トヨタ地元発の衝撃報道
2020年11月、驚きのニュースが飛び込んできた。
【画像】あなたはどの「クラウン世代」 歴代~現行モデル【詳細比較】 全119枚
トヨタ地元の中京地方の代表的な新聞社である中日新聞が、「次期クラウンがSUVになる」と大きく報じたのだ。
この報道に対して、トヨタはノーコメントを貫いた。
一方で、自動車専門メディアの多くが「次期クラウンSUV化」の真相に迫るべく、販売店からの情報などを基にこれまで定期的に記事化してきた。
だが、本稿執筆時点(2021年末)では、次期クラウンに関する正確な情報はトヨタ周辺から伝わってこない。
そうした中、直近でのトヨタ関連ニュースとしては2021年12月14日、「バッテリーEV戦略に関する説明会」の衝撃が極めて大きい。
2030年までに、グローバルでバッテリーEVのみの年間販売台数を350万台にするというのだ。
2021年5月時点では、バッテリーEVと燃料電池車の合計で年間200万台という達成目標を掲げていたが、それを一気に150万台増という驚きの方針転換だ。
こうしたトヨタの新しい動きの中で、先般から噂が絶えない「次期クラウンSUV化」についても当然、深い関わりが出てきそうだ。
言い方を換えれば、「次期クラウンSUV化」の可能性は十分に高いのではないだろうか。
次期クラウンの行方について、様々な視点で考えてみたい。
高度成長期の象徴
まずは、クラウンがこれまで辿ってきた道のりを振り返ってみたい。
「いつかはクラウン」。トヨタがテレビCMなどで愛用してきた、クラウン向けのマーケティング用語だ。
60年代から70年代にかけて、日本は経済の高度成長期にあった。自動車については、庶民が自家用車を持つことが当たり前のようになり、その自家用車をオーナー自身の年収アップに応じてアップグレードするという風潮があった。
トヨタでは、パブリカやカローラというエントリーモデルから、コロナ、カリーナ、マークII、そしてクラウンへといった、オーナー自身の「ステータス階段」が描かれた。
「いつかはクラウン」とは、トヨタにとってクラウンが最上級であり、クラウンまで到達することが庶民にとっての憧れ”という、トヨタが築いた事業戦略だ。
それが80年代から90年代になると、トヨタではアメリカでレクサスが生まれた。
これは「クラウンの先」を意味することであり、クラウンユーザーにとっては「いつかはレクサス」というさらなる階段が用意されたようにも思えた。
それでも、当時のトヨタ店を中心としてトヨタ既存顧客は、トヨタ最上級車であるクラウンの存在意義を認め、クラウンの販売台数が急減することにはならなかった。
ところが……。
時代変化の波に押されて
1990年のクラウン年間販売台数は21万台で、クラウン史上最多を記録する。当時、時代はまさにバブル期の真っ只中だ。
比較として、2020年の軽自動車を含む国内全モデルでのトップが、Nボックスの19万6000台である。90年当時のクラウン全盛を今の若い世代はまったく想像できないだろう。
だが90年代後半から2000年代にかけて、クラウンの存在感は弱まっていく。
レクサスに加えて、ドイツ車など欧州車の日本市場に対する攻勢が始まり、また庶民のクルマに対する価値観が多様化したことで、日本でもSUV需要が生まれてきたからだ。
2000年代以降、クラウンの年間販売台数は5万台程度まで落ち込む。累計販売台数で見ると、12代目(23.5万台)、13代目(16.5万台)、14代目(21.2万台)という推移だ。
そうした中、2018年に登場した現行の15代目。筆者は静岡県内の私有地でおこなわれた報道陣向けプロトタイプ試乗会に参加したが、その際にトヨタ開発関係者らは「40代から50代のユーザーにとって日本車の新しい価値観を知って欲しい」と開発主旨を強調した。
ショーファーカーとしての上級モデルから、ターボエンジンのスポーティモデルまで、クラウンとしての幅を広げたのだ。
最新プラットフォームTNGA採用の走りは、試乗会現地に用意されていた14代目と比較するとその進化の大きさが実感できた。
クラウンEVもありか?
トヨタの製品企画の視点を、筆者なりに解釈すれば、次期16代目クラウンは15代目で採用したTNGAをブラッシュアップし、デザインでもいわゆる正常進化する流れが想定できるだろう。
パワートレインについても、ハイブリッド搭載モデルを主体として、RAV4 PHVやレクサスNX 450h+で培われたプラグインハイブリッド車技術の搭載も視野に入るはずだ。
ところが、こうしたトヨタとして、またクラウン開発として王道である積み上げ式の考え方が通用しない事態となってきた。
先日の「バッテリーEV戦略に関する説明会」の中には、「近未来のクラウン候補」のようなセダンやクロスオーバーSUVの姿もある。
当然、プラットフォームはEV専用化である。
そうなると、クラウンというモデル名称を継承するTNGA採用モデルと、もしかすると「クラウン◯◯◯」と命名されるバッテリーEVが併売される可能性があるかもしれない。
2020年11月に中日新聞が次期クラウン計画をスクープした時点で、果たしてトヨタとしてクラウンの早期EV化をどこまで想定できていたのか?
いずれにしても、15代目登場から数えると、2023年から2024年頃には次期クラウンの全貌が明らかになるだろう。
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