自動車産業が盛んな日本は、同時に世界有数の自動車市場でもある。そんな日本市場に参入する海外自動車メーカーも多いが、なかにはうまくいかずに撤退してしまったブランドも存在する。
今回はこうした撤退ブランドを紹介し、現在の状況についても報告する。実は好きだったあのメーカー、本国では今も元気でやっているのだろうか?
オペルが2022年から日本で復活! 再導入車とかつての系譜を辿る
文/長谷川 敦 、写真/オペル、ヒョンデ、Favcars.com
[gallink]
ついに日本での再始動を開始するドイツの老舗「オペル」
2022年から予定されているオペル日本再上陸での販売が決定したコンパクトカーのオペル コルサ。かつてはトヨタとの車名登録問題からヴィータの名称で販売された
1899年、ドイツで自動車の製造販売を開始したメーカーがオペル。社名は創業者のアダム・オペルからとられたもので、実際に自動車製造をスタートさせたのはアダムの息子たちだった。
当初は堅調だったオペルの事業だが、不況のあおりを受けて1930年代にはアメリカのゼネラルモーターズ(GM)に子会社化される。以降はGM製プラットフォームを使用したモデルも販売していた。
日本国内での輸入販売は1920年代から行われている。第二次世界大戦後には日本での代理店が変更されるものの販売を継続。1970年代には排ガス規制への対応遅れから一時的に撤退し、1980年代前半に再び販売開始となる。
なお、この時期には当時同じくGM傘下にあったいすゞ自動車も一部のオペル製モデルを輸入販売していた。
1993年には輸入代理店が変わり、さらに2000年には日本ゼネラルモーターズが本格的にオペルの販売を始めた。この頃の人気テレビドラマでコンパクトカーのヴィータが登場して注目を集めている。
このように日本の市場に存在し続けたオペルだったが、他のドイツ車ブランドに比べるとアピール度に乏しく、信頼性の面などでも日本車に苦戦していたこもとあり、2006年をもって日本市場からの撤退が決定された。
その後フランスのプジョーシトロエングループ(グループPSA)がGMからオペルと姉妹メーカーのボクスホールを買収して傘下に収め、さらにグループPSAがフィアット・クライスラー・オートモビルズを経営統合してステランティスグループを設立したため、現在のオペルはステランティスグループの一員となっている。
2019年に、当時のグループPSAは日本国内でのオペル車販売再開を発表した。すでに国内向けのウェブサイトもスタートし、正式販売開始に向けて準備が進められている。現在の日本市場でオペルがどこまで健闘してくれるのか、注目していきたい。
鳴り物入りで登場も、日本では不発に……「サターン」
特徴的なスタイルのサターン SC(1997年)。こちらは2ドアのクーペモデルで、4ドアのSLもラインナップされていた。日本国内でも販売
1970年代のオイルショック以降、燃費に勝る日本車に押されていたアメリカのゼネラルモーターズ(GM)は、新たなイメージを構築すべく、新ブランドの「サターン(Saturn)」を1985年に設立した。
大食いイメージのあるアメリカ車ではなく、よりユーザーと環境に優しいクルマ作りを目指したサターンは、販売戦略においても次々と新機軸を打ち出した。
サターンのファーストモデルとして登場したSシリーズは、クーペのSC、セダンのSL、そしてワゴンモデルがラインナップされていた。ドアや外装には金属ではなく変形しにくい樹脂を使用するなどの新たな試みもあり、GMがこのブランドにかける意気込みを感じさせた。
日本への進出は1997年で、「礼をつくす会社、礼をつくすクルマ」のフレーズで広告を展開。それまでの自動車会社にはないイメージのTV CMも話題になった。また、アメリカで好評だった来店客に過度のプレッシャーをかけない営業スタイルは国内でも高く評価された。
国内で販売されたのは小型モデルのSシリーズのみだったが、従来のアメリカ車に対するイメージや、国産車への競争力、販売網の小ささが不利となって販売実績を残せず、2001年に、わずか4年で日本市場からの撤退を余儀なくされた。
日本からの撤退後もアメリカとカナダで複数のサターンブランド車が継続販売されていたものの、やはり業績は思わしくなく、2009年のGM社経営破綻によってサターンブランドはあえなく消滅してしまう。
印象的なイメージのTV CMが記憶にある人も多いだろうが、文字どおり記憶にのみ残るブランドとなってしまった。
クルマでは韓流ブームを起こせず? 「ヒョンデ(ヒュンダイ)」
水素燃料電池車のヒョンデ NEXO(ネッソ)。水素燃料の充填に必要な時間は5分と短く、満タンなら約820kmという走行距離を誇る。日本国内での販売も予定される
韓国屈指の財閥であった現代(ヒュンダイ)グループが1967年に設立した自動車会社が現代自動車。当初はフォード製モデルのノックダウン生産を行っていたが、やがて自社開発による自動車の生産も開始し、1975年には初の韓国製自動車を完成させている。
設立からしばらくは東洋の無名自動車メーカーの地位に甘んじていたものの、徐々に開発力と競争力を高めていき、現在では世界的に知られるブランドに成長した。
同社の主力モデルであったセダンのソナタは1985年に登場。当初は韓国内での評判も思わしくなかったが、改良が進んだ3世代目ソナタ(1993年)は、売り上げを伸ばしている。また、2000年発売のSUVモデル・サンタフェは、本場アメリカでも高く評価された。
日本市場への参入は2001年からで、積極的なコマーシャル活動などを展開した。だが、国内外の強豪がひしめく日本の自動車マーケットにおいて後発の韓国メーカーが入り込む余地は少なく、営業成績では苦戦を続けた。これには製品の品質よりも日韓関係の悪化などが要因とも言われている。
韓流スターの“ヨン様”ことペ・ヨンジュンをCMに起用して話題を呼んだサンタフェも、メーカーの思惑どおりに販売を伸ばせず、高級セダンのXG(韓国ではグレンジャー名で販売)も日本市場に受け入れられなかった。
2009年には、業績不振を理由に日本の乗用車市場からの撤退が発表された。ただし観光バスの販売は継続され、こちらは好調な業績を残した。しかし、昨今のコロナ禍における観光需要の低下によって、2020年度の国内販売台数はなんとゼロという結果に。今後の巻き返しが注目されている。
そして10余年の時をへて、2020年に日本市場への最参入が決定した。今回は販売車種と水素自動車と電気自動車に絞っての販売であり、次世代エネルギー市場における覇権の奪取が目的と思われる。
これに伴い日本向けのウェブサイトもリニューアルされ、合わせて日本語での正式表記もこれまでの「ヒュンダイ」からより韓国語での発音に近い「ヒョンデ」に改められることになった。
北欧の個性派も思い出の中に「サーブ」
サーブを代表する車種の一台だったサーブ 900(1997年)。この900は、スタイルの良さとパワフルなエンジンなどから日本でも人気を集めた
スウェーデンの軍用航空機メーカーSAAB(Svenska Aeroplan AB【スウェーデン航空機会社】)の自動車部門として1937年に誕生したのが自動車のSAAB(サーブ)ブランド。航空機開発で培った技術を導入して作られたクルマは、そのどれもが独特の個性を持っていた。
サーブ車の販売は日本国内でも行われていたが、後述するサーブ本社の経営破綻をうけて2012年には日本への輸入が事実上終了してしまう。そしてサーブブランドそのものも消滅する運命を歩んだ。
スウェーデン企業だったサーブは、1990年代にはアメリカのGMグループに買収され、さらに2010年にはオランダのスパイカーカーズに売却となる。それでもサーブの営業不振は続き、2011年には破産申請が行われた。
その後2012年にはナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン(NEVS)がサーブを買収。スウェーデンメーカーによるサーブの復活が期待されたが、同社はブランド名をNEVSに一本化し、サーブの名称を使用しないことを決定。これで自動車におけるサーブの歴史に幕が閉じた。
アメリカンモータースポーツの精鋭「サリーン」
サリーン初のフルオリジナルモデルとなったS7。写真のサリーン S7ツインターボは、7.0リッターV8 OHVターボエンジンが750psを発生するモンスターだ
1983年にアメリカで誕生したサリーン・オートスポーツ。それまでレースカーのチューニングで活躍してきたスティーブ・サリーンが設立したメーカーは、当初はレースカーのオリジナルチューニングパーツを販売していた。
やがてそのチューニングはマシン全域に及び、フォード マスタングをベースにしたコンプリートカー・サリーンマスタングのリリースも開始した。
こうして実績を重ねたサリーンは、2001年、ついに自社オリジナルのスーパーカーとなるS7を完成させて自動車メーカーとしての一歩を踏み出した。このS7はレースでの使用も視野に入れて開発され、実際に世界各国のレースで活躍している。
そのサリーンは2005年から日本の総代理店によって輸入販売がスタートし、マスタングをベースにしたS281などがリリースされた。そしてあの“キムタク”ことタレントの木村拓哉もS7を所有していたことがあるという。
サリーン製モデルは一般的なメーカーほどの流通数はなかったが、性能とスタイルのよさなどから評価を得ていた。しかし2009年には国内代理店が倒産してしまう。アメリカのサリーン本社に落ち度はなかったにもかかわらず、これでサリーンの国内販売がほぼストップしてしまった。
現在もサリーン本社は精力的にモデル開発やレース活動を続けているが、日本国内ではごく一部のモデルがショップや個人などの輸入で走っているのみ。クルマ自体の魅力は高く、正式な販売が望まれるメーカーのひとつといえる。
今回紹介したメーカーが日本市場から撤退した理由はさまざまであり、再び日本上陸を試みるメーカーもあれば、メーカーそのものが消失してしまったケースもある。多様性が叫ばれるこの時代に、日本国内でも個性的な輸入車が増えることを期待したい。
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みんなのコメント
しれっと「2022年」に変更されてるww
因みに、国を挙げての反日国家のメーカーが日本に再参入って厚顔無恥には、やっぱり彼の国とは永遠に分かり合えないと再認識する次第、、、、
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