かつての国産エステート全盛時代にちょっとスマートでおしゃれさを売りにしていたのが1991年に逆輸入された初代USアコードワゴン。その後も、アコードワゴンは独自のポジションを得ていたが、その魅力について振り返ろう。
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部、ホンダ
オシャレでハイセンスな国産エステートのさきがけ! アコードワゴンがなくなってしまったのはなぜ?
■初代レガシィツーリングワゴンとは別ベクトルで健闘したアコードワゴン
初代USアコードワゴン。セダンにはない知的でおしゃれなイメージがあったモデルだった
バブル絶頂期の平成初め、日本の自動車業界は初代セルシオをはじめとした高級車、R32スカイラインGT-Rを代表とした高性能車が次々と発表されるなど、実に華やかだった。
その華やかさには「日本車がバラエティに富んでいた」という側面もあり、そのひとつがRV(レクレーショナル・ビークル≒レジャーカー)ブームであった。当時のRVブームを牽引していたのは初代と2代目のパジェロを筆頭としたクロカンSUVと、初代レガシィツーリングワゴンが火付け役となったステーションワゴンだった。
ステーションワゴンブームは2000年代初めまで10年少々続き、その王者はレガシィで、「ステーションワゴンといえばレガシィ」というイメージを持つ人がたくさんいたほどだった。
しかし、レガシィが圧倒的に強かったステーションワゴンブームのなかでもそれなりに健闘したモデルはあり、その1台がレガシィと同車格となるアコードワゴンである。
ここではアコードワゴンが歩んだ軌跡を振り返るとともに、アコードワゴンが2013年に絶版となった理由を考えてみた。
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■スタイリッシュさが際立った初代 (1991年)
初代USアコードワゴンは米国からの逆輸入車だったが、ライバルの初代レガシィツーリングワゴンとはまた違った魅力で支持を得ていた
アコードワゴンの初代モデルは1989年登場の4代目アコードのバリエーションとして加わった。初代アコードワゴンは初代と2代目のアコードクーペに続き、アメリカで開発と生産が行われたモデル、つまり逆輸入車であった。
ベースとなった4代目アコードは上質な乗り心地や高い静粛性を備えるなどミドルクラスのセダンとしては素晴らしいクルマだったが、当時のホンダ車らしくよくも悪くも尖った部分に欠けるのが原因だったのか、実力に対して目立たない存在だった。
それに対し、初代アコードワゴン(2.2L4気筒エンジンを搭載)は不思議とカッコよかったこと、逆輸入車というイメージ、リトラクタブルヘッドライトだった3代目アコードに対して大人しくなった4代目アコードのキャラクターにステーションワゴンが似合っていた。
そのためか、登場時の月500台という販売目標台数に対して月平均1000台少々が売れるというなかなかの成功を収め、アコードワゴンはアコードにおける柱のひとつとなった。
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■アメ車的なデザインで存在感を強めた2代目 (1994年)
2代目アコードワゴン。当時のフォードトーラスワゴンにも似た雰囲気のアメ車テイストのエクステリアデザインが印象的だった
ベースとなる5代目アコードセダンは前年の1993年に登場。5代目アコード自体は全幅1760mmという本格的な3ナンバー車に成長し、ステーションワゴンは初代モデルと同様のアメリカ製という形で、セダンから若干遅れて日本に上陸した。
2代目アコードワゴンは初代モデルに対してボディ後端のDピラーの傾斜を大きくしてスポーティ、スタイリッシュというキャラクターを強めた。また、2代目アコードワゴンもアコード自体が国際戦略車というホンダにとって重要なモデルなこともあり、ソツのない「いわゆるいいクルマ」だった。
これに加え、価格が2.2Lエンジンで220万円台からとリーズナブルだったこともあり、こちらも成功作となった。アメ車っぽいデザインで「スムージング仕様」が支持を得たモデルだった。
■VTECエンジン搭載車も加えた3代目(1997年)
3代目アコードワゴンは2代目の3ナンバーサイズから5ナンバーサイズに回帰
セダンは6代目、ステーションワゴンとしては3代目となるこのアコードは「北米、欧州、日本、アジアといった仕向け地ごとのニーズに合わせたモデルを提供する」というコンセプトを掲げていたこともあり、日本仕様のステーションワゴンのボディサイズは5ナンバー+αと若干小さくなり、生産も日本国内となった。
エクステリアは2代目モデルと同様のコンセプトで、3代目モデルもクルマ自体の完成度は高く、価格がリーズナブルだったこともあり、成功を収めた。
3代目アコードワゴンにはVTECエンジンを搭載したスポーティグレードのSiRも設定された
なお、3代目アコードワゴンにはセダンにマイナーチェンジで追加され評価の高かったユーロRはなかったが、モデルサイクル中盤にスポーツモデルとして2.3LのDOHC VTECを搭載するSiRが設定された。
■3代目オデッセイと食い合った4代目(2002年)
さらに上級感を高めていった4代目アコードワゴン
アコードはこのモデルで再び本格的な3ナンバーサイズとなるなど、先代モデルに対して若干車格が上がった格好となった。
このモデルで4代目となったステーションワゴンのコンセプトは「ステーションワゴンの本質を極める」というものだったこともあり、「カッコよくて、荷物が積めて、走れるステーションワゴン」を目指し、エクステリアではセンターピラー後方以降をサスペンションやホイールベースもステーションワゴン専用にするなど、手の込んだモデルだった。
結果的に4代目アコードワゴンは3代目オデッセイの割を食うクルマとなってしまった
その甲斐もあって、このモデルもセダン、ステーションワゴンともに全体的にさらにレベルアップした上質なモデルに仕上がっており、クルマ自体はほとんど申し分なかった。
しかし、皮肉なことにこのモデルからアコードワゴンは販売が下降し始めた。その大きな原因は同社から翌2003年に登場した3代目オデッセイだったように思う。
というのも3代目オデッセイは2代目オデッセイまでとはコンセプトを大きく変え、「全高を立体式駐車場にも入る1550mmに抑えたミニバン」に移行した。3代目オデッセイは全高を1550mmに抑えながらも実用的に使える3列目シートを持ち、全高を下げた効果でそれなりにスポーティな走りも実現。
つまり、4代目アコードワゴンと3代目オデッセイはボディタイプこそ違えど、結果的に大きく似通ったモデルになってしまった。さらに3代目オデッセイは3列目シートが付いて、価格は4代目アコードより10数万円高いだけと、4代目アコードワゴンの分が悪いのもよくわかるところだった。
4代目アコードワゴンは3代目アコードワゴンの登場後、初期モデルは2.4Lのみだったこともあって価格を下げた2LエンジンやスポーティなタイプSを追加するなどのテコ入れは行ったものの、残念ながら大きく浮上することはなかった。
■この高級感はベースがアキュラならではだった5代目(2008年)
5代目アコードワゴンはアコードツアラーに改名。内外装のクォリティは圧倒的だった
このモデルは成り立ちが「欧州向けアコードのアキュラ(トヨタのレクサスに相当するホンダの高級ブランド)版となるTSXを日本仕様としたもの」に大きく変わった。
そのためボディサイズはアコードワゴンからアコードツアラーに車名が変わった。ボディサイズは全長4750×全幅1840×全高1470mmと、特に全幅が一気に大きくなった。なお、この当時の北米向けアコードは日本でも3.5LのV6を搭載し、インスパイアの車名で販売された。
4気筒の2.4Lエンジンでスタートし、のちに価格を下げた2Lを追加したアコードツアラーはアキュラTSXの日本仕様という成り立ちもあり、300万円台前半が中心だった価格帯を考えると望外なくらい各部の質が高いクルマで、当時オーナーの満足度は高かったに違いない。
しかし、この時点でステーションワゴンに対する需要が減少していたのに加え、登場したのがリーマンショックによる不景気が始まったところというタイミングの悪さもあり、販売は低迷。アコードのステーションワゴンはこのモデルを最後に絶版となった。
アコードのステーションワゴンはひっそりと姿を消してしまったが、日本車のステーションワゴンの王者として長年君臨したレガシィツーリングワゴンに10年以上一矢報いたのに加え、絶版となったモデルが多いミドルステーションワゴンにおいてはそれなりの年月で販売されたことを考えれば、まあまあ幸せなクルマだったとも言えるのではないだろうか。
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永田
小鮒
高野
あたりかと思ったが案の定、永田。
ホンダあるある