トヨタ 86 「スバルとの協業第一弾のスポーツカー」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

4

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
3
積載性
3
燃費
2
価格
4

スバルとの協業第一弾のスポーツカー

2022.12.21

年式
2012年4月〜モデル
総評
筆者は選考委員として、2012年のCOTYでは86/BRZに満点である10点を投じている。一般的にスポーツカーオーナーは速さとともに楽しさも追求しつつ、所有する歓びも同時に味わいたい、そんな意見が多い。当時の開発責任者であるトヨタの多田哲也氏(現在は退職)は、「86は売りっ放しにせず、中古車市場でも輝く存在としていく」と明言していたが、確かに新しいスポーカーオーナーは増え、そしてみんなが楽しむことができた。
満足している点
モータースポーツの敷居を下げようと、当時のトヨタがスバルとともに作り上げた2ドアクーペ。結果はアマチュアレースからラリーシーンに至るまで一定のファンを獲得し、また、中古車市場では20代の若者から手の届きやすい価格帯のスポーツカーとして認知された。絶対的な速さこそ、過去の国内ターボ勢、現・海外ターボ勢に劣るが、手を加えるだけでサーキットでのラップタイムは数ランクアップするほどポテンシャルが高かった。
不満な点
スバルとの協業第一弾ということもあって、折り合いをつけるとことが難しかったようだ。よって、情熱で作り上げることを両社開発陣のスローガンとし、決して妥協点を探りながらの車両開発は行なわないとした。ただ、走行性能を高めるには船頭となる開発者は一人であるほうが良かったようで、スバルブランド版の「BRZ」とは足回りの特性に変化がつけられた。作り分けることを目指したものの、車両の完成度は86が高い。
デザイン

4

スポーツカーの王道ともいうべき2ドアクーペボディ。これをスバルとの協業で販売までこぎつけた。第42回東京モーターショー2011にプロトタイプモデルとして出展した「小型FRスポーツ86」のスタイルをほぼそのままに市販車へと活かしている。「低く、楽しく、美しく」をテーマとして低重心パッケージと空力性能を基本にしながら操る楽しさをデザインからも追求した。製作は当時の富士重工業の群馬製作所本工場で行なわれた。
走行性能

4

発売当初のスペックは水平対向4気筒直噴2.0Lで200PS/7000回転、20.9kgm/6400〜6600回転という高回転型だった。6速MTのほかに6速ATも用意している。前ストラット式、後ダブルウィッシュボーン式のサスペンションを採用。標準のタイヤサイズは215/45R17だが、あえてハイグリップタイプを履かせていない。それは「クルマを操る楽しみをユーザーにまず、理解してもらいたい」という開発陣の想いから来るものだった。
乗り心地

3

スポーツカーらしく乗り味はハード。路面の凹凸をガツンとシートへ伝え、ステアリングにもその衝撃をそのまま伝える。ただ、サーキットなどクローズドコースでは素直な操縦性から、腕のあるドライバーであればオーバーステア気味のハンドリング特性を活かしたワイルドな走りが楽しめる。現在、様々なブランドからリプレイス用のサスペンションキットが販売されている。ストリート仕様であれば純正サスキットよりも乗り心地がいいから交換するのも手だ。
積載性

3

クーペボディなので絶対量は少ないが、トランクルームは実用的な広さを確保する。後席を前倒しすれば制限はあるものの長尺物も積載できる。サーキットでの走行時、コースで使用するタイヤ4本を積み込んで……、という使い方も可能だ。前倒しできる後席はトランクルームの床面と同じ高さになるので、重い荷物やかさばる荷物であってもスッと押し込める。前席周辺には小さいながらも収納スペースがあり、ドリンクホルダーも備える。
燃費

2

発売当時はJC08モード値のみ。6速MTでは11.8km/Lを記録している。これが6速ATになると12.8km/Lだった(グレードにより異なる)。ATがMTをカタログ燃費値で上回るのはファナルギヤ比の違いでMTが5%ほどローギヤード化されていた。ただ、筆者による記録だと、市街地走行時の燃費数値はATのほうが悪かった。いずれにしろエンジン音や振動が心地良かったことから、自ずと高回転域を多用しがちで、それほど伸びない。
価格

4

サーキットでの使用を前提にしたブラック樹脂(無塗装)の前後バンパーを装着する「RC」では1,990,000円と200万円の大台を下回っていた。事実上のボトムグレードはその一つ上の「G」で、6速MTが2,410,000円、同ATが2,480,000円。トップグレードの「GT」は2,790,000円/2,870,000円。GTにさらなる快適装備を上乗せした「GTLimited」が2,970,000円/3,050,000円。いずれにしろ安価なスポーツカーだった。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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※ 掲載しているすべての情報について保証をいたしかねます。新車価格は発売時の価格のため、掲載価格と実際の価格が異なる場合があります。詳細は、メーカーまたは取扱販売店にてお問い合わせください。

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