1980年代まで、日本においてハーレーは“中高年の乗り物”と思われていた。巨大なフロントカウル&バイザー、サイド&リアバッグ、エンジンガードバー。満艦飾のゴージャスないでたちで乗っている人はたいていオジサン。アメリカン・ハイウェイパトロールのコスチュームをまとっていたりする。ジェットヘルメットにレイバンのティアドロップ・サングラスもセットだった。かつてのハーレーはそんな姿で記憶され、いわば富裕層、支配層の象徴だった。徒党を組んだ“護送船団”でツーリングする彼らの姿も、しばしば見かけたものだった。
本国アメリカではもっとシンプルなハーレーもあった。満艦飾のフルドレス・モデルは大陸をグランド・ツーリングするための必然性に基づいたスタイルだったが、そこまで求めないスプリントな仕様として、装備を簡素化した「スポーツスター」と呼ばれるモデルが1957年からラインアップされていた。それらは日本にも輸入されていたが、しかし、日本におけるハーレーの“本流”にはなりえなかった。その背景には、独特の免許制度があった。
自動車メーカーになった男──想像力が全ての夢を叶えてくれる。第11回
1986年に登場した、エンジンとトランスミッション一体式の「エボリューション」エンジンを搭載したスポーツスター。883ccで65psを発揮した。本連載でもたびたび記しているが、日本の2輪免許制度は1980年代までいささかいびつな仕組みだった。75年に発足したいわゆる「限定解除制度」は、若者ユーザーを400ccオーバーのバイクから遠ざけた。
メーカーが自主規制を敷いた750cc以上のバイクなど夢のまた夢で、そこに君臨する輸入車ハーレーは制度改定以前にバイク免許を持っていた世代、つまり“オッサン”の特権的な乗り物だったのである。
アメリカでは、権威に抗いたい若者がハーレーをチョッパー仕立てにして旅に出る映画『イージー・ライダー』があったが、こと日本ではその構図や現象を再現するのは不可能だった。
1957年に登場した初代スポーツスター。排気量は883ccで、ヘッドまわりをそれまでのサイドバルブからOHVに変更し、性能を飛躍的に向上させた。最高出力は42ps、最高速は164km/hを記録した。状況が一変したのが、90年代だ。免許制度に阻まれ、日本ではティラノサウルスのように旧態依然・衰退滅亡の道へ向かうと思われていたハーレーは、新しいかたちを取ってよみがえる。「日本は自国産業ばかり守ってけしからん。考え直せ」という、いわゆる“非関税障壁撤廃”の世界的な流れである。限定解除制度はその最たるものとされ、ハーレーやBMWなど海外2輪メーカーは日本に是正を強く求めた。
その結果96年に免許制度は改定され、400cc以上もちろん750ccオーバーのバイクへの敷居が一気に低くなったのだった。
カフェレーサーカスタムの元祖とも言える「XLCR」は1977年発売。ダブルディスクブレーキ、アルミホイール、バックステップなどを装備し、最もスポーティーなハーレーだった。ハーレーを身近な存在にした“パパサン”の登場前置きがうんと長くなったが、ここで“パパサン”の存在が際立ってくる。当時、ハーレーとしては最も小さな883ccVツインを積むスポーツスターが、“パパサン”という愛称で親しまれ、ハーレー人気再燃の起爆剤となったのだ。
オッサン系のビッグツイン・ハーレーとはエンジン、トランスミッションを含むパッケージが異なり、小柄な日本人でも扱いやすいスポーツスター系はとくにハーレー入門層に受けた。そもそも本国では長く愛され、パーツもチューニング・メソッドも膨大に積み重ねられていたのだ。
“障壁”さえ取り払われれば人気モデルとなる素地があった。チョッパーにしてよし、メッキパーツで飾るもよし、黒ずくめのダークカスタムよし、スポーツスターの主戦場だったダートトラック・レーサー風よし。
その流れをつかんだショップやチューナーも、これまで知ってはいたが“商売にならなかった”ハーレー稼業をどんどん展開するようになった。スポーツスターはオッサン・ハーレーとは違う若い世代のバイク乗りもつかまえ、いまや路上には思い思いにカスタマイズされたハーレーがあふれるようになった。
“パパサン”はその文化の源だったのだ。
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