■まさかの“自殺ドア”? 名前の由来は“危険すぎるから”
クルマのドアで最も普及している開閉機構は、開口部の前側にヒンジ(蝶つがい)をつけた前ヒンジ式、いわば「後ろ開き」のスイングドアです。
【画像】「えっ…!」これが”市販車最高額43億円超え"の「スーサイドドア採用車」です(50枚以上)
当たり前すぎて普段、気にも留めないと思われますが、わずかながら「前開き」、つまり開口部の後側にヒンジをつけた後ろヒンジ式を採用するクルマが存在します。
クルマのドアで最も普及している開閉機構は、開口部の前側にヒンジ(蝶つがい)をつけた前ヒンジ式、いわば「後ろ開き」のスイングドアです。当たり前すぎて普段、気にも留めないと思われますが、わずかながら「前開き」、つまり開口部の後側にヒンジをつけた後ろヒンジ式を採用するクルマが存在します。
クルマの黎明期、いろいろな機構が試行錯誤された時代でしたので、前開きは結構ありました。時代をさらにさかのぼって馬車の時代になると、前開きはもはや当たり前。ちなみにディズニーが手がけた『シンデレラ』に出てくるかぼちゃの馬車もアニメ、実写ともに前開きを採用しています。
往年のクルマ好きであれば、2ドア車ならスバル「360」(1958年発売)、4ドア車ならトヨタ初代「クラウン」(1955年発売)を思い浮かべる人もいるでしょう。初代クラウンのようなドア形態は、後ろ開きの前席ドアと合わせて「観音開き」として広く知られています。
前開きの利点は、乗り降りのしやすさ。足を出し入れする際、ドアを気にすることなくスムーズに行えるのです。初代クラウンの後席ドアが前開きなのも、乗降性や使い勝手を踏まえたタクシー業界からの要請に応えてのことだったと言われています。
前開きドアは「スーサイドドア」とも呼ばれています。直訳すると「自殺(自爆)ドア」。なぜそう呼ばれるかは諸説ありますが、建付けが現在より悪かった時代、走行中に前開きドアが風圧で開いてしまうことがあったようです。
乗員がドアにもたれかかっていれば外に放り出されるおそれがあり、ドアが対向車に接触したら大事故につながります。そんなクルマに乗るのは自殺行為だと思われたのでしょう。
時代の流れとともに、クルマのドアは後ろ開きに集約されていきますが、それでも現在、スタイリングの制約上で後席ドアを広く取れないクルマにとって、前開きは有効な機構です。例えば現行モデルのマツダ「MX-30」やフィアット「500e」(一部モデル)は、後席ドアが前開きになっています。
後席ドア自体は小さいのですが、ピラーレス(車両側面中央の柱がない構造)になっているので、開口部が広く、後席乗降性の向上に寄与しています。
このようなピラーレス観音開きの利点をもう少し詳しく説明すると、後席に前方向からアプローチできるというのがポイントです。後席に荷物を置いたり、チャイルドシートに赤ちゃんを乗せたりする際、わざわざ後席ドアの後方へまわり込むことなく、スムーズに行えます。
ただ、ピラーレス観音開きは、後席ドアを単独で開けることができません。必ず前席ドアを開ける必要があります。閉める際は、その逆の順序となります。面倒な場面が出てきそうですが、そういう設計になっているからこそ、走行中に後席ドアが風圧で開くことは無いし、後席の子どもが勝手にドアを開けようにも開けられないので、安全性という点では問題ないでしょう。
前開きを伝統的に採用しているのはイギリス生まれの超高級車ブランド、ロールス・ロイスで、「コーチドア」と呼ばれています。ドアが大きい2ドア車の場合、車内からの開け閉めが大変そうですが、最近はスイッチひとつで自動開閉するので心配無用です。
いずれにしても前開きは世界的に見ても珍しい存在です。それだけに後ろ開きをわざわざ前開きに改造したくなるのがカスタムの世界。構造変更という面倒な手続きを通して、保安基準に適合していると認められたら、公道で走ることができます。
もっとも「後ろ開き→前開き」カスタムの狙いは後席乗降性向上というよりウケ狙いです。
前開きに興味が湧いたら、中古車市場にも目を向けてみてはいかがでしょうか。国産車ならトヨタ「FJクルーザー」「bBオープンデッキ」「オリジン」、マツダ「RX-8」、ホンダ「エレメント」、輸入車ならMINI「クラブマン」(BMWモデルの初代)、BMW「i3」、サターン 「SC2 3ドアクーペ」など、個性派がそろっています。
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