日産 セレナ 「実用性も走りもハイレベル」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

工藤 貴宏
工藤 貴宏(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
3
走行性能
4
乗り心地
5
積載性
5
燃費
5
価格
3

実用性も走りもハイレベル

2023.12.17

年式
2022年11月〜モデル
総評
日産の国内販売における“ど真ん中”の商品として、完成度が高いですね。実用的だし、e-POWERも最新エンジンを組み合わせた仕様で一段と燃費もよくなりました。そして、地味にハンドリング性能が大幅アップしているのも見逃せないところ。買って間違いなしのMクラスミニバンです。
満足している点
e-POWERの爽快な加速と快適性、そして気持ちよく走れるハンドリングはファミリーミニバンというキャラクターに見合わないほどドライバビリティにあふれています。あと、値段は高価ですが、最上級グレード「ルキシオン」には高速道路を手放し運転で走れる「プロパイロット2.0」が標準装備されているのもライバルに対する大きなアドバンテージですよね。ベンチシートとセパレートシートを切り替えられる2列目や、ガラス部分だけを開けることができるテールゲート、そして3列目のシートスライドもライバルにはない便利機能です。
不満な点
ノア/ヴォクシーやステップワゴンにはあってセレナにはないもの。それは2列目シートの超ロングスライド機能です。だから3列目の居住性を無視して2列目を最大限に後ろまでスライドしたときの2列目足元の広さは、セレナがもっとも狭いですね。とはいえ十分な広さなのですが。
デザイン

3

真横から見ると先代からキープコンセプト過ぎない?という声もあるかもしれません。しかし、顔つきは日産の最新のデザインテイスト(2023年末時点)だし、リヤはテールランプの光り方なども先進的。ミニバンで人気のオラオラ顔ではないけれど、洗練された印象はいいと思います。
走行性能

4

ちょっとびっくりしました。いいんです。何がいいかといえば、曲がる性能。峠道を気持ちよく走れる……と書くと「嘘っぽい」と思われるかもしれませんが、先代に対して大幅にレベルアップし、ライバルの中でナンバーワンと思っています。車体のブレが少なくてドライバーのイメージ通りきれいに曲がることと、デュアルピニオン式という高価な機構を使ったパワーステアリングによるハンドル操作の滑らかさもいいですね。サーキットでも試乗しましたが、「あのセレナがここまで?」と思うほど安定した走りでした。動力性能に関してイチオシは「e-POWER」と呼ぶハイブリッド。モーター駆動だから滑らかで、スッキリとキレのある加速は病みつきになりそうなほど爽快です。対してガソリン車は「いたって普通」という印象。車両価格のことを考えなければ、欲しいのは「e-POWER」一択です。
乗り心地

5

新型になり、乗り心地もレベルアップしましたね。これまでも路面から大きな衝撃を受けるような乗り心地の悪さはなかったのですが、車体の揺れを抑えきれていない印象も拭えませんでした。しかし新型になり、車体のブレも減ってフラットライド感が向上。開発陣によると「酔いにくい」のも自慢なのだとか(車酔いと関連が深い発汗量や頭の揺れなどのデータを取って検証しているそうです)。
積載性

5

テールゲートのガラス部分だけが開くことと、3列目シートの前後スライド機能が備わることがライバルに対するアドバンテージ。加えて3列目の畳み方にもライバルとの違いがあり、同様に跳ね上げ式としているノア/ヴォクシーと比べても格納したシートが収まる位置が低く、窓を塞がず斜め後方視界を確保できるように配慮しているのがわかります。ただ、格納時の室内への張り出し量がライバルより大きいのもまた事実ですが。
燃費

5

燃費を気にするならハイブリッドの「e-POWER」がいいでしょうね。WLTCモード燃費は20.6km/L(e-POWER X)とガソリン車の同等グレードの約1.5倍。車両価格はガソリン車より40万円以上高いけれど、燃費がいいだけでなく加速が滑らかで快適で満足度は高い。そのうえ、残価設定ローンで買えば月々の支払い額の差は意外に少なかったりするので、e-POWERが人気となっているのは素直にうなずけます。評価点「5」はそんなハイブリッド車のもので、ガソリン車の燃費評価は「3」です。
価格

3

ベーシックグレードで280万円を切っているのは、内容を考えれば納得。ちなみに最上級グレードが500万円に迫るのは高速道路を手放し運転できる機能がついているからで、その機能を必要とするユーザーのためのグレードと思えばいいでしょう。
工藤 貴宏
工藤 貴宏
自動車ジャーナリスト
1976年生まれ。クルマ好きが高じ、大学在学中に自動車雑誌の編集部でアルバイトしたことをきっかけに、そのまま就職。そして編集プロダクションを経てフリーランスの自動車ライターに。日々新車を試乗し、日夜レポートを書く日々も気がつけば10年以上。そろそろ、家族に内緒でスポーツカーを買う癖はなんとかしないと。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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