トヨタ GRカローラ 「公道に舞い降りた競技車両」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

公道に舞い降りた競技車両

2023.5.22

年式

2022年10月〜モデル

総評

トヨタが少量生産のファクトリーで野性味あふれるカローラを製造。ボディはカーボンも使用、エンジンは300psオーバーの手組みで、速さを求めた4WDシステムも搭載。お値段500万円超え。さらに上のバージョンとして、約200万円アップで社長の名前を冠した足とトランスミッションが別物のスペシャルな仕様も用意。……なんて概要を「トヨタがこんなクルマを出した」と10年前のクルマ好きに話しても、おそらく誰も信じてくれないでしょう。逆に言えば、そのくらい凄いクルマだってことです。

満足している点

鍛え上げられた走行性能。ワイルドなスタイリング。そして漲る特別感。太い排気音からして、まるでチューニングカーや競技車両のようです。好きな人にとってはたまりませんね。

不満な点

特にありません。GRカローラは万人受けではなくターゲットを絞ったクルマであり、そのターゲットの求めに対してどれだけ忠実かが大切。そう考えると、強いて不満を上げるとすれば「値段が高くてなかなか手が出ない」と「販売台数が少ないので手に入らない」ということくらいでは？

デザイン

4

大きく穴の開いたバンパーなど、見るからに戦闘的な雰囲気。さらに、力強く張り出したフェンダーもたまりませんね。美しさを自慢するようなスマートなデザインではありませんが、かつてチューニングカーに慣れ親しんでいたようなクルマ好きにとっては漂う野性味がたまりません。

走行性能

5

はっきり言います………文句の付け所はありません！　ガツンと加速して、シャープに切り込んでグイグイ曲がって、安定感も抜群で、ブレーキの安定感も素晴らしい。動的な質感も絶対的な速さも見事です。で、そこに輪をかけてすばらしいのが「モリゾウエディション」。車両価格は200万円弱アップしますが、より俊敏に走れるなど明らかに“もっと上”の実力で、違いの分かるドライバーであれば「この価格差もしょうがないかな」になるはず。

乗り心地

3

はっきりいって足回りは硬いです。ただし、乗り心地が不快かと言えばそうではないのだから素敵。路面の段差からの衝撃はしっかりいなすし、揺れの収まりもいい（いつまでも揺れが残らない）から納得できます。ちなみに……ノーマルよりも「モリゾウエディション」のほうが乗り心地はいいです。理由は、ダンパーの精度が高くてフリクションが少ないからでしょう。路面の細かい凹凸の吸収性に優れますね。あと…余談ですが、標準仕様とモリゾウエディションはシートが違う（骨格からして異なり後者のほうがより深いバケット形状）ほか、ドアトリムの仕立ても違います。標準がソフトパッド張りに対して、モリゾウはハードプラです。

積載性

4

普通のカローラスポーツと変わりません。輸入車でいえば「ゴルフ」、国産車では「インプレッサ」と同程度と考えておけばいいでしょう。「モリゾウエディション」ならむしろ、リヤシートがない分だけ積載量は増えていますね。

燃費

3

今どきのクルマとしては優れた燃費とは言えませんが、300psを超えるハイパフォーマンスカーだと思えば十分に納得。

価格

2

標準モデルは525万円、モリゾウエディションは715万円。決して安くはありません。だけど、カーボンを組み合わせた専用ボディに回転系バランス取りと同等の手法を経た手組みの高性能エンジンや、専用の4WDシステムを組み込んだスペシャルなクルマだと思えば納得できる範囲。多くの人を対象としたモデルではないので、その価格と内容に納得できる人のみ「手に入れる資格」があるといっていいのではと思います。問題は、現時点では手に入らないことでしょうか。モリゾウエディションは70台の限定台数を売り切ったし、標準仕様も現時点では受注停止中（こちらは生産体制が整い次第再開見込み）です。