トヨタ MR-S 「2005年式MR-S Sエディション感想文」のユーザーレビュー

ノイマイヤー ノイマイヤーさん

トヨタ MR-S

グレード:MR-S“Sエディション”(MT_1.8) 2005年式

乗車形式:試乗

評価

4

走行性能
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乗り心地
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燃費
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デザイン
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積載性
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価格
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2005年式MR-S Sエディション感想文

2019.8.25

総評
以前一緒に働いていた会社の同僚が急に「MTに乗りたくなった」と中古車を探していたのだが、仕事関係のコネクションを経由してトヨタ最後のミッドシップランナバウトであるMR-Sを購入したという。



MR-Sは1999年にデビューしたMR2の後継モデルである。1984年に発売された初代MR2はFFカローラのエンジン・駆動系を反転させ、北米のセクレタリーカー市場を意識しつつ日本発のミッドシップを実現。1989年発売の2代目MR2はバブル期のノリも手伝ってセリカ譲りのターボエンジンを搭載して本格的なパワーを手に入れた。初期モデルはシャシーの煮詰め不足とも言われたが、その後のモデルライフで大切に育てられて完成の域に達した。

大切に育てられた10年の間、トヨタは次期モデルを模索する中でユーノス・ロードスターに端を発する小型オープンカー市場に注目。2代目が本格スポーツを志向して多くのターゲットを狭めてしまった事に注目し、速く走る事以上に純粋に運転を楽しむ為の「ラナバウト」に徹する事にした。

MR-Sはオープンボディにしただけではなく、ミッドシップとしては異例のロングホイールベースに
極端なショートオーバーハングを組み合わせた独特のパッケージングを採用。1995年にはすでにロングホイールベースかつオープンボディのMRJというコンセプトカーがお披露目されていたが、その後も当時のスクープ雑誌でMR2のロングホイールベース版の試作車がスクープされ、「4人乗りのMR4を開発か?」と囁かれていた。



その結果ともいえるMR-Sは華美を廃して徹底的な軽量化を推進した。全グレードで1000kgを下回るというのは本当に偉業とも言える成果だ。単にルーフが無いから簡単に軽量化できるわけではなく、当時すでに厳しかった衝突安全性能もしっかり満たした上で軽くしなければならないのだから簡単では無かっただろう。

全長のほとんどがホイールベースだが、Frピラーを前出し。オーバーハングは完全に削り取られて意匠代が皆無の押し出し成型部品のような断面が一様な独特なプロポーションだ。官能的な曲線などは皆無で機能に徹してスタイリングされていない素朴なスポーツカーになった。(見て楽しむ要素が他の競合車と較べて控えめなのは否めない)



しかし、MR-Sは若者にも手が届く現実的な200万前後の価格で売られていた。例えば内外装のチープさも認められるが、この低価格を前にすると即刻黙らねばならない。

そんなMR-Sを買った元同僚から、「是非ノイマイヤー君に乗って欲しい」と逆オファーを受け、ある夏の暑い日に(おっさん)二人で高原ドライブに出かけた。




多くのミッドシップ車が魅力を磨く為にホイールベースを短くし、刺激的なエンジンを搭載してきたのにMR-Sはセオリーに逆張りするかのごとくホイールベースを延長。「死の薫り」から遠ざかりながら車を操る楽しさが味わえる。ミッドシップでありながらマイルドなキャラクターを与えられてスポーツカーに乗るハードルを明確に下げたと思う。もっと速く走れたり、腕の揮い甲斐のある車は山ほどある。それでもMR-Sは明らかにビギナー向けを狙っているし、現代のどぎつく思いエアロやガチガチの足回りのスポーツモデルよりも
自然体で車を運転する楽しさが味わえると思うのだ。



今、中古車でMR-Sを探すと、状態が良いものは新車価格に近い価格で売られている。モデルは廃止から12年が過ぎた今なお、高い商品性を保ち続けている。同僚は自身のツテで20万km越えといえど格安でMR-Sを入手しており、「良い買い物をしたと思うよ」と本人に伝えた。



今回試乗したMR-Sは20万kmを超えていたが、前オーナーの手によってナビが着けられ、自動防眩ミラーが取り付けられ、いかにMR-Sが可愛がられていたかが窺い知れる。現オーナーたる元同僚は、元々走り屋でもカーマニアでもない普通の人(アウトバック、プリウスを乗り継いだ)だが、MR-Sが大層気に入ったらしく、割れていたエアロをタイラップで修復し、白内障のヘッドライトを程度の良い中古品に交換し、破損していたドアトリムをメルカリで入手しこれからも修復とモディファイを楽しむようだ。



MR-Sが新車で売られていた当時、「ミッドシップはショートホイールベースであるべき」「ドライバーと前輪とエンジンをなるべく近づけるべき」
という理屈からかけ離れたMR-Sを否定的に見ていた。しかし、実際に運転してみてMR-Sが目指すスポーツカー像が理解できた。

競合に対して販売的に成功しなかったのは、パッと見て独特なプロポーション、官能的とは言いがたいスタイリング、スペック的に平凡な実用エンジンなどを挙げる事は簡単かも知れないが、MR-SにはMR-Sにしか無い質実剛健な個性を強く感じた。良くも悪くも実用的なクルマを数多く生み出していたトヨタらしいスポーツカーだった。

半日思いっきりMR-Sを運転した私は、MR-Sは優秀なMPVであると結論付けようと思う。無論マルチパーパスな使い方は不可能だが、「運転を楽しむ、という唯一つの目的の為に生まれた車」すなわちモノ・パーパス・ヴィークルという意味ならMR-Sは優秀なMPVだ。

オーナーは通勤の為にMR-Sを購入し、毎日の通勤に使っている。トヨタならではの品質と、スポーツカーの割りに扱い易い性能に適度なコンフォート性とスポーツカーとしては十分な実用性を兼ね備えたMR-Sは見方を変えれば最強の通勤車とも言えそうだ。

*乗車形式がディーラー試乗になってるのは誤りですが、編集できない為このままとします。
満足している点
1.Rr駆動のトラクションのよさ
2.十分素直で楽しいステアリングフィール
3.ロングホイールベースゆえ快適性が高い
4.幌の格納の簡単さ
5.20万km走っても走りはそこそこな耐久性

ランナバウト―走る為の車なので、走る事に関して私は大いに満足した。
不満な点
1.ドアミラー形状ゆえ、顔に風が当たる
2.MR2で味わえた死の薫りは影を潜めた
3.価格競争力の為のチープな内装
4.真四角のスタイリングは情感には訴えない
5.後継モデルが無いこと

オープンだから風と戯れたいだろう、とばかり導風板のようにドアミラーが風をキャビンに送ろうとするのはお節介と感じた。スポーツカーらしい官能的なスタイリングは見られず、目で楽しむ要素が小さいのは少々残念だがキャラは立っている。最も不満なのは3台続いたMR車の歴史が止まっている点だ。スープラ復活も素晴らしいが、##W40が見たい。
デザイン

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走行性能

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炎天下の市街地走行で試乗をスタートさせたのだが、明らかにガスが抜け気味のA/CはMAX稼動しているが残念ながら涼しく無い。そんなことは気にせずに低いところに着座し、手足を投げ出すようなドラポジで走り始めた。



Frピラーが前方にあるため、前寄りのドラポジをとっても圧迫感を感じにくく私にとって快適だったのは意外だった。

1速でクラッチを繋いだ瞬間から現代のスポーツカーが手放した「素直さ」「ダイレクト感」がひしひしと伝わってくる。



エンジンはカローラやビスタ、RAV4など数多くのトヨタ車に採用された汎用エンジン1ZZ-FEを搭載。140ps/6400rpm、17.4kgm/4400rpmという平凡なスペックだが、980kgの軽量さゆえに、不満は全く無い。街中の運転もリズミカルにシフトアップして走れるので、エンジン回転を上げないのんびりとした運転も許容してくれる。しかし、青信号で対向車が居ない交差点を曲がる際、クイックなステアリングが手首の返しだけでクルマの向きを変え、ロールさえも感じさせずにそのまま交差点を旋回、そこにスポーツカーを感じた。

次に高速道路に流入する。実用エンジンなので美味しい回転数は4000rpm近傍。ローギアードな6速MTを駆使して加速車線から本線へ。100km/hの回転数はざっくり3000rpm程度。オーナー曰く6速はもっとハイギアードで良いとのことだが、騒がしさをさほど感じないのはRrエンジンのメリットかもしれない。ロングホイールベースが幸いしてはな橋の継ぎ目もイライラしないし、足回りのセッティングも走り一辺倒ではなくコンフォータブルな好印象だ。

オーナーと何気ない会話をしながら郊外のワインディングに辿り着いた。即座に山間のワインディングでMR-Sの実力を解放した。2速-3速-4速を活用してコーナー手前でシフトダウンし、クイックなステアリングで向きを変え、立ち上がりでは強めにスロットルを開けてMRの強力なトラクションを背中で楽しみ、早めにシフトアップして直線路では飛ばし過ぎないように走った。クローズ状態でせっせと走らせたがタイヤからスキール音を出さなくても十分ドーパミンを出すことが出来た。



高原の湖畔で幌を全開にした。MR-Sの幌はトヨタらしく几帳面にZ折れして簡単操作で綺麗に格納できるだけでなく、室内側の面が車外側に露出して汚損しないというメリットもある。また、幌には熱線ガラスが装備され、ビニール窓に対しては圧倒的なアドバンテージだ。このような点にトヨタの品質が輝いている。

これは全てのオープンカーにも共通して言える事だが、オープンの開放感が本当に気持ちいい。フルオープンにするだけで運転する楽しさが3倍くらいは上がる。それに従い、私と助手席のオーナーの口角が上がり、目じりが下がってくる。つまり、フルオープンで木漏れ日を浴びながら森の中の狭いワインディングを流すことで、気分爽快のセラピー効果が期待できるのだ。やはりオープンカーは屋根を開けた方が良い。



そのまま下りの峠道をそこそこのペースで走った。減速旋回加速の操作一つ一つが気持ちよく決まる。コーナリングの応答性はオープンボディゆえに曖昧に感じる瞬間も有ったが、爽快感がネガを打ち消してくれる。幾重にも連なるヘアピンに差し掛かるたび前輪から微かなスキール音を奏でながらコーナーをクリア。グイッと加速するが、後輪は絶対的なグリップで破綻させまいと踏ん張っている。

あまりの楽しさに、ある程度下りきったところでUターンして「おかわり」をしてしまった。

上り坂であってもMR-Sは十分なトルクで再びヘアピンが続くワインディングへ向かった。風や音、或いは前後左右の加速度を肌で感じながら両手両足を駆使して思い通りの走りをさせていく。自身の身体感覚が拡張されたかのような感覚は、オープンボディやダイレクト感溢れる乗り味の賜物だ。アドレナリンによってさらに感覚が研ぎ澄まされ、ステアリングを握る手に力が入った。

珍しく走りに熱が入り、その熱で前輪が熱ダレしてきたのか操舵の手応えが少々ダルになってきた。路面が濡れたヘアピンコーナーで前輪が滑り、姿勢が崩れかけたことがあった。なだめすかして何とか曲がりきり、コーナー出口でアクセルを開けたら今度はウエット路面で後輪が滑り出して肝を冷やしたのだが、コーナー手前の十分な減速が幸いして落ち着いて車を曲げ、少しのステアリング修正で切り抜ける事ができた。私レベルでも立て直せたので大変ありがたいセッティングと言わざるを得ない。

これが、ギュンギュン系ミッドシップだったなら、高い性能のその先を知ろうとし過ぎて一瞬にしてコーナリングの魔術師からコーナリングの道化師になり、購いの日々を送って居ただろう。やり過ぎないMR-Sに救われたワンシーンだった。

アツい走りを終えて高原から市街地へ下山した。前方を走る複数の地元車がMR-Sがルームミラーに映るやいなや道を譲られる。

決して煽り運転をしたわけでもないのに、見た目がスポーツカーなので譲られて申し訳ない気持ちになりながら走った。

今日走った同じ道をFRのマツダロードスターで走ると楽しいだろう。でも本当は屋根さえ開ければFFのダイハツコペンでもサイノスコンバーチブルでも楽しいだろう。その中でもMR-Sは快適な実用エンジンの余裕あるトルクをRrエンジンゆえの絶大なトラクションを発揮して大地を蹴り、鼻先の軽さを感じながらコーナーをクリアできる、そんなクルマだ。例えばデザインやインテリアの質感に不満点を感じる人は居るかも知れないが、走ることにかけてMR-Sのヴァリューフォーマネーは一級品だ。
乗り心地

-

MR-Sの隠れた開発テーマは乗り心地の改善だという。元来ミッドシップはその特徴を活かす為にショートホイールベースに仕立てることから、乗り心地は絶えず揺すられるようなピッチングに見舞われるはずである。ところがMR-Sはホイールベースが長い。運転してみると意外なほど乗り心地が良い事に気づいた。この乗り心地のよさは限界域の速さよりも普段使いの快適性を大いに引き上げており、毎日の通勤や子供の送迎くらいなら十分対応でき、ロングツーリングも苦にならず、結果的に楽しい時間が長続きするようになっている。

スポーツカーは若者よりも中高年に売れる種類のクルマだ。そうなると、MR2よりも良好な乗り心地は喜ばれそうだ
積載性

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従来のMR2に存在したトランクルームを廃止してRrオーバーハングを切り詰めた。一方、ロングホイールベースのため、運転席後ろに出来た空間を活用してラゲッジスペースが用意されている。

驚くべき点はゴルフバッグが搭載できることだ。ミッドシップのオープンカーでゴルフに行く人がどれくらい居るのか不明だがゴルフバッグが載せられるというのは大きなセリングポイントなのは事実。私たちもお互いの通勤鞄を押し込んだ。ちょっとしたボストンバッグなら収容できるので
二人で旅行にだって出かけられる。

収納はこの他、カウル前の空間にはフロントボックス(そのまんま!)も装備されてちょっとしたものは収納できるようになっている。
燃費

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価格

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故障経験

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