この記事をまとめると
■モデルチェンジした新型日産セレナのパッケージングとユーティリティを検証
日産独自の電動化技術「e-POWER」! システムと搭載車両について解説
■パッケージングの基本は先代を継承しつつ細かな改善により使い勝手と快適性が向上
■シートアレンジが絶品でフルフラットにしての車中泊にももってこいの1台となっている
生まれ変わった新型セレナのユーティリティをチェック
6代目となるセレナは商品コンセプトやプラットフォームなどを先代から継承。ファミリー層に絶大なる人気を持つセレナらしさを維持しつつ、新世代のMクラスボックス型ミニバンとして大きく進化した新型だ。前回の商品概要に続き、今回はパッケージング、ユーティリティなどについて解説したい。
パッケージングの進化は? ……とまず説明したいところだが、じつは、室内空間の基本は変わっていない。1-2、2-3列目席の配置、1-3列目席のエレベーション(フロアの後ろ上がりの角度)など、基本的に先代のままとなる。言い方を変えれば、先代でMクラスボックス型ミニバンとして変えようもない完成度を持っていた、ということにもなる。が、シート背後の削りもあって、1-3列目席間距離は、クラストップレベルだという。また、3列目席が全グレードでスライドするのも、クラス唯一。
注目点は、セレナ独自のマルチセンターシートだ。マルチセンターシートは1-2列目席間をスライドできる、1列目席ではコンソールに、2列目席では左右席の間に置くことで、幅の広い2列目セミベンチシート化に貢献するアイテム。
それ自体は先代にもあったのだが、先代の途中で加わったe-POWERモデルに関しては、1列目席の中央に、e-POWERバッテリーを収めるためのコンソールが最初からあるため(非e-POWER車は空間になっている)、1列目席のほうにスライドすることができず、e-POWER車では不採用だったのである。よって、先代e-POWER車の2列目席はキャプテンシート状態のみで、マルチセンターシート付車の8人乗りが実現できず、最大7人乗り(2-2-3人)だったのである。
それを、新型ではマルチセンターシートをオーバーハング構造とし、1列目席中央のe-POWER用バッテリー部分にかぶさるようにデザインしたため、マルチセンターシートの採用が可能になり、e-POWERモデルでも8人乗りが実現したというわけだ(実際に常時、8人乗りことはないだろうが……)。
そうそう、グラディングパネルを廃して、すっきりシームレスな印象となったサイドビューだが、サイドシル部分に注目すると、フロントドア下がプレイラインとともに少しえぐれていることがわかる。じつはそれ、前席の乗降性を高めるえぐりなのである。新型セレナの下半身のカッコ良さは、ただのデザインではないのである。
さて、ミニバンと言えば、スライドドアからの乗降性が売りだが、開口部の寸法、そして地上390mmのステップ地上高、そこから約90mm高いフロア高は、プラットフォームをキャリーオーバーしていることから、先代と変わらず。個人的にはステップワゴン的なワンステップフロアを期待していたのだが……。
クラストップレベルの後席室内空間、各席のニースペースもまた不変。具体的には、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、その背後の2列目席に座ると、頭上に240~280mm、膝まわりに標準スライドで410mmものスペースが確保されている。エルグランドが同430mmだから、Lクラスミニバンに匹敵するゆとりがある2列目席と言っていい。
2列目席1座のシートサイズは、シートクッション長では先代よりやや短めだが(500→480mm)、シート幅はわずかにワイドになり(505→525mm)、フロアからシートクッションまでの高さ=ヒール段差が350mmとたっぷりあるため、かけ心地はシートクッションの良さと合わせ、快適そのものだ。
ちなみに2列目席を中寄スライドさせ(マルチセンターシートは前方にセット)、最後端位置までスライドさせると、膝まわり空間は500mm以上になり、まさに広すぎると感じるほどの足元のゆとりが出現する。4名乗車で移動するときにはコレである。
ただし、フラットフロアながら、フロアにはマルチセンターシート付で6本ものレールが縦に走り、フロアマットを敷けないのが、レールのうるささとともに、先代同様の気になる点かも知れない。
3列目席と言えば、乗降のためのウォークイン幅は先代同様の最大330mmで、身長172cm、体重65kgの筆者であれば、まったく無理なく乗降できることを確認。フラットフロアに置かれた最大3人掛けのシートのサイズもまた先代同等だが、ヒール段差が20mmほど高まった印象で、より体育座り的にならないかけ心地となっていた。
スペースとしては、頭上方向に先代を上まわる150mm、膝まわりに最小(2列目席標準スライド後端)120mm、膝まわりに最大410mmもある2列目席の膝まわりスペースを、足が組める200mmちょっとにすれば、なんと3列目席膝まわり空間に220mmものスペースが確保され、2/3列目席ともに足もとの狭さとは無縁で乗車することができるのが、新型セレナである。
一方、2/3列目席からの視界は良好だ。新型セレナでは、疲れにくさと車酔いのしにくさにもこだわりがあり、車内の静かさによる会話のしやすさ、そして運転操作の筋負担、急な頭の動きの低減のほか、視界の広さが挙げられている。
そこで注目したいのが、ウインドウ面積による視界の広さ。自身はクルマ酔いしないので、確かめようもないが、疲れ、酔いへの影響因子を徹底的に抑え込むことで、ロングドライブでの快適性に効果が出てきそうである。
パッケージの進化とユーティリティの向上がハンパない
ラゲッジルームの寸法も、基本的に先代と大きく変わらない。3列目席使用時で奥行き360~480mm、フロア幅1170mm、最小天井高1170mm。フロア下のサブトランクが奥行き400mm、幅1050mm、深さ225mmという感じで、けっこうなモノを収納できそうだ。
で、先代同様に、左右の低い位置に格納できる3列目席を手動でハネ上げると、奥行きは2列目席シートスライド位置によって1220~1540mmにまで拡大。アウトドアの大きな荷物も無理なく積み込める広さ、容量になる。
ところで、先代の大きな特徴だった、セレナ唯一のデュアルバックドアも継承。ガラスハッチだけ開くことで、車体後方にスペースのない場所でも、ラゲッジルームの荷物を出し入れすることができるアイディアだ。
開口部の高さは日本人の女性でも無理なくアクセスできる高さに設定されているのだが、先代は、デュアルバックドアからフロアボードの下のサブトランクにアクセスすることは、フロアボードがバックドアに引っかかって不可能だった。新型ではそれを解消。
フロアボードを開けることができ、デュアルバックドアからサブトランクの荷物にもアクセスできるようになっている。
と、ここまでがおおまかなパッケージの説明、進化になる。ここからは、新型セレナのユーティリティの詳細について説明したい。ユーティリティというと、ポケッテリアだけを想像しがちだが、そんなことはない。使い勝手面の進化としては、まずボタン式電制シフトが挙げられる。新型セレナのCVTセレクターは従来のレバー式ではなく、先進車にも採用例の多いボタン式となり、センターのエアコン操作部分と共用するフラットパネルに左からP-R-N-D/Bと並ぶ電制シフトになっている。
運転席まわりが、2枚の液晶パネル(メーターとナビディスプレイ)とともにすっきりし、慣れれば使い勝手は文句なしと言っていいだろう。
すっきり……という点では、運転席、助手席まわりの豊富な収納のなかでも、インパネアッパーボックスが便利そうだ。ティッシュボックスがちょうど入るサイズで、ティッシュボックスを目立たせずに収納できるところがポイント。ただ、運転席からのアクセスは遠くて難しいのだが……。
いまではスマートフォンとクルマの関係は密接で、CONNECT機能を充実させた新型セレナでもスマホとの連携(リモートエアコンなど)、車内Wi-Fiなどが利用できるのだが、だからこそ充電機能は不可欠。新型セレナでは全席にUSBソケットを備えているから、どの席にいてもバッテリー切れの心配がないのが嬉しい。
シート地はルキシオン用のテック感、高級感あるオールPVC、リビング感覚&コンフォートのPVC+ファブリックコンビ、モダンなファブリックの3種が用意されているが、子育て世代からSURF&SNOW派、アウトドア派にも嬉しい撥水シートも用意している。
日産のミニバン初となる装備が、e-POWERモデルに設定されるAC100V/1500Wコンセント。しかも、前席とラゲッジルームの2カ所にあり、アウトドアや災害時に威力を発揮してくれる。同クラスではノア&ヴォクシーのHVにはあっても、最新のステップワゴンには用意されない装備である。ちなみに最新のエクストレイルはラゲッジルームの1カ所である。新型セレナの使い方、楽しみ方を大きく広げてくれる待望の初装備と言えるだろう。
細かい話ではあるけれど、セレナが子育て世代にも人気のファミリーミニバンであることから、シート表皮は、子供の乗車に関して、おやつやお菓子の食べこぼしの清掃性がいい生地としているのも、なるほどセレナらしい配慮だ。
そして最後にぜひ、伝えたいのは、空前のアウトドア、車中泊ブームのなか、新型セレナのシートアレンジがかなり優秀ということ。2-3列目席をフラットにすると、2列目席シートバックと3列目席シート座面がほぼフラットにつながり、大人が寝ころんだ時、ちょうどいいフラットさ、寝心地良さ、そして2150mmものベッド長が実現されているのだ。
もっと言えば、実際に寝てみれば分かるように、マットレスがなくても、そのまま快眠できそうなフルフラットアレンジなのである。この点では、ライバルを圧倒していると言っていい。3列目席のシートバックは水平にもなるものの、ちょっと角度を付けてあげることで、電動ベッド的に使え、リラックスでき、逆流性食道炎対策にもなるから嬉しい。
というわけで、新型セレナのパッケージ&ユーティリティの説明はここまで。次回は新型セレナに搭載された、なんとプロパイロット2.0を含む先進機能、装備について解説したい。
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