販売面では成功を収めることはできなかったが、スクリーンで大活躍し、記憶に残る名車となった先代と異なり、国内では鳴かず飛ばずで終わった悲劇の1台がある。連載第6回目となる日産ヘリテージコレクションの名車紹介は、悲劇の高級4ドアセダン「レパードJフェリー」をお届けする。
文/大音安弘、写真/池之平昌信
「尻下がり」デザインは今見ても個性的! 販売的には失敗したが……「レパードJフェリー」は新しい高級車像を模索した1台だった!!
■賛否を呼んだ個性的なスタイルを持つレパードJフェリーの歩みとは?
3代目レパードは4ドアセダンのみのラインナップとなるJフェリーのサブネームがついて登場
1991年10月の東京モーターショーに参考出品され、その存在が明らかにされたのが3代目レパードとなる「レパードJフェリー」だ。3代目レパードは当初、2代目同様に2ドアが想定されて開発が進められてきたが、2ドアスペシャルティカーの市場よりも、4ドアラグジュアリーカーの市場のほうが成長性があると判断。
そこで4ドアモデルへのスイッチが決定された。新型のコンセプトは、「乗る人のセンスを語る新高級パーソナルセダン」とし、高級車としての「所有する喜び」、「走る楽しさ」に加え、お洒落で優雅な雰囲気を持ち、自分らしさを表現するクルマが目指されたという。
ちなみに、Jフェリーの意味はフランス語の休日を意味する「jours fériés」を元にした造語だ。
その特徴的なエクステリアデザインは、米国カリフォルニアにある日産のデザインセンター「日産デザインインターナショナル(NDI)」が担当。初代テラノをはじめ、連載でも紹介した「エクサ」や「NXクーペ」も同拠点が手がけたものだ。
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■スタイリングで最大のポイントは「尻下がり」
Jフェリーのエクステリアはリアにいくにつれて下がっていくデザインが採用されていた
先代のクーペとは異なり、4ドアセダンとしたことで、重視されたのは「エレガンス」(優雅さ)だ。そこでクラシックさを感じる上品なスタイリングが与えられているが、同時にデザイン的なチャレンジも行われている。
それが特徴の尻下がりデザインへと繋がっていく。その狙いは、ルーフラインからCピラー、そしてリアフェンダーまでの流れるフォルムを実現するためであった。
インテリアデザインは、日本のデザイン拠点が担当。曲線を取り入れることで、優雅さを表現している。各部のパーツの多くを専用品とする贅沢な作り込みで、各部の形状に曲線を巧みに使い、ゆとりや優雅さを表現。高級車の証ともいえる洒落たデザインのアナログ時計も装備されている。
さらに標準車のシート表皮はモケットとなるが、メーカーオプションとしてイタリアの名門、ポルトローナフラウ社製レザーシートを設定。そのオプション価格は、驚きの60万~71万円という設定であった。
■パワートレーンはV6、3LDOHCとV8、4.1LDOHCの2本立て
Jフェリーのパワートレーンは写真のV6、3LDOHCとV8、4.1LDOHCの2種類が設定されていた
メカニズムでも上級化を図り、従来のスカイライン&ローレル系をベースからセドリック/グロリア系にシフト。ベースをY32型セドリック/グロリアと共有するが、ホイールベースは専用となり、セドグロよりも少し長く、全長と全幅もひと回り大きい。
ただし、パーソナルセダンとしたことから、着座位置はセドグロよりも低く設定されていた。エンジンは、再び自然吸気仕様のみに。メインは3LV6DOHCのVG30DEとシーマ譲りの4.1L V8DOHCのVH41DE型を搭載。
いずれも電子制御4速ATとの組み合わせであった。最上位となる4.1L仕様は、国内のみで展開。海外仕様であるインフィニティJ30は最上位のインフィニティQ45との競合をさけるため、3Lのみとされた。新車発売時の価格は、3L車が385万~386万円。4.1L車は一気に上昇し、469万円であった(※いずれも東京・名古屋・大阪地区価格)。
1992年4月に先行発表された北米仕様のインフィニティM30の評判は上々、バカ売れとはいかなかったが、安定した販売で推移した。しかし、1992年6月に発売した日本では、独自性を追求したエクステリアデザインの評判が悪く、当初より販売は不振に。
発表された月販目標台数の3000台など遠く及ばず、総販売台数は7411台に過ぎない。端的にいえば大失敗に終わった。その背景には、キープコンセプトで成功を収めたセドリック/グロリアのグランツーリスモや新感覚の高級セダン、トヨタアリストの存在もあった。
つまり、日本の高級セダンはスポーツ指向だったのに対して、それとは異なるフォーマル志向が裏目に。まさに市場動向の読み違えといえよう。
■落ち着いた上品な佇まいは貴重ではあったのだが……
レパードJフェリーのインテリア。日本仕様にはドリンクカップホルダーがコンソールには設定されていなかった
改めて実車を見てみると、落ち着いた佇まいの上品が好印象。今のギラついた高級車が失った輝きを感じさせる。ただ、セドグロ以上シーマ未満という存在は、今となってもオーナー像が浮かびにくいのも本音。日本では、誰に向けたクルマだったのだろうか……。
考えるほど、北米優先で生まれたクルマという印象が強くなる。大きな謎のひとつが、フロント用カップホルダーが非設定だったこと。これはパーキングブレーキのリリースレバーをセンターコンソール上に配置したことが原因。
ただし、北米仕様のインフォメーションM30では、ダッシュボード下にリリースレバーを設けることで、センターコンソールにドリンクホルダーをしっかりと装備していた。デザイン優先の結果だったのだろうか……。
■先代に負けず、国内外の銀幕でも活躍していたJフェリー
ヘリテージコレクションに収蔵されているJフェリーはタイプLで、V6の3LDOHC搭載車だった
2024年5月24日に新作映画が封切りとなる『帰ってきたあぶない刑事』が話題のTVドラマ「あぶない刑事」シリーズで、先代となるF31レパードは、タカ&ユージの欠かせない相棒として活躍し、記憶に残る名車となっているが、実はレパードJフェリーもスクリーンで活躍している。
まず、国内では藤田まこと氏演じる人情デカ、安浦刑事の活躍を描いた「『はぐれ刑事純情派』のシリーズ中で覆面パトカーとして活躍したことも……。そして舞台を米国に移し、正義と悪のプロフェッショナルの交流と戦いを描いたアクション大作『ヒート』では、アルパチーノ演じる敏腕デカ、ヴィンセント・ハナがロバート・デ・ニーロ演じる強盗団のボス、ニール・マッコーリーを追跡する際に用意させた覆面パトカーとして、インフィニティM30が登場していた。
販売が振るわなかったレパードJフェリーは、1995年3月に4代目にバトンタッチ。再び、名前をシンプルにレパードに戻し、完全にセドグロとの共有化が図られた姉妹車となった。
唯一の救いは、スポーティな専用フロントマスクが与えられたことだろう。このため、レパードは販売台数が増加したが、それでもJフェリーの2倍程度で、その歴史に幕を下ろした。
販売的には、失敗に終わったレパードJフェリーだが、新たな高級車像を模索したことは評価したいと思う。
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みんなのコメント
U13のセダンもそうだけど、トランクのラインが下がっているというだけでなんでそんなに嫌われるのかが本当にわからない。それでいて、同様に下がっている近年のメルセデス・ベンツには誰も文句を言わないんだから、みんな本当は車のデザインなんてどうだっていいんだと思う。