三菱 eKクロス EV 「サクラとキャラクターが違う部分もアリ」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西川 昇吾
西川 昇吾(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
3
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
4
燃費
5
価格
3

サクラとキャラクターが違う部分もアリ

2022.8.19

年式
2022年5月〜モデル
総評
多くの軽自動車の1日当たりの移動距離は50km以下らしいので、通勤やちょっとした買い物のみに使い、基本的に1日の移動距離が100km以下という割り切った使い方が出来て、自宅に充電設備を設置できるという人にはベストに近い選択肢と言えるだろう。本体価格の高さにハードルを感じてしまうのも分かるが、補助金や残クレを上手くやり繰りすれば、結構お得に乗ることも可能だ。そういった軽自動車の実情を汲み取ったうえで割り切った使い方を理解できる人にとっては、ランニングコストがリーズナブルな1台として優位な選択肢となるはずだ。
満足している点
サクラ共々、軽自動車に電気自動車というパワーユニットを採用したことで、軽自動車というクラスを超えるような加速性能と静寂性を手に入れたことが何よりも良いポイントだ。実際に乗ってみると、軽自動車という概念を覆すほどのインパクトがある。また、乗り心地の良さも結構驚かされる。固く守られたバッテリーを床下に配置して、全体の剛性が上がっているからだと思うが、これも軽自動車というクラスを超えるほどだ。そういった意味では、乗り心地や静寂性など電気自動車による副産物も含め価格なりの価値は感じられる一台だ。
不満な点
静寂性や乗り心地の良さなど、価格なりの価値は感じられる一台ではあるものの、やはり軽自動車に300万円を出すという価値観に対して、どのように理解を広められるかという点が気になる。そして補助金がいつまで続くかというところも、具体的に購入を検討する上で大きなポイントとなる。最後にバッテリー性能の経年劣化に関して。この3つが気になるポイント。上記の点は現状では判断できないところもあり、正直何とも言えない。そういった意味でサクラ共々、「軽自動車に電気自動車」という選択肢が実質的にユーザーに組み込まれるのは5年後くらいになってくるだろうか…という考察になる。
デザイン

3

姉妹車のサクラと異なり、デザインはほとんどガソリン車のeKクロスと変わりがない。そういった意味では、こちらの方がデザイン的には違和感なく乗れると言えるだろう。eKクロスのデザインとしては、近年の三菱のデザインアイコンであるダイナミックシールドを採用していて、押し出し感と先進性を感じるもので、電気自動車でも違和感はないと言える。しかしeKクロスとeKクロスEVのデザインの差があまりにもないのは少し寂しい。基本デザインは一緒で良いから、もう少し遊びがあっても良かったのではと思う。
走行性能

4

これはサクラも同様だが「軽自動車」という先入観を持つと、加速感には驚かされることだろう。出だしから最大トルクを発揮できるというモーターの特性だから当たり前なのだが、加速に関して言えば不満が出ることはない。また、固く守られたバッテリーを床下に有しているため、剛性も高くそれが各種走行性能に良い意味で影響している。また、サクラと違うと感じた点で言えば、コーナリングが軽やかで俊敏な印象であった。普通に運転をして、楽しいと感じるのはこちらの方であろう。
乗り心地

4

これまでの軽自動車と比べると電気自動車というより、硬く守られたバッテリーを床下に有しているのは乗り心地に大きく、そして良い意味で影響していると感じる。軽自動車とは思えないほど剛性が高い印象を受け、路面からの入力で不快な振動を乗員に伝えない。まるで「ボディ剛性が高い」と評される普通車に乗っているようだ。しかし、乗り心地やそれに関する質感という意味ではサクラの方が上と感じる。欲を言えばな部分だが、eKクロスEVの方が細かな振動が多い印象。ただ、これまでの軽自動車に比べれば乗り心地は良い。
積載性

4

積載性に関して言えばサクラとほぼ変わりなく、軽自動車トールワゴンというジャンルで考えれば平均的な印象のラゲッジスペース。ただ、利便性が高いと感じるのが後部座席のスライド機構だ。ラゲッジスペースを拡大することも出来るし、後部座席の足元を広くすることも出来る。この機能を上手く使いこなせば、日常シーンで荷物が積めなくて不便と感じることはそうないであろう。ラゲッジスペース、後部座席どちらに荷物を積む人にとってもありがたい作りだ。
燃費

5

WLTCモード180kmという航続距離は物足りないという人もいるかもしれない。しかし、通勤メインの地方での足として軽自動車を使われているシーンを考えると、1日あたり50kmも航続距離があれば十分であろう。その点、eKクロス EVは実質的な航続距離が120〜150kmあたりと考えても、必要十分の性能を兼ね備えていると言える。バッテリー容量が20kWで150kmという性能も、電気自動車としての電費性能が高いと感じるポイントだ。エンジンオイル交換も必要ないので、ランニングコストで言えば姉妹車のサクラ共々、トップクラスに経済的なクルマと言えるだろう。
価格

3

姉妹車なので当たり前だが、価格設定に関してもサクラと同様、一見すると上級グレードで300万円近い価格設定は軽自動車としては高いと感じるだろう。ただ、後々のランニングコストを考えるのであれば、200万円でガソリンの軽自動車を買うのといい勝負と言えるのではないか。問題点は補助金がいつまで続くのかという不安と、電気自動車はバッテリー性能の低下を考えると下取りという面で弱いと言えるだろう。軽自動車として考えると各種質感は高いので、価格なりの価値は感じられる。
西川 昇吾
西川 昇吾
自動車ジャーナリスト
1997年生まれ、大学時代から自動車ライターとしての活動をスタート。現在はWEB・紙の各種媒体で様々なジャンルの記事を執筆するほか、車両解説動画にも出演し、喋りの分野にも挑戦中。愛車のマツダ・ロードスターで定期的にサーキット走行をし、ドラテクの鍛錬も忘れない、目指すは「書けて、喋れて、走れるモータージャーナリスト」
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