技術云々ではなく実用性を確保できるかが問題
トヨタは、2014年に燃料電池車(FCV)のMIRAIを発表し、政府が進めるFCV導入のロードマップへの責任を果たした。またホンダも、2016年3月にクラリティ・フューエルセルの販売を開始し、2015年度内でのFCV導入を実現している。
プラグインハイブリッド車(PHV)に関しても、トヨタはプリウスPHVの初代を2011年に発売したあと、17年にフルモデルチェンジをして2世代目を発売し、本格的導入を進めている。ホンダは、アコード・プラグインハイブリッドを2013年にリース販売し始め、こちらは16年に販売を終了したあと、18年にクラリティ・フューエルセルと同じ車体を使ったクラリティPHEVの発売を開始した。
トヨタとホンダは、FCVとPHVでほぼ同じ歩調を取り市場導入している。ことにFCVでは、世界的に見てもほかの自動車メーカーが販売へ乗り出さないなか、率先して市場へ投入し、顧客の手に届けている。世界の先端を行っているのは確かだが、それが次世代車の将来を確定づけるかどうかはわからない。
いま、世界的な動きはリチウムイオンバッテリーを搭載する電気自動車(EV)をいかに自然な形で市場導入するかに動いている。FCVの研究もやめてはいないが、商品としての将来性については保留の段階だ。日本においても、日産がFCVの市場導入を見送る決定を下している。究極のエコカーと言われながら、FCVは次世代車の本命ではないことが次第に明らかになっている。
自動車メーカーや燃料メーカー、あるいはガス関連企業は、世界的な連合により水素社会を実現しようと動くが、その流れは業界関係者以外には広がっていない。逆に、ゼロエミッションハウスの取り組みが、国内では補助金制度を含め動き出している。家を断熱し、太陽光発電を装備し、そしてEVやPHV、あるいはFCVを導入することにより、一家で使う電力を効率的に運用しようというのである。
それでも、そこからFCVが欠落する可能性は高い。FCVも電力の需給が可能なクルマではあるが、そもそも水素を補給できるスタンドが国内に100カ所程度しかなく、まったく実用の域に達していない。
じつは、水素スタンドを開業するには500平方メートル(約150坪)の敷地が必要とされ、なおかつその上に高層ビルを建てることはできない。したがって、技術やコスト、あるいは法整備の問題とは別に、土地所有者にとって土地の有効活用ができない施設なのである。土地の価格の高い都市部では、まず経営が成り立たない。つまり、水素スタンドは増えず、FCVは普及しえないのである。
技術やクルマが優秀かどうかではなく、現実的に運用できるかという視点に立てばFCVの未来は遠い。
一方で、トヨタとホンダはEVの市販で遅れている。EVを作れるかどうかではなく、EVが消費者に受け入れられる商品性を持てるかがカギを握っており、いくら技術を持っていても商品力は市場で磨かれるものであり、市販が遅れれば遅れるほど取り残される。
いま、日本人は中国製EVに疑念を持つだろうが、市場で磨かれている中国製EVが近い将来世界的価値を持つ可能性がある。ホンダ役員のひとりは、「EVはコストの半分がバッテリーで商売にならない」と言うが、そのような認識でいたら、いずれ世界で中国に出し抜かれてしまうだろう。日本の物作りの危機は、そういう経営陣の、エンジン車時代の経営感覚から崩壊していくのではないか。
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