些細なことなど吹き飛んでしまう完成度
「どんな違いがありますか?」。ラファエル・デ・シモーネ氏に訪ねる。彼の肩書は、「フェラーリGT開発テストドライバー」。すべての公道用フェラーリのドライビング体験へ影響力を持つ人物としては、かなり控え目な役職名だ。
【画像】最新 フェラーリ296 GTB F8 トリブートとSF90 競合のスーパーカーとも比較 全109枚
この世界に、すべての人にとって完璧なクルマは存在し得ない。最新のフェラーリ296 GTBにも、もう少しこうだったら、と筆者が感じた部分はゼロではない。しかし、サーキットを数分間走らせれば、些細なことなど吹き飛んでしまった。
アップル・カープレイ利用時のレブカウンターの動作や、遅いノーズリフト機能の動きも忘れられる。端的にいえば、このクルマへ心の底から驚いた。極めてバランスに優れている。デ・シモーネの仕事が、素晴らしかったという証拠だ。
この296 GTBは、フェラーリ最新のミドシップ・スーパーカー。マラネロのエンジニアは、方向性を見誤ることはなかった。英国価格は24万1550ポンド(約3744万円)が付いている。
F430から次世代への進化を感じさせた458イタリア以来、着実に次期モデルを生み出してきた同社。マクラーレンから誕生するかもしれないライバルへ構えるうえでも、非常に高い完成度が求められていた。
果たして、その完成度には言葉を失う。フェラーリが作り上げてきた歴代のV8エンジン・スーパーカーを振り返ってみても、出色といえるだろう。
2996cc V6ツインターボに駆動用モーター
ただし、AUTOCARの読者ならご存知かとは思うが、296 GTBがミドシップするのはV型6気筒エンジンだ。駆動用モーターとバッテリーが組み合わされた、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)となっている。
フェラーリがハイブリッドを手掛けるのは、これが初めてではない。ラ・フェラーリはハイカーズと呼ばれるハイブリッド・システムを搭載していたし、SF90ストラダーレはPHEVだった。
それらは、この最新フェラーリを完成させるための、技術的な準備だったのかもしれない。そう思わせるほどの出来栄えだ。
296 GTBというモデル名の数字は、エンジンの排気量と気筒数に由来する。排気量が2996cc「29」で、120度のバンク角の内側にツインターボが搭載された、V型6気筒「6」ユニットとなる。
エンジンは最高出力664psを発揮し、8速デュアルクラッチATとの間に、166psを発揮する駆動用モーターが挟まれている。電子制御のリミテッドスリップ・デフを介して後輪を駆動し、必要に応じてエンジンは駆動系から切り離せる。
システム総合での最高出力は830psに達し、0-100km/hの加速時間は2.9秒。0-200km/h加速も、7.3秒でこなしてしまう。
駆動用バッテリーの容量は7.45kW。2シーターのコクピットとエンジンルームとの間に集約されており、重量は73kgだという。駆動用モーターやインバーターなどの関連機器も含めると、ハイブリッド・システムの重量は約100kgになるだろう。
F8トリブートより50mm短いホイールベース
V8からV6へエンジンをコンパクトにすることで、増えた重量の一部は相殺しているが、結果として車重はフェラーリF8トリブートより35kg重いという。乾燥重量で1470kg。走れる状態での車重は、1600kgほどになるようだ。
車両中央、ガラスカバーの内側に搭載されたメカニズムは、驚くほどコンパクトで背が低い。重心位置も、さぞ低いことだろう。
ホイールベースは2600mmということで、F8トリブートより50mm短い。ドライバーの着座位置は、フロントタイヤ側で14mm近い。
このショート・ホイールベースには、フェラーリの技術者も悩んだらしい。機敏さや安定性など、操縦性に影響を与える重要な部分だからだ。
さらに、パワーステアリングは油圧アシストではなく、フェラーリとしては初となる電動アシスト。ブレーキも、ペダルからの電気信号で制御される、バイワイヤーとなった。いずれも、チューニング次第では人工的な感触が強くなってしまう。
デ・シモーネの開発チームは、2010年までは3名の技術者で構成されていたという。しかし、複雑さを増すモデル開発へ対応するように、現在は15名へ増えている。そのチームワークは、見事だったといえる。
一般的な前ヒンジのドアを開くと、ドライバーの正面にモニターが埋められた、最新のインテリアが迎えてくれた。デザインはとてもクリーンで、ランボルギーニ・ウラカン・エボほど派手ではない。だが、マセラティMC20よりは華やかだ。
EVモードで最大で25km走行可能
人間工学的には、良い部分ともう少しな部分が入り交じる。とはいえ、不自然なドライビングポジションを強いられるイタリアン・スーパーカーの時代は、とっくに過ぎ去っているが。
ステアリングホイールがもう少しドライバー側へ近づけば、とも感じるものの、常時気になるほどではない。ステアリングホイールは、ほぼ円形で握りやすい。大きなシフトパドルは、ステアリングコラム側に固定されている。
コラムはシンプルで、横に伸びるレバーは1本もない。パドルへのリーチは良い。
そのかわり、ステアリングホイールは少々煩雑。ライトにワイパー、ウインカーのスイッチが集約されている。インフォテインメント・システム用のタッチセンサー類も。
フェラーリおなじみの、ドライブモードを選択するマネッティーノ・ダイヤルも、もちろんステアリングホイール上。ハイブリッド・システム用のタッチセンサーも一緒だ。
296 GTBはPHEVだから、パワートレインには数種のモードが用意された。EVモードを選ぶと駆動用モーターとバッテリーだけで走行でき、距離は最大で25km。欧州の都市部で普及が進む、ゼロエミッション・ゾーンを走ることもできる。
日常的に選ぶであろう選択肢は、バランスの良いハイブリッド・モード。パフォーマンス・モードは、駆動用バッテリーの残量を維持しつつ、可能な限り最大の動力性能を引き出す。クオリファイ・モードは、充電量を気にせず短時間にすべてを発揮し尽くす。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
見栄を張るのが目的の人にとっては、フェラーリのコスパは悪い。
というか、あんなにフェラーリ大好きだったのに、不思議なくらい最近のフェラーリには興味がなくなってきた。