルマよく売ったな!【愛すべき日本の珍車と珍技術】三菱渾身の合理的設計で生まれた5ナンバーミニバン[ディオン]の数奇な運命

文/フォッケウルフ、写真/三菱

■家族の要望に応えるワゴンとミニバンのクロスオーバーモデル

 現在、新車市場におけるミニバンのラインナップは、以前に比べて売れ筋車種以外は淘汰され、選択肢が限定された感がある。実用性を重視するユーザーの多くがSUVに流れ、スライドドアが必要なら軽自動車のスーパーハイトワゴンを選ぶユーザーが増えたことも、ミニバンクラスの状況を変えた要因と言っていい。

 かつてファミリーカーの分野で主流だった4ドアセダンからその座を奪取し、一気に増殖した5ナンバーサイズのミニバンについても、現行車種ではトヨタ シエンタ、ホンダ フリード、日産 セレナしか存在しない。

 1990年頃は車両価格や維持費の安さ、スマートに運転ができて使い勝手がいいコンパクトなミニバンは、家族にとってベストな選択だった。そんな車種を求めるニーズに対して、三菱が2000年1月にリリースしたのが「ディオン」だった。

シンプルながら個性を強調したフロントまわりで誕生。発売2年後にはマイナーチェンジでよりコンサバな方向へ変更される

 スマート・デザインとエコロジー・コンシャスという基本思想をもとに開発したSUW(スマート ユーティリティ ワゴン)の第2弾として登場したディオンは、国産ミニバンの元祖とも言えるシャリオを筆頭に、RVR、さらにデリカスペースギアとともに三菱の販売の主力となるべく期待されていた。

 ディオンはミラージュディンゴをベースとしながら、ホイールベースと全長をそれぞれ延長しているが、全幅を1695mmに設定して5ナンバーサイズとしていた。現在ならコンパクトミニバンに属するが、三菱はディオンを「5ナンバー3列シートの7人乗りワゴン」と銘打ってリリース。今風に言うなら、ワゴンとミニバンのクロスオーバーモデルというスタイルを具現化していた。



記事リンク















前の記事





こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】シティオフローダーに仕立てた[チャレンジャー]は兄貴分のパジェロをなぜ超えられなかったのか?















次の記事





こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】国産車最後の5ナンバーサイズFRクーペ[ロードスタークーペ]















■優れたパッケージングと機能を両立した独自のスタイル

 「高密度、こだわりワゴン」というコンセプトを掲げたデザインは、子どもからお年寄りまで、人に優しく、人と物を楽しく快適に運ぶという考え方を基本としている。

 高いノーズとボクシーなキャビン、クリアなイメージを強調する特徴的なヘッドランプと大型グリルで構成される上質感と安定感を強調した厚みあるフロントデザインによって、今どきのミニバンのような箱型とは一線を画すものとしていた。ボディサイドはおおらかな面処理が施されたことで、室内の広さを感じさせた。

リアコンビランプやサイドにまわり込んだ造形で上質感を演出したリアガラスによってリアビューにも独特の表情を与えている

 車内は、開放感を演出する広いガラスエリアと高めの着座位置によって、ゆとりや落ち着き感を提供する。運転席まわりやドアトリムの造形は凹凸の少ないシンプルな作りとすることで質感の高さを表現。乗員が上質な空間で心地よく過ごせることに注力したデザインとなっていた。

 ロータンブル&スクエアスタイルとフラットフロアの採用によって室内は十分な広さが確保されている。ただ広いだけでなく、左右と前後にウォークスルーが可能な、「H(エイチ)ウォーク」を採用するなど仕切りのないワンルーム感覚の空間を実現したことで、ゆったりくつろぎつつ、優れた利便性も実感できる。

 スマートユーティリティワゴンとしての特徴として、多人数乗車ができることと、多彩な用途に対応できる実用性が挙げられる。室内の広さは5ナンバーサイズのワゴンとしては十分に満足できるもので、そこにミニバンのような使いやすく多彩なシートアレンジ機能をプラスしていた。

 2列目シートは、チャイルドシートを装着している場合でも3列目への乗り降りが楽に行えるよう、左右独立分割のロングスライド機構とウォークイン機構が採用された。3列目は床下反転格納式を採用。格納時にはフラットで広く使いやすい荷室スペースとすることができるうえに、シート全体をワンタッチで後方へ回転させてベンチとしても活用できた。

 2列目の分割ロングスライド、3列目の床下反転格納式シートのいずれもクラス初の機能であり、スマートユーティリティワゴンの面目躍如と言える、優れた使い勝手を実現していた。

■快適で誰でも扱いやすい特性で家族に喜びを提供

 パワーユニットは、街なかで多用する低中速領域で扱いやすい特性としながら、優れた実用燃費を発揮する2Lの4G63型GDIエンジンを新開発して搭載。トランスミッションは4速ATとなる。

 4G63型GDIエンジンは、走りの面のみならず環境性能に長けたエンジンとして注目を集めた。国内の排出ガス規制に対応するとともに7都県市指定低公害車基準にも適合したうえに、2010年燃費基準もクリアするなど、開発時に掲げたエコロジー・コンシャスが徹底追求されていた。

 デビュー当初は4G63型GDIエンジンのみの設定だったが、2002年5月に実施したマイナーチェンジでは2Lの4G94型GDI仕様と、1.8L直列4気筒の4G93型GDI+ターボチャージャー仕様がラインナップされる。

 快適性と操縦性の調和はファミリーカーにとって外せない要素だが、ディオンは、フロントがマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式を採用。扱いやすさを重視し、ハンドリングは穏やかな印象で、カーブで生じる車両の傾きも適度に抑えられて違和感がない。

 5.2mという小さな最小回転半径や、ボクシーなフォルムや広いガラスエリアによってもたらされる見切りのよさによって、運転がイージーに感じられる。こうした特徴は、奥様がハンドルを握る場合にも喜ばれるポイントと言える。

ヒップポイントを前席よりも後席のほうが高くなるようレイアウトすることで、良好な見晴らしを実現。ドアはヒンジ式だが、開口部を大きく設定し、ナチュラルハイトと段差の少ないサイドシルによって楽に乗り降りできる

 ギリシア神話に登場する喜びを司る神に由来するネーミングが与えられ、デビュー当初は多くのユーザーにメリットを提供して喜ばれたが、やはり多人数乗りという点ではスライドドアを持つミニバンを凌駕することができず、スマートユーティリティワゴンという斬新な狙いはいまいち浸透しなかった。

 取りまわしのいいコンパクトなボディながら、多人数乗車が快適に行えて、実用的な機能も充実。2006年3月に生産終了後、後継モデルが登場することもなかったが、合理的な設計がなされているうえに159万8000円からという車両価格で、圧倒的なコストパフォーマンスは大きな魅力だった。

【画像ギャラリー】扱いやすいサイズと充実の機能が揃った三菱ディオンの写真をもっと見る!(7枚)

投稿 こんなクルマよく売ったな!【愛すべき日本の珍車と珍技術】三菱渾身の合理的設計で生まれた5ナンバーミニバン[ディオン]の数奇な運命 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

走りは爽快!! 中古で人気の4代目ルノー ルーテシアは新型フィットより魅力的!?【10年前の再録記事プレイバック】
走りは爽快!! 中古で人気の4代目ルノー ルーテシアは新型フィットより魅力的!?【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
自転車の「ながら運転」厳罰化! ドイツにはもっと厳しく複雑な自転車ルールがありました…逆走には要注意です【みどり独乙通信】
自転車の「ながら運転」厳罰化! ドイツにはもっと厳しく複雑な自転車ルールがありました…逆走には要注意です【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
ジュリエッタ・ユーザーを呼び戻す? アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカへ試乗 HVも登場!
ジュリエッタ・ユーザーを呼び戻す? アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカへ試乗 HVも登場!
AUTOCAR JAPAN
160万円でガルウイングドアが買えた! トヨタ「セラ」はバブルが生んだマイクロスーパーカーでした…今見ても新鮮なデザインに再注目です
160万円でガルウイングドアが買えた! トヨタ「セラ」はバブルが生んだマイクロスーパーカーでした…今見ても新鮮なデザインに再注目です
Auto Messe Web
オコン&ガスリーの幼なじみペアがダブル表彰台に感無量「最終ラップ、カート時代に思いを馳せた」アルピーヌは6位に
オコン&ガスリーの幼なじみペアがダブル表彰台に感無量「最終ラップ、カート時代に思いを馳せた」アルピーヌは6位に
AUTOSPORT web
F1がまだ「めちゃくちゃ」だった頃の話 ひどいチームで溢れかえった80~90年代 歴史アーカイブ
F1がまだ「めちゃくちゃ」だった頃の話 ひどいチームで溢れかえった80~90年代 歴史アーカイブ
AUTOCAR JAPAN
ジャガー、英国で新車販売終了 ラインナップ総入れ替え 2026年まで中古車のみ
ジャガー、英国で新車販売終了 ラインナップ総入れ替え 2026年まで中古車のみ
AUTOCAR JAPAN
特別な青を纏ったベントレー「ベンテイガS」完成! 英国ファッションデザイナーとコラボした限定車は、電動化延期が影響していた…!?
特別な青を纏ったベントレー「ベンテイガS」完成! 英国ファッションデザイナーとコラボした限定車は、電動化延期が影響していた…!?
Auto Messe Web
ホンダ新型「スーパーカブ×ハローキティ」初公開! サイドカバーの「飛び出すキティ」が凄すぎ! 超人気の「2大巨頭」奇跡のコラボで発売へ!
ホンダ新型「スーパーカブ×ハローキティ」初公開! サイドカバーの「飛び出すキティ」が凄すぎ! 超人気の「2大巨頭」奇跡のコラボで発売へ!
くるまのニュース
スペックはディーゼルに見劣りするトヨタ「ランドクルーザー250」のガソリン車 “気になる街中での印象”は? 充実した装備類で“コスパは最強”
スペックはディーゼルに見劣りするトヨタ「ランドクルーザー250」のガソリン車 “気になる街中での印象”は? 充実した装備類で“コスパは最強”
VAGUE
真夏も真冬も車内で寝る必要があるトラックドライバー! アイドリングが御法度なイマドキの「冷暖房」事情
真夏も真冬も車内で寝る必要があるトラックドライバー! アイドリングが御法度なイマドキの「冷暖房」事情
WEB CARTOP
F1の新規ファンが増えない根本理由 75周年を機に開かれる未来への道筋とは?
F1の新規ファンが増えない根本理由 75周年を機に開かれる未来への道筋とは?
Merkmal
「僕よりも大変な人たちがいる」アロンソ、激痛襲われるもサンパウロ完走でマシン修復のチームや豪雨被害バレンシアに勇姿見せる
「僕よりも大変な人たちがいる」アロンソ、激痛襲われるもサンパウロ完走でマシン修復のチームや豪雨被害バレンシアに勇姿見せる
motorsport.com 日本版
【BMW 1シリーズ 新型】色々なボディカラーで楽しんで
【BMW 1シリーズ 新型】色々なボディカラーで楽しんで
レスポンス
PPのノリス、赤旗で後退しタイトル争いにも打撃「ライバルはラッキーだったが、僕は不運だった。戦略に誤りはない」
PPのノリス、赤旗で後退しタイトル争いにも打撃「ライバルはラッキーだったが、僕は不運だった。戦略に誤りはない」
AUTOSPORT web
「“暗い色”増えたなぁ…」 自動車カラーのトレンドが一気に“地味化”へ!? “とにかく明るい色”から一転のワケ
「“暗い色”増えたなぁ…」 自動車カラーのトレンドが一気に“地味化”へ!? “とにかく明るい色”から一転のワケ
乗りものニュース
「ヘッドライトが眩しいクルマ」なぜ増えた? 信号待ちで「ライト消さない人」が多数派になった理由とは? ヘッドライトの“新常識”ってどんなもの?
「ヘッドライトが眩しいクルマ」なぜ増えた? 信号待ちで「ライト消さない人」が多数派になった理由とは? ヘッドライトの“新常識”ってどんなもの?
くるまのニュース
小さいジープはいかが? ブランド最小のSUV「アベンジャー」がEVで登場! 【新車ニュース】
小さいジープはいかが? ブランド最小のSUV「アベンジャー」がEVで登場! 【新車ニュース】
くるくら

みんなのコメント

14件
  • abk********
    “こんな雑誌よく売ったな!”


    と、50年後の日本人の多くに笑われない様、ベストカーもせいぜい精進してください…






    ムリだと思うけどw
  • XIVIX
    前は兄弟車で顔変えたり実売で売れなくてもこういう車を売るチカラがあったんだよな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

165.9223.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
ディオンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

165.9223.7万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村