マイナーチェンジに合わせてマイルドHV採用
text:Neil Briscoe(ニール・ブリスコー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
スバルはフィンランド北部で開かれたイベントで、マイルドハイブリッドとなるe-ボクサーを搭載した、新しいインプレッサをお披露目した。
基本的に、スバルXVやフォレスターに積まれるe-ボクサーとシステムは共通。ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたものだ。
マイナーチェンジに合わせての導入となり、ヘッドライトやテールライト、バンパー回りのデザインも変更された。欧州仕様には新しい10スポークのアルミホイールも設定される。
運転支援システムなど、安全技術も同時にアップデートを受けている。既存のフロントガラス上部に据えられたアイサイト用のカメラシステムに加えて、低い位置から撮影するカメラがフロントグリル内に追加された。視界の悪い交差点や狭い駐車場などで有効だろう。
スペックシートを見る限り、パワートレインの設定はスバルXVやフォレスターから変更はないようだ。同じ150ps/5600rpmの水平対向4気筒エンジンに、12.3kWの電気モーターの組み合わせ。小さな電気モーターは、エンジンとリニアトロニックCVTの間に挟まれるようにマウントされる。
従来の1.6Lガソリンエンジンを積んだインプレッサと異なり、e-ボクサー・モデルにはパドルシフトが付けられた。CVTだが、擬似的な6速ATのようにドライバーが段数を選択することができる。
スバル車らしく、シンメトリカルAWDと呼ばれる4輪駆動システムを搭載することはいうまでもない。
トヨタと共同でクロスオーバーEVも開発中
スバルのモデルラインナップの中では、3番目のハイブリッド・モデルとなるインプレッサ。欧州市場も諦めないという、日本メーカーの意思表明にも思える。
近年のスバルの主な市場は北米大陸。欧州でのニーズは高くなく、2019年にヨーロッパ全域で販売されたスバル車は3万2299台。だが、さらに環境規制が厳しくなり難しさを増すであろう市場に、今後数年間は留まることを示している。
スバルで欧州の販売とマーケティングを率いるデビッド・デロ・ストリットは、AUTOCARに対しこう述べている。「正直にお話すると、スバルは長年、ラリーでのイメージに依存してきました。しかし欧州では、新しいブランドの方向性を持たせていきます」
「スバルは、欧州市場に留まることを可能にする、新製品を導入する過程にあります。間もなく到来する、厳しい排出ガス規制の荒波を乗り越えられるクルマを準備できると信じています」
スバルは世界戦略として、年間2万tの二酸化炭素排出量削減を掲げている。2050年までに、企業が排出するCO2の90%を減らすことを目指している。その実現には、自動車の出す排気ガスも削減することになる。
「スバルにとって、カーボン・ニュートラル(排出するCO2と吸収するCO2の量が同等)とは目標ではなく、結果として得るものです。ビジネス的センスとして、理にかなった考え方だと思います」
加えてデビッドは、走行している時だけでなく、生産過程も含めたクルマが生涯に排出するCO2の量に、注目する必要があると話していた。現在、バッテリーを搭載したクロスオーバーEVの開発を、トヨタと共同で進めているという。
ラリードライバーによる見事なドリフト
インプレッサ e-ボクサーは、見事なドリフトを披露した。生産前のプロトタイプということで運転できなかったから、助手席からの感想だけれど。
助手席試乗とはいっても、運転するのはフィンランド人のラリードライバー、ヤルコ・ミエティネン。舞台は、サンタクロースの公式の故郷として知られる、フィンランド・ロヴァニエミの森に用意された高速のラリーステージだ。
もちろん圧雪路にスパイクタイヤの組み合わせ。フィンランド生まれのラリードライバーは、本気でインプレッサ e-ボクサーを邁進させる。
ミエティネンはCVTをマニュアルモードに保ち、シフトパドルを積極的に弾く。3速より上にシフトアップすることはなかった。
ややずんぐりしたプロポーションのスバルだが、一定のドリフトアングルを保つのに充分なスロットル・レスポンスが得られている。時々、逆方向にドリフトも決めてくれる。
助手席から見ている限り、インプレッサ e-ボクサーは、1.6Lのガソリンエンジン・モデルよりスロットル・レスポンスに優れているように思えた。スバル車に期待するとおり、ハンドリングもバランスが取れており、応答性も良いようだ。
ただし、これは雪に慣れたラリードライバーがアタックした時の場合。より落ち着いた環境で、経済性を気にして運転した印象を確かめるには、しばらく待つ必要がある。
英国仕様の右ハンドル車の生産は3月に開始される予定。その数カ月後には、インプレッサ e-ボクサーがわれわれの手元に届くだろう。
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