スズキ ワゴンR 「松竹梅が好みで選べるオールマイティ軽」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

まるも 亜希子
まるも 亜希子(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

5

デザイン
5
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
5
燃費
5
価格
4

松竹梅が好みで選べるオールマイティ軽

2023.6.19

年式
2017年2月〜モデル
総評
クルマとしての基本性能を高めるだけでなく、この先5年、10年と安心して乗り続けるための要素がしっかりと詰め込まれていると感じるハイトワゴン軽の代名詞的モデル。テイストの異なるカスタムZ、スティングレーもある中で、最もベーシックでシンプルな飽きのこない仕上がりになっているワゴンR。アフターパーツが多いので、その時の気分や必要に応じて、コツコツと好みに仕上げていく楽しさもあります。使い勝手に関しても、リヤドアに設置された軽初のアンブレラホルダーなど、チャレンジが感じられるところも長年にわたり軽人気を牽引してきたワゴンRらしさだと感じます。市街地でのチョイ乗りでも、ロングドライブでも、オールマイティに満足度の高い1台です。
満足している点
シンプルに見えて、実はとんでもない数の収納があります。ボックスティッシュや靴、遊具など、あらゆるモノがすっきりと収まるのもすごいところ。雨の日、どこに置こうか困ってしまいがちな濡れた傘を立てかけ、水滴が車外に排出されるというアンブレラホルダーの機構にも脱帽です。スズキの軽ではお馴染みとなった助手席シートアンダーボックスは、取り外して車外にも持ち出せるから、レジ袋が有料となった現代ではエコバッグを忘れた時にも使えそう。私の知人は部活の子供たちにドリンクを大量に差し入れする際に持ち運んでいました……。
不満な点
この価格でここまでよく走り、使い勝手もいいのだからほとんど不満はありませんが、後席に座った時に、リアウインドウの前端がピラーで覆われている部分があり、ちょっと視界が遮られるところが気になります。アルファードなどもこうなっているので、デザイン的なトレンドだったのかもしれません。
デザイン

5

四角いヘッドライトにかぶさるように、小さな四角のウインカーレンズが配置されているなど、少し遊び心も感じさせながら、大人っぽい上質感のあるグリルでドッシリとした、落ち着きのあるフロントマスクに仕上がっていると感じます。見た目ではAピラーがかなり傾斜しているように感じますが、実際に乗ってみると圧迫感はまるでなく、開放的な室内空間になっているというのもデザインの巧妙さを物語っています。
走行性能

4

ワゴンRで選べるのは自然吸気エンジンとマイルドハイブリッドの2タイプ。ターボやターボのマイルドハイブリッドは選べないので、パワー的にちょっと物足りないかなと思いきや、いい意味で裏切られます。自然吸気でも、発進から軽やかさと重厚感がちょうどいいバランス。不足のないパワーでしっかりとした加速フィールが続きます。交差点を曲がる時にも歩行者などの安全確認がしやすく、アイドリングストップからの再始動がスムーズで違和感がないのも、思い通りの気持ちいいドライブができる理由でしょう。音も振動も他の最新モデルと比べて大きいということはなく、よく抑えられています。ただ大人3人で試乗した際に、ズシリと重さが加わる感覚や、カーブを曲がる時などにボディが少しだけ大きめに傾く感覚がありました。速度を上げていった時の安定感もHYBRID FZやHYBRID Tほどのガッシリ感はありません。ワゴンRは前後のスタビライザーが非装着(4WDは前のみ装着)、また14インチタイヤ+スチールホイールとなることなどから、こうした違いを感じるのではないかと思います。頻繁に高速道路を走るならカスタムZかスティングレーがオススメです。
乗り心地

4

静粛性に関する防音材などの処理を手厚くしているスティングレーと比べてしまうと、高速道路では少しクルージング中のノイズが聞こえてくるものの、乗り心地はいたって良好です。感心したのは、東京湾アクアラインの駐車場へ入る急坂のスロープにある、大きな段差を乗り越えた時。ほとんど跳ねることなく、スッとしなやかにいなして越えていったのには驚きました。市街地でもしっかりと快適性を保っていると感じます。
積載性

5

リアドア側からだけでなく、バックドア側からも後席のスライドや前倒し操作ができて、荷物の多さに合わせて使いやすいラゲッジルーム。5:5分割で倒せる後席は、背もたれが開口部からフラットになり、大きな荷物も積みやすいと感じます。スズキの軽は助手席の座面を持ち上げ、前に沈み込ませると助手席の背もたれまでフラットに倒せるので、長尺物が積みやすいところも魅力。床下収納もたっぷりなので、その深さを利用してベビーカーを縦に積むこともできます。
燃費

5

ワゴンRのHYBRID FX-Sの燃費は25.2km/L(WLTCモード)で、軽ワゴンNo.1の低燃費を謳っています。確かに、アクセルペダルをオフにした瞬間からのコースティングが始まるような感覚など、きめ細かな制御でとても効率よく燃料を使っているような印象があります。アイドリングストップも頻繁に入り、その間もエコクールのおかげで冷たい風がキープされるので、燃費を気遣うだけでなく、乗る人にも優しいのでガマンしないエコドライブが可能です。
価格

4

FXには5MT車もあり、それがエントリーグレードで価格は121万7700円です。マイルドハイブリッドとなるFX-SはCVTで138万6000円と17万円近くアップするのですが、そもそもFXではシートリフターやチルトステアリング、マルチインフォメーションディスプレイといった基本的な装備から、ACC(全車速追従機能付)やサイドエアバッグなどの安全装備も省かれてしまうので、市街地メインでもたまに高速道路を使うような場合には、FX-Sがオススメです。
まるも 亜希子
まるも 亜希子
自動車ジャーナリスト
映画声優、自動車雑誌編集者を経て独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツ参戦や安全運転インストラクターなども務める。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員。YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」、「おっさん on boad」にも出演中。
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