自動車は走れば何でもいい。そう考える人は多いし、間違いでもない。しかし、自動車の個性が薄くなり、EVやカーシェアリングが普及する「今」だからこそ、クルマに「遊び」や「冒険」を求めたい。伊達軍曹が贈る攻めの自動車選び。第10回は骨太な乗り味で、側に置いて損のないジープ ラングラー アンリミテッドを届けしよう。
その出自は軍用車の民生版
郊外や地方都市に住まうのであれば話は別だ。しかし東京あるいはそれに準ずる都市に住まう者にとって、「実用」を主たる目的にクルマを所有する意味はさほどない。
そんな状況下で「それでもあえて自家用車を所有する」というのであれば、何らかのアート作品を購入するのに近いスピリットで臨むべきだろう。
すなわち明確な実益だけをそこに求めるのではなく、「己の精神に何らかの良き影響を与える」という薄ぼんやりとした、しかし大変重要な便益こそを主眼に、都会人の自家用車選びはなされるべきなのだ。
そう考えた場合におすすめしたい選択肢のひとつが、カーマニア以外からは単に「ジープ」と呼ばれることも多いジープ ラングラーというクルマの、5ドア版。すなわち「ジープ ラングラー アンリミテッド」である。
まずはジープ ラングラーというクルマ自体についての解説を、ごく簡単にだが行っておこう。
ラングラー アンリミテッドの原点は、第2次世界大戦を舞台とする映画などでしばしば目にする米陸軍の軍用車「ジープ」だ。
当時のアメリカ陸軍から出された「3人乗りの小型四輪駆動車で、地雷を踏んでタイヤ2本を失った場合でも、スペアタイヤを含めた残り3本で100 km 走れること」という無茶な性能要求に応えることができたのは、弱小自動車メーカーであるアメリカン・バンタム社だけだった。
そのバンタム社が完成させ、米陸軍からOKが出た試作車をウィリス・オーバーランド社が(米軍の命により)改良し、のちにフォード社とともに軍用車として大量生産したのが、戦争映画でしばしば見かける軍用ジープ(MJ=Military Jeep)だ。
そして戦後、軍用ジープの民生版として生まれたのがウィリス社およびアメリカン・モーターズ社のCJ(Civilian Jeep)と、その後を受け継いだジープ ラングラーだった。ちなみにラングラー(wrangler)とは「カウボーイ」という意味。
企業買収や合併が連続したことでCJおよびラングラーの製造元社名は目まぐるしく変わったわけだが、結論として現在のジープ ラングラーはフィアット・クライスラー・オートモービルズが製造販売している。
ラングラーとしての初代は1987年登場の「YJ」と呼ばれるもので、その後1996年に「TJ」へとフルモデルチェンジ。そして2007年には3代目の「JK」が登場した。そしてこの際、3ドア版のみだったラングラーに5ドア版が追加され、この5ドア版に「ラングラー アンリミテッド」という車名が付けられた。
そしてごく最近といえる2018年、現行型「JL」へのフルモデルチェンジが行われた──というのが、CJおよびジープ ラングラーの大雑把なヒストリーだ。
年代を追うごとに細部や使用素材などは大幅にブラッシュアップされ続けたCivilian Jeepだが、「映画でよく見るあのビジュアル」と「屈強なラダーフレーム」という基本部分は変わらないまま、2020年の今も生産されている。
で、そんなラングラーの、3ドアだとさすがにちょっと不便だから5ドア版の「ラングラー アンリミテッド」を買いましょうや──というのが本稿の趣旨なわけだが、前述のとおり屈強な軍用車としての基本部分も色濃く残っているクルマだけに、2020年の社会で走らせるにあたっては若干の問題もある。
骨太な乗り味は「アトラクション」的楽しみに
悪路にはめっぽう強いが、舗装路での乗り味は今ひとつなのだ。
ジープ ラングラーは、一般的な乗用車と違って「ラダーフレーム」というはしご状フレームの上にボディを載せており、足回りは、左右の車輪が軸でつながっている「リジッドアクスル」という方式を前後ともに採用している。
これは悪路を走るうえではベストな方式で、日本が世界に誇るスズキ・ジムニーも採用している方式なのだが、いかんせん舗装路との相性はよろしくない。
具体的には、カーブでは「車体がワンテンポ遅れてユラっと向きを変える」というニュアンスになってしまい、舗装路における段差でも、一般的な乗用車がサスペンション付近で揺れをビシッと吸収するのに対し、この方式では「車体全体が揺さぶられる感じ」という動きになってしまう。
それゆえジープ ラングラーのカッコ良さだけに引かれて購入すると、主に走ることになる舗装路では「……(こんなはずじゃなかった)」と絶句する可能性もなきにしもあらずなのだ。
だが、それでも別にいいじゃないか──と筆者は思っている。
毎日乗る類のクルマであるなら話は別だが、冒頭付近で申し上げたとおり、都会に住まう人間にとって、自家用車を運転する機会などきわめて少ないものだ。言ってみれば「たまに乗る」ぐらいの場合がほとんどだろう。週イチとか、せいぜい週2ぐらいのイメージだろうか?
そうであるならばジープ ラングラー アンリミテッドの骨太な乗り味も、ある意味「アトラクション」のようなものとして、非日常の何かとして、逆に楽しむことができるはずなのだ。
またここでCOVID-19の問題について何かを煽るわけではないが、「一寸先に何があるかまったくわからない時代に突入した」ということだけは、筆者を含む多くの人間が薄々確信しているはず。
そんな時代に、道なき道を走ることを超絶得意とするこのSUVは──実際にそれを使って避難したりサバイバル生活を送るかどうかはさておき──側に置いて損はないというか、イザというときに頼りになる(かもしれない)相棒または精神安定剤としてとらえることもできる。
手に入れる選択肢は3つ
「なるほど。ではラングラー アンリミテッド買おうではないか」と思った場合、選択肢は大きく分けて3つあるだろう。
ひとつは、現行JL型の新車を買うという選択。
こちらは、それまでのJK型と比べれば相対的に舗装路での快適性が向上しており、インテリアデザインもかなりシュッとしているので、普通におすすめできる選択肢だ。搭載エンジンは自然吸気3.6リッターV6と2リッター直4ターボの2種類があるが、お安い2リッターターボのほう(アンリミテッド スポーツ:504万3600円)で性能的には十分以上かと思う。
もうひとつの選択肢は「現行JL型のユーズドカーを探す」ということ。中古車の流通量はすでに豊富で、相場的にも、走行数千kmレベルのアンリミテッドスポーツが車両450万円付近から狙える状況。ド新車であることにさほどのこだわりがないのであれば、おすすめできる選択肢だ。
もうひとつのチョイスは「先代JK型の中古車を探してみる」ということだ。
前述のとおり現行JL型のほうが舗装路での乗り味は良好だが、それでも「圧倒的に良くなった! 」というほどではないため、先代だって「まぁ形も乗り味も似たようなモノ」と考えることもできる。そう考える場合には、比較的低走行な物件を車両270万円前後から探せる先代後期の中古車は狙い目になるはず。ただしインテリアデザインの「今っぽさ」については、圧倒的に現行型に分があるのだが。
いずれにせよ、乗り心地はちょっと悪いが「タフでカッコいいクルマ」であるジープ ラングラー アンリミテッドは、その世代を問わず一部の男たちにはぜひおすすめしたい選択肢であり、乱世においては特に注目しておくべき存在であるように思う。
文・伊達軍曹 編集・iconic
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みんなのコメント
知り合いの40代女性は、22歳でチェロキーを新車で購入後18年乗り続けた。そして最近ラングラーを買った。
ジープ(に限らずだが)は男性だけの車じゃない。
最低でも4000以上の排気量は無いと駄目だね。