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SUVがやさしさに包まれたなら──新型マツダMX-30詳報

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SUVがやさしさに包まれたなら──新型マツダMX-30詳報

10月8日、マツダは、新型コンパクトSUVの「MX-30」を発表した。魅力や特徴を小川フミオが解説する。

注目のフリースタイルドアとは?

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マツダがハイブリッドシステム搭載の新型クロスオーバー「MX-30」を、10月8日に発表・発売した。全長もホイールベースもSUVのCX-30と同寸であるものの、ユニークな“フリースタイルドア”を備えたクーペライクなデザインが魅力的なモデルだ。

Hiromitsu Yasui(Photo)/Hiroki Kozuka(Photo Retouching)「やさしく、心地よいものに囲まれた暮らしをイメージして作りました」と、MX-30を紹介するなかで、開発主査を務めた竹内都美子氏は述べた。

クルマの魅力について語ることばとしては、新鮮な語り口ではないか。実車を見ただけで試乗はまだだけれど、ナチュラルなドライブフィールのクルマに仕上げたい、という開発者の思いが伝わってきた。

Hiromitsu Yasui全長4395mmと、市街地で扱いやすいサイズ。遠くまで見渡せる高い着座位置も同様だ。くわえてパーソナル性の高い2ドア的なデザインが、ふだんは2人で出かけることの多いユーザーには評価ポイントになるはず。

ベースになっているCX-30の例から類推すると、街乗りだけにとどまらず、遠出も楽しめるはずだ。最近のマツダ車は足まわりの設定が見直され、よりしなやかで快適な乗り心地を実現している。MX-30も例外ではないと推測される。

Hiromitsu Yasui(Photo)/Hiroki Kozuka(Photo Retouching)Hiromitsu Yasuiスタイリングも、好感がもてる。ルーフの前後長はやや切り詰められて、テールゲートの傾斜角がつき、いわゆる“クーペライク”なスタイルだ。全高はCX-30より10mm低い1540mm。SUVとしては背が高いほうではない。

ユニークなのは、フリースタイルドアなる前後ドアのシステムで、これは、前席用のものは通常の前ヒンジのドアだけれど、後席用には、後ヒンジのやや幅の小さなドアがそなわるというもの。2つのドアは観音開きになるので、後席用が小さくても出入りの際の使いにくさはない。

Hiromitsu Yasui後席用のドアは開閉用のハンドルが外についていない。まずフロントドアを開けてから、後ろのドアの内側に設けられたオープナーを操作して開ける。

メリットは、印象的なサイドビューが実現したこと。まさに2ドアクーペのようなウィンドウグラフィクスと、フロントからリアまですっと延びていくベルトラインによる美しさが生まれている。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui当面はマイルドハイブリッドのみ

インテリアデザインも、従来のCXシリーズとは一線を画す。専用にデザインされたのは、フローティングコンソールと呼ばれるセンターコンソールのデザインや、安全性と使い勝手を考えて設計されたというATのセレクターなどだ。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui内装材にリサイクルファブリックやレザレット(人工皮革)を積極的に使っているのも、インテレクチュアルなユーザー層にアピールするだろう。テスラも「モデルS」ではホンモノのレザーより感触にすぐれるのでは? と、思うほどのレザレットを使用しているぐらいで、まさに環境適合デザインの好例だ。

シート地にはデニム調のクロスも使われ、これも新しい感覚を生み出している。とりわけホワイトのレザレットと、メランジ調のクロスの組合せは、ナチュラルな感覚もあり、新しいスタイリッシュな表現だ。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui「想定ユーザーの嗜好を世界的に調査したところ、たとえばIT産業に従事している若いひとたちが、リノベーションされた古い建物やコットンのTシャツなどを好む傾向が強いことがわかりました。“ハイテク”よりも“自然な雰囲気”が好きなのかもしれません。それに自信を得て、内外装のデザインを決めました」

MX-30のデザインをとりまとめたチーフデザイナーの松田陽一氏は、そう説明する。

Hiromitsu Yasui2019年の東京モーターショーで、予告なしに電撃的に登場して驚きを与えたMX-30。あのときはBEV(バッテリー駆動の電気自動車)とされていたものの、日本ではまずマイルドハイブリッド仕様が登場し、のちにBEV版が販売されるという。

搭載するエンジンは「e-SKYACTIV G(イースカイアクティブジー)」と呼ぶ、1997cc直列4気筒ガソリンユニット。これに電気モーターが1基組み合わされている。スタートのときなど、モーターがエンジンの駆動軸(クランクシャフト)に補助的なトルクをくわえる。それによって、内燃機関よりスムーズな発進を可能にする。いわゆるISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)システムだ。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiマツダでは「Mハイブリッド」と称する。Mはマイルドの頭文字であり、またマツダも意味しているのだろうか。前輪駆動とAWD、ともに用意される。変速機は6段オートマチックだ。

エンジンの最高出力は115kW(156ps)、最大トルクは199Nm。電気モーターの最大トルクは49Nmだ。マツダ車らしいというか。ことさらなパワーは追求していない。そのかわり、発進時や加速時などはモーターのトルクを使い、マイルドハイブリッドで「人馬一体感を楽しんで」もらえるようにした、という。

Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui燃費は前輪駆動がリッターあたり15.6km、4WDが15.1km(ともにWLTC)。高速ではそれぞれ、17.2km、16.7kmにまで延びる。また、停止のために減速をしていくと、車体が完全停止するまえにエンジンが止まる制御が目新しい。エンジン停止後に加速する必要が生じたときは、ふつうにアクセルを踏むと、モーターが活躍してすかさず再加速に移るそうだ。

Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui価格は200万円台半ばから

マツダは、かなり明確なデザインランゲージをラインナップ全部に適用している希有なメーカーだ。シルエット、面づくり、ディテールの処理など、さまざまデザイン要素に一貫性を持たせて、ひと目でマツダ車とわかるトータル・デザインを実現している。

そんななかで、MX-30は、現存の「CX」シリーズのSUVのファミリーアイデンティティから、あえて逸脱しているようなディテールが印象に残る。

Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui価格は、前輪駆動が242万円から、4WDが265万6500円から。同時に発売される「(マツダ)100周年特別記念車」はそれぞれ315万7000円と339万3500円だ。後者は専用の車体色をはじめ、安全装備や快適装備が盛りだくさんとなっている。細かい点では、100周年専用にデザインされたホイールのハブキャップまで装備される。かなり手のこんだデザインで、すぐに盗まれてしまいそうな魅力を持つ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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みんなのコメント

4件
  • こんな風にデザインやインテリアにこだわったクルマが増えてきたのは嬉しい。
    もうスピードだ、パワーだ、といった時代ではない。
    心地よさ、優しさ、扱いやすさなどマツダの目指す方向は間違っていないと思う。
    失敗があってもいい。挑戦し続ける精神が重要だ。
  • これは「ベリーサ」の再来かな?
    どんどん売れたわけではないが、興味を持って受け入れる層があり、長期にわたって販売を続け、いまだに惜しむファンが少なくない。
    便利だとか、経済的だとか、走りがとかでなく、なんとなく面白そうで、それほど売れてなく、人に見せてもこだわりを説明できそうな、味のある車に育っていけばいいのではないか。
    ちょっとしゃれた若い二人にもいいかもしれないが、子供が巣立ち落ち着いた二人が優雅にホテルへ出かけるにも味がありそうにも見える。
    クラウンでもアルファードでもない、ほどほどのコンパクトで、面白い選択だと思わせる車になるかもしれない。もっと思い切って豪華な装備があってもよさそうに思えてくる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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