ダブル連結トラック100両編成を目指すセンコー
センコーでは、自社で行うダブル連結トラックの運行を、現行の8編成から、2030年には100編成まで増やすことを目指している。100編成体制を達成すれば、年間で約16万6000時間・約59名分のドライバー省人化を実現するという。数あるドライバー不足対策のなかでも、効果が大きく、即効性も高い対策といえよう。さらに、二酸化炭素排出量は年間約6600t抑制可能であり、グリーン物流の実現にも大きく貢献できる。
【画像】これがダブル連結トラックの「パフォーマンス」だ!(16枚)
センコー 常務理事・殿村英彦氏は、ダブル連結トラック運行時の課題について、
「通行許可等の申請にかかる手間」
を挙げる。前編の記事「物流危機の今、なぜ「ダブル連結トラック」が注目されるのか? “2台分輸送可能”だけじゃないその実力、しかし「駐車場不足」という大問題も」(2024年6月6日配信)でも説明したとおり、そもそもダブル連結トラックの運行には、さまざまな条件が課されている。主として六つある条件をクリアし、ダブル連結トラック運行の申請を行った後に待っているのは、道路の通行許可手続きである。
ダブル連結トラックに限った話ではないが、一定の大きさや重さを超える車両は、道路法 車両制限令に基づき、あらかじめ道路管理者の通行許可または通行確認が必要となる。特殊車両通行制度に基づく通行許可の申請手続きについては、いわゆる“お役所仕事”の典型であり、その手間には、多くの運送事業者が閉口させられてきた。
政府も「物流革新に向けた政策パッケージ」(2023年6月発表)において、「特殊車両通行制度に関する見直し・利便性向上」を施策として挙げているものの、ことドライバー不足対策の切り札たるダブル連結トラックの運行時にさえ、いまだに通行許可の取得に苦労させられているのだ。
運行ノウハウが必要なダブル連結トラック
ドライバーの育成はどうなのか。
「センコーでは、滋賀県内に大型自動車免許の指定教習所を所有していますので、ダブル連結トラックの運行に必要な教習も自社で行っています」(殿村氏)
ダブル連結トラックの運行は、車両を購入すればそれで運行開始できるというものではない。通行許可申請、ドライバーの育成に加え、ダブル連結トラックの運用に適した物流センター・営業所も必要となる。
また、ダブル連結トラックについては、車両整備のノウハウも、従来のトラックとは少し変わってくる。前編で紹介したネクスト・ロジスティクス・ジャパン(NLJ、東京都新宿区)では、トラクタ(けん引する側の車両)とトレーラー(けん引される側の車両)をつなぐドリーの連結部分(ピントルフック)の摩耗について、独自の安全基準を持っているという。
こういった事情を鑑みれば、国内運送会社の大多数を占める中小運送会社が、ダブル連結トラックの運行を行うのは、相当難しい。国内の運送会社は、従業員数20人以下の中小企業が71.4%を占め、逆に従業員数が1000人を超える大企業は、6万3000社強の運送会社のうち、72社しかないのである。
架装バリエーションの拡大でさらに可能性が広がるも、障壁はやはり規制
2024年5月、パシフィコ横浜で開催されたジャパントラックショーにおいて、ひときわ注目を集めていた展示車両があった。ダブル連結トラックの架装を手掛ける日本トレクス(愛知県豊川市)が展示した、冷凍ダブル連結トラックである。
これは、冷凍機能を持つスワップボディの積載を可能としたトラクタと、冷凍トレーラーを組み合わせたダブル連結トラックである。冷凍冷蔵のダブル連結トラック運行事例がまだ少ない上、トラクタがスワップボディという点が、実に意欲的だ。
スワップボディは、アウトリガーによってコンテナ部分を自立させることで、トラックのボディと分離・独立した運用を可能とする。トレーラーと違い、けん引免許が不要であることもあり、大手を中心に多くの運送会社で導入が進んでいる。
「けん引免許不要」のメリットについては、ダブル連結トラックの場合、いずれにせよけん引免許が必要なので関係はないのだが。ダブル連結トラックとスワップボディの組み合わせにおいて、メリットがあるのは、
「分離・独立した運用を可能とする」
点である。ダブル連結トラックは、大型トラック2台相当の貨物輸送を可能とするが、積み卸しに時間を要しては、ダブル連結トラックが持つアドバンテージに水を差してしまう。その点、スワップボディは5分程度で車両との切り離しができる上、荷役をトラック運行と分離できる(トラックからスワップボディ部分を切り離し、トラックを待機させることなく、貨物の積み卸しができる)。
こういったメリットから、とても意欲的かつ高い物流改善効果が見込める車両(架装)なのだが、
「実はこのスワップボディを組み合わせた冷凍ダブル連結トラックは、まだ日本で走ることができません」(日本トレクス 経営企画部 経営企画課 係長 南義明氏)
のだそうだ。理由は明確だ。
「規制」
である。
「ダブル連結トラックには、『車両はトラクタ(けん引する側の車両)、トレーラー(けん引される側の車両)とも、バン型であること』という規制があります。スワップボディはバン型ではないため、このクルマは走れません」(南氏)
物流クライシス対策に対するアイデアはあっても、規制があって実用化できない。なんとももったいない話である。
「ダブル連結トラックを手積みする」というとんでもない誤解からの学び
以前、筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)がダブル連結トラックをテーマにした記事を書いたたところ、ドライバーから「ダブル連結トラックなんてとんでもない」というコメントがあった。いわく、
「大型2台分の手積み・手卸しをさせられるドライバーの苦労を顧みない、とんでもないクルマだ」
というのだ。「ダブル連結トラックを手積み・手卸しする」という発想は愚かだ。この発想は、現在の物流クライシスを生み出した運送業界の悪習を踏襲するものだからだ。
・手積み/手卸し
・長時間の待機時間
・あるいは、トラック輸送における積載効率が約38%しかないという事実
こういった悪習を改善することなく、ただ単にダブル連結トラックを、「ひとりで2倍の荷物を運べるトラック」と考えるのであれば、宝の持ち腐れというものだ。
NLJでは、積載効率を向上させるために、さまざまな荷主の、さまざまな貨物を組み合わせて共同輸送している。積載効率を向上させるために、NLJのもとでは多くの荷主や物流事業者が集い、日々知恵を出し合っている。
そもそも、ダブル連結トラックは、例外はあれど、基本的に発地から着地までの輸送を一貫して担えない。ダブル連結トラックが走ることができるのは、
・あらかじめ許可された高速道路
・中継センターをつなぐ一般道
だけであり、発地から中継センター、あるいは中継センターから着地までの間は、別のトラックで運ぶ必要がある。
荷物の積み卸しをともなう中継輸送を別のトラックが担うとなると、どうしても余計な輸送コストが発生する。だからこそ、真の生産性向上であり、真の物流クライシス対策を成すためには、共同配送による積載効率の向上など、知恵とアイデアを絞る必要があるのだ。どんなに便利であったとしても、道具はしょせん道具でしかない。それを有効に活用するもしないも、人次第だ。
ダブル連結トラックの運行には制約もあるが、今後確実に普及していくだろう。その普及が、旧来の運送ビジネスにおける悪習を踏襲することなく、本質的な業務改善・ビジネス変革へとつながっていることを期待したい。
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みんなのコメント
手積みさせたいのは荷主だよ。