ここ20年の間にSUVがジャンルとして確立され、近年は次々とニューモデルが登場している。
売れ筋となっているのはクロスオーバーモデルだが、それでもあえて「クロカンSUV」を選ぶユーザーは少なくない。特にトヨタ ランクル100系、スズキ ジムニー(先代型)などは登場から年数を経た現在でも根強いファンに支えられている。その魅力の詳細を見ていこう。
そのボディ構造は”ホンモノ”か!? マニアから高評価のクロカンSUV2選
文/フォッケウルフ
写真/トヨタ、スズキ
■「猫も杓子もSUV」時代で輝くフレームボディ
先ごろ世界初公開されたクラウンが「セダンとSUVを融合させた革新的なパッケージで、これまでの概念にとらわれない、新たな価値を提供するクルマ」へと変貌したのは驚かされた。新型クラウンには4つのバリエーションがあって、そのなかには往年のセダンが控えている。
しかし、トップバッターとして登場したのが「クロスオーバー」であること、それによってクラウンがトヨタの公式ウェブサイトの分類で「SUV」に属したことなどを鑑みると、SUVがいかに市場で求められるジャンルであるか改めて実感させられる。
今秋発売と予想されている新型クラウンの第一弾モデルは「クロスオーバー」。セダンとSUVの中間のようなスタイルだ
SUVが他ジャンルを凌駕するほどの人気を獲得している背景には、車種のバリエーションが多彩で魅力的な選択肢が多い、というだけで片付けられない理由がある。なかでも大きく影響を及ぼしているのが、新車市場における他ジャンルの状況だ。
セダンは国内における市場縮小が加速し、海外市場を意識して作られたクルマに対してユーザーが興味を失っている。家族のクルマとして支持されていたミニバンも一部の車種だけが売れ行きを伸ばしており、それに対抗しうる新型車の登場もない。
こうした状況のなかで、SUVクラスでは斬新なコンセプトで開発された新型車が次々と登場。本来の持ち味である個性やオールマイティに使える能力に多くのユーザーが傾倒しはじめたことが、いまのSUVクラスを盛り上げている要因と言えるだろう。
多彩なバリエーションのなかでも圧倒的に売れているのは、市街地走行に重きをおいた特性が与えられたシティ系とかクロスオーバーと呼ばれているタイプだ。ボディ構造は乗用車と同じくモノコックで、4WDシステムを採用して悪路走行を想定しているが、舗装路ではセダンやクーペも顔負けの操縦安定性を発揮する。
しかし、こうしたSUVが多数派のなか、「クロカン(クロスカントリー車の略)」と称されるモデルも少数ながらクラスで確たる存在感を主張している。
本格的なクロスカントリー走行を楽しみたいなら、フレームだけで頑丈さを確保するフレーム構造を持つモデルを選びたい
ボディ構造は頑強なラダー(はしご状の)フレームとし、ハイ/ローの切り替えが行なえる副変速機を持った本格的な4WDシステムを採用。また、悪路走行時にボディが路面に干渉しない対地障害角を備え、サスペンションもデコボコ道も難なく走れるようストロークがタップリと確保されるなど、ハードな悪路をものともしない走破性を持ち味としている。
■クロカンSUVの一番の魅力は悪路走破性能!
シティSUVはブームに乗って確立されたジャンルとあって歴史は浅い。むしろSUVクラスを長らく牽引してきたのは、登場から70年以上を経てもなお「SUVの王様」と称されるトヨタ ランドクルーザー。そして、1970年の登場以来、半世紀以上に渡って愛されている軽クロカンのスズキ ジムニーである。
この2台は、デビュー当初の主な用途だった産業用としてだけでなく、山岳・積雪地域の生活を支えるアシとして、さらには釣りやキャンプなど、アウトドアレジャーといった趣味の領域まで、幅広い用途に適したクルマとして、年々進化するSUVクラスのなかでも「本格クロカンSUV」という独自の価値を守り続けている。
なかでも「100系」と呼ばれる先々代型のランクルと、1998年に登場し、20年に渡って長く支持された先代型ジムニー(JB23)はいまだに高い人気を維持している。中古車市場に目を向けると、この2台の相場は値崩れしていないどころか、高値安定傾向にあり、10年落ちの車両でさえ状態によっては高額で取引されている。
時代の最新技術を搭載した悪路走破性能に加えて、信頼性や耐久性も高く、世界中で高い評価を獲得してきたランドクルーザー
ランクル100、ジムニーともに悪路走破性は抜群に高い能力を持つが、いずれも流行のシティSUVに比べると、一般的な街乗りユーザーにとってのメリットは乏しい。
現行型でだいぶ改善されたとはいえ、悪路走行を意識した足まわりの設定は決して俊敏とは言えず、車重の重さも相まって操舵に対する曲がり出しの反応は鈍い。乗り心地は悪路でこそ真価を発揮する特性となっており、舗装路では揺れが大きめで、シティSUVのように颯爽とドライブできるわけでない。
頑強なラダーフレーム構造はクロカンSUVのウリだが、モノコックボディに比べると走行中にゴツゴツ、ブルブルと強い振動を発生し、それがハンドルを通して伝わってくるし、激しい悪路ではハンドルがとられることもある。燃費性能も期待できない、というかはっきり言って悪い(苦笑)。
それでも、副変速機を備えた4WDシステムや、激しい凹凸をものともしないアプーチアングルやディパーチャーアングルといった道なき道を突き進むための基本性能や、ハードな場面で鍛え抜かれたタフさは、クロカンSUVを求める人を納得させるものと言える。
なおかつ頑強な作りは走行距離がかさみ、悪路走行で徹底的に痛めつけられても簡単に壊れることもない。この頑丈さが、長く愛用するうえでは重要視され、年数を経ても市場での価値が下がりにくい理由のひとつにもなっている。
ジムニーは軽量コンパクトな車体に本格的な四駆性能を備え、さらにボディが小さいことから扱いやすいため、さまざまな用途で使われてきた
もちろん、こうした特徴や能力は舗装路においてはさほど重要ではない。しかし、悪路で立ち往生した場合、生命に危険がおよぶ地域においてはなによりも重要なことだ。どこへでも行けるタフな移動手段として生活を支えるし、レジャーユースでも生きる。アウトドア派を標榜するアクティブな人々には、クロカンSUVほどに頼れるクルマはないだろう。
■似ているようで異なるそれぞれの方向性
1951年に強力なエンジンを備えた4輪駆動モデルとして誕生。以後、70年にわたって進化を続けてきたランクル(写真は100系)
本格クロカンにタフさを強く求めるユーザーは、ランクルのなかでも40や70、80系といった無骨さ満点のモデルを選ぶことが多い。100系は高級路線への転身が本格クロカンのイメージをやや希薄にさせたと言われている。しかし、高級志向を強めたことで”オフロード界のセルシオ”と呼ばれるなど、同モデルに高いプレステージ性をもたらしたのは言うまでもない。
エンジンは4.7L V8ガソリンエンジンと、4.2L 直6ディーゼルターボエンジンの2種類を用意。ボディは大幅に拡幅され、サスペンションはランドクルーザー史上初のフロント独立懸架とされた。
4WDシステムは副変速機&センターフロック付きフルタイム機構となり、さらに車高を任意または自動で約90mm調整できるAHC(アクティブ・ハイト・コントロール)、路面状況に合わせてショックアブソーバーの減衰力を瞬時に調整するスカイフックTEMSといった技術も採用された。
1970年から販売され続ける軽の4輪駆動モデル・ジムニー。手頃な価格で買える軽自動車ながらその走行性能は本格派だ(写真は先代型)
コンパクトなクロスオーバーモデルが売れ筋になっている影響もあり、小型で悪路走行がこなせるモデルも増えている。しかし、いずれもジムニーほどのハードな悪路走破性は持たない。日常的な場面における使い勝手や運転のしやすさ、さらに快適性や燃費性能などを加味すると、ジムニーよりも魅力的な車種は多い。
しかし、デビュー当初から世界最小クラスの4WDとして注目されていたジムニーは、時代を超えても色褪せない本物の価値を提供してきた。コンパクトなボディサイズに頑強なラダーフレーム、前後リジットアクスル式のサスペンション、副変速機を備えたパートタイム4WDという基本構造は現行型にも継承されているが、これが本物であることの証であり、ジムニーが半世紀以上支持されている理由でもある。
※ ※ ※
ランクル100、ジムニーともに、流行のクロスオーバーSUVのようなスマートさは持ち合わせておらず、ハンドリングはちょっと鈍重で荒い感覚がある。しかし、“どこへでも行くため”の機能や装備は、悪路において絶大な安心感をもたらし、どこへ乗り入れても涼しい顔をしていられる。
実用性に秀でているのはほかのSUVと同様だが、タフな場面での利用を想定した作りがなされているので、日常的な場面はもちろん、さまざまな趣味や遊びに適応してくれるだろう。
クルマの作り、機能、装備、すべてにおいて、道なき道を突き進むクルマであり、それを頑固一徹、宗旨替えすることなく貫いていることが、ランクル100やジムニーが多くのユーザーを惹き付ける要素となっているのだ。
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