現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > メーカー純正の「魔改造」ミッドシップ! 大人気ないほど速かった「ルノー5ターボ」とは

ここから本文です

メーカー純正の「魔改造」ミッドシップ! 大人気ないほど速かった「ルノー5ターボ」とは

掲載 更新 16
メーカー純正の「魔改造」ミッドシップ! 大人気ないほど速かった「ルノー5ターボ」とは

WRCでルノーが仕掛けたミッドシップ+ターボエンジン

 世界ラリー選手権(WRC)では駆動力の伝達でよりパフォーマンスを高めていく4輪駆動(4WD)や、小排気量でもよりハイパワーを絞り出すターボエンジンとミッドエンジンが必須のメカニズムとなっています。WRCの最高カテゴリーであるグループ4/グループBに、最初に4WD を持ち込んだのはアウディ・クアトロでしたが、全クラスを通じて初めて4WDを持ち込んだのは我がSUBARU(当時は前身の富士重工業)でした。

4WDの先駆者アウディが威信をかけて開発した幻のWRカー「アウディ スポーツクワトロ RS002」

 そして現在も4WDのパイオニアとして頑張っているのは日本人としても誇りに思っています。その一方で、ミッドエンジンを持ち込んだのはランチア・ストラトスでした。ストラトス自体は地球の常識を超えたようなスタイリングでしたが、その後継とも言うべきランチア・ラリー037は、理解しやすいルックスで、史上もっとも美しいラリーカー、との評価を得ています。

 その一方で、2ボックスのハッチバックを、ボディのシルエットはほぼそのまま、ミッドエンジンにコンバートしたクルマも登場してきました。その先駆けはルノー5ターボだったのです。

前輪駆動2ボックスハッチバックをミッドエンジンの2シーターに 

 1984年の第5戦、ツール・ド・コルスでデビューし、翌1985年から2年連続でダブルタイトルを獲得することになったプジョー・205ターボ16や、1985年最終戦のRACでデビューしたMG・メトロ6R4なども、それ以前からコンパクトカーの“定理”となっていた前輪駆動の2ボックスをベースに、エンジンをミッドシップに移動させた2シーターカーでしたが、先駆けとなったのは1980年に発売されたルノー5(サンク)ターボでした。WRCで活躍することになる5サーボの前に、先ずはベースとなったルノー5から解説していきましょう。

 ルノー5は1972年に登場したルノー製のコンパクトカーでした。基本的には先代モデルとなるルノー4(キャトル)と同様のパッケージで、直列4気筒エンジンを縦置きにフロントに搭載して前輪を駆動するというものでした。しかもクルマのフロントからトランスミッション→デファレンシャル→エンジンの順にマウントされていました。ですが、これはさらに先代となるルノー4CVのリヤに搭載されたパワーユニットをそのままフロントエンジンにコンバートしたというのが最大の理由でした。 言ってみればフロント・ミッドシップで重量配分的には素晴らしいものがありましたが、エンジンがキャビン内に大きく張り出すなど、コンパクトで日常的なクルマとしては問題もありました。それはともかく、リヤエンジンの4CVに比べると4(キャトル)は積載性で大きく優位に立っていたことで販売を伸ばしていましたが、そのキャトルをよりモダンなエクステリアデザインで包み込んだ5(サンク)がベストセラーともなったのもむべなるかな、といったところでしょうか。

 搭載するエンジンは当初、4(キャトル)にも使用されていた800ccと1000ccがラインアップされていましたが、のちに1100ccや1200cc、1300ccなども追加され1300ccユニットをさらにチューンしたハイパフォーマンスモデルの5アルピーヌが登場することになります。 1976年のジュネーブショーでデビューしたルノー5アルピーヌは、そのネーミングからも明らかなように名チューナーのアルピーヌが手掛けたモデルで1977年のシリーズ第9戦、サンレモ・ラリーでジャン・ラニョッティとギ・フレクランによってWRCデビュー。ラニョッティが総合7位入賞を果たしています。

 さらに翌1978年のWRC開幕戦、モンテカルロではジャン-ピエール・ニコラのポルシェ・カレラに次ぐ2-3位にラニョッティとフレクランがつけています。僅か1.4Lの前輪駆動で小さな2ボックスのルノー5アルピーヌがポルシェ・カレラと約30秒差の2-3位に続けば、もうそれだけで称賛されるべき結果です。 ですが、エースのラニョッティはどうも前輪駆動がお気に召さなかったようで、ワークスチームのルノー・スポールとしても後輪駆動の次期主戦マシンを用意する必要が出てきました。ただ、当時のルノーのラインアップはことごとく前輪駆動にコンバートされていて、ベースとなるモデルが皆無という状況でした。

 そこでルノー・スポールで下した結論が、5をベースにエンジンをミッドシップにコンバートして後輪駆動とすることでした。もう少し時代が進んでいればミッドシップの4輪駆動というレイアウトも考えられましたが、コンベンショナルな(?)後輪駆動で開発がすすめられたのです。 ベースの5が採用していたパワーユニットを前後逆にしてボディ後半に移動させたことで、前方から順にエンジン→デファレンシャル→トランスミッションと、まるでレーシングカーのようなパッケージとなり、エンジンを取り去ったフロントはもちろん、リヤもサスペンションの取り付けスペースが十分に確保されることになりました。ベースではフロントのみダブルウィッシュボーン式で、リヤはトレーリングアームだったサスペンションレイアウトも、前後ともダブルウィッシュボーン式のサスペンションを装着することが可能になりました。

 こうして1980年に、コンパクトな2ボックス・ボディながら本格的なミッドエンジン車が登場することになったのです。 ひとつ見逃せないのはルノーが当時、ターボチャージャーの技術を磨いていたということです。1978年にはル・マン24時間レースを制覇し、その余勢をかってF1GPにもターボエンジンを持ち込んでいます。そんなルノーだけに5のミッドシップバージョンにターボエンジンを搭載することは当然の帰結だったのでしょう。

 5アルピーヌで使用していた1.4Lエンジンにターボチャージャーを組み込んだ5ターボのパワーユニットは、OHVながら160psを捻り出して、ベースモデルの93psからは7割以上ものハイパワーを誇っていました。もうひとつ5ターボの大きな特徴となっていたのはオーバーフェンダー。トレッドをフロントで51mm、リヤは205mmも拡幅し、タイヤも155/70HR13からフロントが190/55HR340、リヤは220/55VR365と極太サイズに交換され、これをカバーするために大袈裟過ぎるほどのオーバーフェンダーが装着されることになりました。

ホットハッチの豪傑マシンはモンテカルロ、ツール・ド・コルス優勝の偉業

 こうして開発されたルノー5ターボは当然のようにWRCに挑戦を始めました。

 完成した1980年の10月、地元開催となったツール・ド・コルスがデビュー戦となりました。ラニョッティがドライブするワークスカーは、ライバルたちが驚くほどの速さを見せつけましたがエンジン補器類のトラブルでリタイアを喫してしまいました。しかし3カ月後に行われた1981年シーズンの開幕戦、モンテカルロでは見事優勝を飾ることになりました。そしてこれは同時に、ターボエンジン搭載車によるWRC初優勝として歴史に残る快挙となりました。 またこのシーズンはモンテのルノーを筆頭にアウディ、フィアット、ダットサン、ランチア、フォード、タルボットと、全12戦で都合7メイクスが勝ち名乗りを挙げる混戦ぶりでしたが、翌1982年シーズンはアウディが12戦中5勝を挙げ真価を発揮し始めていました。5ターボは第5戦のツール・ド・コルスでラニョッティが優勝を遂げていましたが、ターボパワーがモノ言う時代から4輪駆動圧倒的優位の時代へとシフトしはじめていたのです。 5ターボの市販モデルについては普及版とも言うべき5ターボ2が登場していましたが、WRCにおいても車両規則が変更され、主役がグループ4からグループBに移行したのに合わせてエボリューションモデルとも言うべき5マキシターボが登場しています。 最大の進化はエンジンで排気量を1527ccに拡大(ターボ係数を掛けて2138cc)したC7Kエンジンは350psを絞り出していました。外観からは3対計6灯に強化された補助灯のうち、中央寄りの1対2灯がボンネットと一体化されたフロントビューが5ターボとの大きな違いとなっています。またルーフエンドに装着された大型スポイラーも特徴となっていました。このエボリューションモデルを駆ったエースのラニョッティは85年のツール・ド・コルスで5ターボに3勝目をもたらしています。

 時代に逆らうかのようにミッドエンジンの後輪駆動で頑張っていた5ターボは、2ドアハッチバックのコンパクトなボディに、大袈裟過ぎるほどのブリスターフェンダーとエアロパーツを取り付けた、まるで「チョロQ」のようにも映りますが、愛らしいデザインは評判となり今でも根強い人気を誇る1台となっています。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
レスポンス
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
motorsport.com 日本版
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
AUTOSPORT web
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
くるまのニュース
フェルスタッペン、特化仕様のリヤウイングがなく「2戦を棒に振っている」予算の影響で2022年から”割り切り”
フェルスタッペン、特化仕様のリヤウイングがなく「2戦を棒に振っている」予算の影響で2022年から”割り切り”
motorsport.com 日本版
高性能Aクラスの集大成、メルセデスAMG『A45 S ファイナルエディション』が限定発売
高性能Aクラスの集大成、メルセデスAMG『A45 S ファイナルエディション』が限定発売
レスポンス
「いきなりステージから現れたんだ」エバンス、WRCラリージャパン“一般車両乱入事件”を語る。当該SSは安全確保のため中止に
「いきなりステージから現れたんだ」エバンス、WRCラリージャパン“一般車両乱入事件”を語る。当該SSは安全確保のため中止に
motorsport.com 日本版
ラスベガス予選で50G超大クラッシュのコラピント、決勝前に再度メディカルチェックへ。「彼の体調が何より重要」とウイリアムズ
ラスベガス予選で50G超大クラッシュのコラピント、決勝前に再度メディカルチェックへ。「彼の体調が何より重要」とウイリアムズ
motorsport.com 日本版
スバル新型「プレオ」発表に期待の声! “約100万円”の「コスパ最強」軽セダンは実用性バツグン! スバルらしい「水平対向エンジン×MT搭載」を求める声も!
スバル新型「プレオ」発表に期待の声! “約100万円”の「コスパ最強」軽セダンは実用性バツグン! スバルらしい「水平対向エンジン×MT搭載」を求める声も!
くるまのニュース
BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
レスポンス
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
Auto Messe Web
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
WEB CARTOP
ラリージャパンで競技区間進入の一般車、スタッフの制止振り切り検問突破していたことが明らかに。実行委員会は被害届を提出予定
ラリージャパンで競技区間進入の一般車、スタッフの制止振り切り検問突破していたことが明らかに。実行委員会は被害届を提出予定
motorsport.com 日本版
ラッセル、予想外のポールポジションに歓喜。コースイン遅らせる判断が奏功「フロントロウの自信はあったけどね!」
ラッセル、予想外のポールポジションに歓喜。コースイン遅らせる判断が奏功「フロントロウの自信はあったけどね!」
motorsport.com 日本版
中型トラックの枠を超えた「超過酷仕様」!フォード レンジャー スーパーデューティ、2026年発売へ
中型トラックの枠を超えた「超過酷仕様」!フォード レンジャー スーパーデューティ、2026年発売へ
レスポンス
なんじゃこの「付け髭」感! デザイナーの意思をガン無視した「5マイルバンパー」はアリかナシか?
なんじゃこの「付け髭」感! デザイナーの意思をガン無視した「5マイルバンパー」はアリかナシか?
WEB CARTOP
超イケてる新型ムラーノをデザインのプロが分析! 個性を主張する「デジタルVモーション」の使いすぎには要注意
超イケてる新型ムラーノをデザインのプロが分析! 個性を主張する「デジタルVモーション」の使いすぎには要注意
WEB CARTOP

みんなのコメント

16件
  • こんなのをレギュレーションで求められた台数以上に量産したルノーはやっぱり頭がおか…ユニークなメーカーなんだなって
  • ルノー車にさほど興味は湧かないけど、この5ターボだけは好きだ。発想がイカれてる。元が大衆車ってあたりがいい!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村