トヨタ ヴォクシー ハイブリッド 「よりアグレッシブなスタイルの容積型ミニバン」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

よりアグレッシブなスタイルの容積型ミニバン

2022.11.28

年式

2022年1月〜モデル

総評

ユーザーが求める性能を全方位で高めながら、とりわけ従来型の弱点だった走行性能をグッと向上させたことで競合他車にとって驚異の存在になった。とりわけ先進安全技術を日常走行にも活用するPDAは秀逸だ。ノアにも装着されるこの装備は、先進安全技術のセンサーからの判断を受け、危険に近づく前からゆっくり減速したり、ステアリング制御を行なったりする。事故を未然に防ぐから一歩進み、危険から遠ざかるための先進安全技術として、この先の普及が見込まれる。

満足している点

ノアと全く同じで、総合性能がとても高いことが最大にして最良ポイントだ。燃費数値は装備違いから若干落ちてハイブリッドで最大23.0km/L、ガソリンで15.0km/Lだが、実際の道路環境で測定する実用燃費数値には変りがないといって良い。ファミリーユースで使う分には動力性能で不足する点はなく、またパーソナルユースで使ったとしても高速道路含めて動力性能に不満はない。ミニバンとして考えられる性能をすべて詰め込んだ、そんな商品特性だ。

不満な点

ガソリンモデルと同じ見解だが、この顔付きがミニバンにとって必要なのかという点には大いに疑問が残る。人に優しい、環境にも優しいと謳いながら、ことデザインに関しては好みの問題であるからと、見る人にとってここまで激しい印象を抱かせるデザインは、筆者として少し行き過ぎているように感ずる。もっとも、すべてにおいて優等生だが、せめて見た目だけでも個性的なところを主張したいという声もあることから、長年にわたり順調なセールスを記録している事実もある。評価はなかなか難しい。

デザイン

2

ノアと兄弟関係にあるが、エクステリアデザインでは各部に違いが設けられた。顔付きではノアよりも力強さを全面に打ち出しつつ、リヤデザインも横一文字のLED処理でパーソナル感を演出する。基本的な骨格やボディサイズはノアと同じながら、イメージカラーの違いもあって、両車を実車で比較するとかなり印象が異なる。従来型ではノア／ヴォクシーに加えてエスクァイアの3兄弟だった。新型では事実上、ヴォクシーにエスクァイアが吸収される格好になった。

走行性能

3

ノアのハイブリッドモデルとまったく同じ走行性能だ。個人的にはパーソナル感が強くなったと感じることから、2.0Lガソリンモデルよりもハイブリッドモデルのほうが動力性能にゆとりがあることから向いていると思う。正式な調査結果ではないが、販売店のセールスマンによるとヴォクシーは一人ないし二人での乗車がノアよりも多いといい、その意味で、個性的なデザインにマッチし全域で力強いハイブリッドモデルがヴォクシーには似合う。少し図太いエンジン透過音もイメージ通りだ。

乗り心地

3

ノアのハイブリッドモデルと乗り心地に関しても同一だ。ガソリンモデルに対して装着タイヤの違いにより操舵フィールが多少異なるものの、それでも基本は乗り心地を重視した特性。2列目シート、3列目シートともに快適で、従来型が苦手としていたサスペンションに大きな入力が入った際のいなし具合を改善し、乗り味が向上した。従来型も着座位置が適正で正しい運転姿勢が取りやすかったが、新型ではさらに死角が減り、メーター周りの視認性も高められた。ストレスのない運転環境だ。

積載性

4

こちらもノアと全く同じ。積載性能でまったく不足はない。高さのある荷物であっても、フロアのデッキボードを持ちあげて3列目シートに固定すれば、ラクラク収納できる。1列目だけでなく、2列目や3列目シート周りの収納能力も高く、細々したところにも気配りがなされた。USB電源もしっかり確保されている。車体後部の左右に設けられたバックドアスイッチを使いこなせば、ゲートの小さなハッチバックモデルのような気軽さで荷物の出し入れができる。

燃費

4

新型のハイブリッドシステムとなって全域でパワフルになった。それだでなく、運転操作に対して、これまで以上に素直な反応を示してくれるので、運転していてストレスがない。とはいえ、腰高のミニバンであることは変わりなく、TNGAの概念を採り入れたGA-Cプラットフォームの恩恵を最大限受けながらも、「無理」や「急」のつく運転操作は受け付けない。あくまでも容積型ミニバンとしてスマートに走らせるために作られたモデルだ。

価格

3

このクラスのミニバンは装備内容で細かく価格分類されていることが多いが、ヴォクシーの場合はエアログレードに絞られていることから、他車と比較してわかりやすい。おすすめは中間グレードである「S-G」で、予算がゆるすなら4WDのほうが乗り心地面で有利になるためおすすめしたい。先進安全技術も充実しており、トヨタチームメートのうちアドバンストドライブをオプションで装備すると、40km/hまでの渋滞時に限ってハンドルから手を放すハンズオフ走行が一定の条件下で可能になる。