ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、プレミアムSUV「レンジローバー・ヴェラール」の2021年モデルを発表した。そのなかの注目は、マイルドハイブリッドシステムを採用した最新の2Lディーゼルエンジン(204ps/430Nm)を導入であろう。
逆風が吹くディーゼルエンジンだが、生き残るためにはハイブリッドシステムを搭載することは、必要不可欠になると考えられる。
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そんなディーゼルに注力しているマツダも、排ガス規制の関係で北米でのディーゼルの販売を中止するなど、追い込まれてきている。SKYACTIV-Xにマイルドハイブリッドを搭載しているが、大きく燃費に貢献はしていない。
しかし、今後ディーゼルを引き続きやっていくならば、省燃費性能に貢献するマイルドハイブリッドを搭載しなければならないだろう。ランドローバーのケースをチェックしつつ、マツダはどういったかじ取りをするのか? マツダのこれからの戦略について考察していきたい。
文/桃田健史
写真/Land Rover、編集部
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■レンジローバーから続々と電動化モデルが登場
ディーゼルエンジンをマイルドハイブリッド化する動きが出てきた。
英国ランドローバー・ジャパンは、『レンジローバー・イヴォーグ』に続き、『レンジローバー・ヴェラール』でも2Lディーゼル・マイルドハイブリッド(最大出力204ps/最大トルク430Nm)を2021年モデルとして日本に導入する。
レンジローバーではディーゼルだけではなく、ガソリン車でもレンジローバースポーツでマイルドハイブリッドを欧州で先行発売してきた。さらには、PHEV(ブラグインハイブリッド車)のラインアップの拡充が進む。
こうした電動化の強化は、ランドローバーが2017年に発表した、2020年までに全モデル電動化という事業戦略に沿った動きだ。
2021年式『レンジローバー・ヴェラール』の採用パワートレーンは2種あり、ディーゼルマイルドHV搭載のモデルと、純ガソリンエンジン搭載モデルがある
欧州では、欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が欧州グリーンディール政策のもとで厳しいCO2排出量規制を打ち出している。
2010年代前半には、2010年代後半での95g/kmという規制値がほぼ固まっており、その段階で欧州メーカーの多くが電動化戦略に対する大きな決断を迫られていた。
筆者は欧州各地で開催される、自動車向け大型電池など電動化に関する国際会議を定常的に取材している。その中で、ランドローバーやジャガーなどの英国勢や、フォルクスワーゲングループ・ダイムラー・BMWのジャーマン3、そしてフランスのPSA(現在はステランティス)やルノーなど、欧州メーカー各社や自動車部品大手の関係者と意見交換してきた。
そのなかで「まずは48Vマイルドハイブリッド化を進める」という声が多かった。そのため、直近でのランドローバーにおけるガソリンとディーゼルでのマイルドハイブリッド量産は十分に理解できる動きである。
さらに言えば、2010年代後半になり、企業に対する投資の視点からEV(電気自動車)化に対する大きなトレンドが押し寄せており、2010年代前半までの「まずはマイルドハイブリッドを投入し、それと並行してPHEVも徐々に増やす」といった段階的な電動化戦略を一気に見直すメーカーも出てきた。代表的な事例が、2021年2月に入り、2030年までの全モデルEV化を宣言した、スウェーデンのボルボがある。
■ディーゼルが強みのマツダはどうする!?
では、マツダはこれからディーゼルエンジンをどう育てていくのだろうか?
近年の、日本を含めた世界各地でのマツダ急成長の経緯を振り返ってみると、その原点はマツダが第五世代と呼ぶ2012年登場の初代CX-5からのSKYACTIV戦略にある。周知のとおり、内燃機関の燃焼について、新たなる理論の上に独自の技術を量産したものだ。
最大の特長は、排気ガス浄化に対する補機類の少なさにある。特にSKYACTIV-Dではその効果は大きく、当時ディーゼルエンジンのシェアが高かった欧州市場では、欧州メーカーがマツダを今後の脅威として捉えていた。
マツダのディーゼル48V-MHEVといえば2018年、「既存に対し20%の燃費向上が見込める」と公表していた。現在はどうなっているだろうか
ところが、前述のように欧州での電動化に対する法規制の強化が2010年代から2020年代に向けて一気に進み、各国でのディーゼル車比率の低下傾向が顕著となるなか、マツダの立場も変わり、マツダとして次の一手が必要となってきた。
そうした中で、満を持して導入したのがSKYACTIV-Xだ。筆者はドイツのマツダ開発拠点で開催された、SKYACTIV-Xの報道陣向け世界試乗会に参加し、プロトタイプをアウトバーンで走行させ、”ミスターSKYACTIV”である人見光夫氏(現:シニアイノベーションフェロー)から新たなるSKYACTIVにかける熱い想いを聞いた。
SKYACTIV-Xは、超希薄な状態で理想的な燃料を実現する技術であり、そのためには事実上のスーパーチャージャーであるクランク軸から動力を得るエアコンプレッサーを装着している。それでも、低回転域でのトルクが不足するために、マイルドハイブリッドのように電動モーターも装着するという、マツダならではの特殊なレイアウトとなっている。
販売面で見ると、欧州の一部では税制優遇措置などの効果もあり、『CX-30』などでSKYACTIV-Xの需要は高い。一方で、日本ではSKYACTIV-GやSKYACTIV-Dとの価格差から、SKYACTIV-Xの売上が伸び悩んでいる。
SKYACTIV-Xは、大量EGRによるストイキ燃焼と低負荷時リーン燃焼を組み合わせた省燃費エンジンだ。最近は「e-SKYACTIV-X」として24VマイルドHV化した仕様が『CX-30』などに追加された
さらに直近では、日本でも政府主導の2050年カーボンニュートラルの動きが活発化し、菅義偉首相が2021年通常国会の施政方針演説のなかで「2035年までに、軽自動車を含めた100%電動化」を表明した。
こうなると、マツダとしても電動化戦略の変更が必須となる。
この点についてマツダの丸本明社長は「国や地域による、電力の供給状況に応じた電動化を進めるが、市場の変化を考慮して動きを早める」と説明してきた。アメリカでは導入から2年を前にCX-5のディーゼルモデルの販売を終了する。
EVについてはMX-30を2020年夏から欧州で先行発売し、日本ではマイルドハイブリッド、そして2021年1月からEVモデルを発売した。となれば、SKYACTIV-Dについても動きはあるのだろうか?
この点について、2020年12月にマツダR&Dセンター横浜(横浜市神奈川区)で実施されたCX-5商品改良の報道陣向け試乗会で、筆者としてe-SKYACTIV-Dの可能性を感じた。
同市場では、SKYACTIV-XとSKYACTIV-Dを市街地と首都高速での同じルートで走り比べたが、サスペンションの改良やGベクタリングコントロールプラスなど、走りの制御の進化を実感した。
それと同時に、SKYACTIV-Xによる、電動モーターアシストの効果を再確認し、「SKYACTIV-Dはマイルドハイブリッド化することで、走りの魅力がさらに深まる」ことも改めてわかった。
試乗後、広島本社のエンジン開発担当者とオンラインで意見交換した際、e-SKYACTIV-D実現の可能性について聞いた。
これに対しては「ディーゼルでも2000rpm以下の回転域ではモーターアシフトが有効であることは十分承知している。課題は、やはりコストだ」と指摘した。
SKYACTIV-Xと比較すると難しいところだが、基本的にディーゼルエンジンはガソリンエンジンより部品が高価になる傾向にある。ディーゼルHVでガソリンHVとのコスト差を超える魅力を創出できるかどうかが勝負か
マツダは2022年にも、マツダがラージ商品群と呼ぶ『マツダ6』や『CX-5』向けのプラットフォームをFR化する。その中で縦置きガソリンPHEVの量産化が決まっている。そうなると、e-SKYACTIV-Dは『マツダ3』や『CX-30』などスモール商品群での適合を考えることになるのだろうか?
いずれにしても、マツダとしては当面は現行SKYACTIV-Dの改良を進めながら、ディーゼル電動化への道筋をどこかの最終決断することになる。
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